第58回:ユニスと
「……まぁ、とは言え、今は一時的にしろ協力し合う仲間です。裏切り者の檜垣に従っていた誠司先輩が、更に裏切って集めたこのメンバー、裏切り者中の裏切り者は、全員はずれ先輩が巫女に会うことを期待しています。もちろん、僕も。まぁ、寄せ集めの兵隊ですけど、成功する可能性は充分あると思いますよ。さて、他に質問がないなら実際の作戦行動についての打ち合わせを始めます」
しばらく打ち合わせは続いた。はずれとそう年齢の変わらない年若いメンバーばかりだったが、打ち合わせはまさに作戦会議と称するのが相応しいと思えるほど堂に入ったもので、みなはまるで経験ある傭兵のような雰囲気を漂わせていた。やがて一人去り二人去り、はずれも着替えようと診療室を出て行きかけたところで、ユニスが声をかけてきた。恫喝的な様子で見上げてくる。そばにはツェツィの姿があった。
「……なんでそんな平然としているのよ」
「ん……なんのことだ」
「ユニたちは、あんたのことを殺そうとしたのよ。怖いでしょ? むかつくでしょ? 信用できないでしょ?」
「ああ、そんなことか。別に、気にしていない」
「気にしてないってどういうこと? あんた不感症? どこかおかしいんじゃないの。普通恨んだり疑ったりするもんでしょうが」
「恨んだり疑ったりして欲しいのか……?」
「そ、そうじゃないけど……それが一般的な反応だって言ってるの。このおバカ」
はずれは開きかけたドアのノブから手を離した。
「ん……一般的な考えなんて知らない。さっき、菊間が自分たち妖怪を信じるなと言っていたが、俺は特に必要もないのに疑心を持つ必要なんかないと思っている。利害とかエゴとか、そんなの誰だって持っているものだ。たくさんの人間がそれぞれ持っているならぶつかることも重なり合うこともあるだろう」
ユニスは「理解しかねる」といった表情をしている。
「……まぁ、俺は雪菜……和羽が助かればそれでいい。土地神なんかにならず、特別にならず、幸せになってくれればそれでいい。その点はお前も同じだということを俺は知っている。だから、言おうと思う。俺の好きな和羽を大好きでいてくれて、ありがとう」
「はぁ? なにそれ、あんたに言われなくたって、ユニは和羽ちゃんが大好きなんだからね。あんたの数万倍大好きなんだから」
「ああ。それは、嬉しい」
「……な、な? あんたの言うことは意味わかんない。わけわかんない」
ユニスはそっぽを向いて金色の髪とスカートを勢いよく翻し、そのままはずれの顔を見ないで部屋を出て行ってしまった。かと思えたが、すぐに扉の間から顔を出して、
「思い出した。怪我させて悪かったわ。ごめんなさいっ」
怒鳴るように言うと、今度こそ行ってしまった。ツェツィはユニスに続いて行くのかと思われたが、立ち止まってはずれに首だけ向けて話しかけた。
「ユニスは頭が悪い。だが、理解はしている。口も悪いが気にしないで欲しい」
はずれは「気にしてない」とばかりに首を振った。