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第4回:はずれ、ナンパする

 その数十分後、鹿島はずれは、カジュアルな服に着替えて葛城市緑町の駅前大通りにいた。

 葛城市といえば県の端に位置しながら、県内の五分の一の人口を有するベッドタウンであり、平成になって急速に発展した市だ。JRの線路沿いにビルが立ち並ぶかと思えば、ビル間には古くからの個人経営の小売店があったりする。郊外には田畑が広がり、市の中心部三幸町にも都会らしい景色の中にぽっかりと畑があったりして、なんともアンバランスな場所である。

 中央葛城駅を出ると、巨大なビデオ画面のあるビルのもと、複数の道路が交差している通りに出る。

 速やかに流れていく人の群れの中で、浮島に取り残されたかのように、はずれは右往左往していた。

「あー……一緒にお茶でもいかがですか」

「あー、一緒にお茶と大福でもいかがですか」

 道行く人々……年齢問わず女性のみ……に話しかけているが、まるで相手にされていない。猫背でのっそりとたたずんでいて、言葉もつたないから、気味悪がられているのだろう。少し離れたところにいるティッシュ配りの方が余程順調だ。

 はずれは、いったん休んで、なぜ誰も足を止めてくれないのかぼんやりと考え、急に手のひらをポンと打つと、腰をかがめ相手の顔をのぞきこむように試み始めた。だが、ひきつける言葉もなにもその口から出てこないため、女性たちは驚くだけ驚かされると悪態をついて去っていくのだった。

(きっと、今日は日が悪いのだろう)

 はずれはぼんやりとそう思った。場所を少し変えて試してみても、うまくいかない。釣りのように、天候や気温にも左右されるのではないだろうか。それともなにかコツがあるのか。このナンパ行為というものには。

 そう、はずれは、これでもナンパをしているのだった。

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