第46回:酒場にて
間もなく、はずれは目的の場所にたどり着いた。光を感じる闇をくぐると、そこは西部劇でガンマンやらゴロツキやらが吹きだまっているような場末の酒場だった。
スイング・ドアを胸で押す形で入ると、客の何人かが鋭い眼光を向けてくる。小学校低学年向けのおばけ図鑑から抜け出してリアルにしたらこうなるかという、異形の客たちだった。天井から吊り下げられたプロペラが無音で回っている。
背後を振り返ると、これまでいた闇が壁のように入り口に貼りついている。あの闇は死か無に続いているのだと、はずれは思った。
黒髪切りはカウンターに座り、既に酒を飲んでいるようで上機嫌になっていた。一般人に混じれば浮いて見えるだろう黒髪切りも、蜥蜴頭の人間や、ろくろ首の女と同じ場にいれば仮装行列のようで納まりが良かった。
「おー、やっときた。ここだよ、ここ。おっせーえなぁ、おめえ」
(……さっさと先に行って自分は酒盛りですか、ほー)
さすがに腹が立ったので怒鳴りつけたのだが、酔っ払いの、しかも笑い上戸にはいくら怒ろうが全く堪えない。はずれの不機嫌を煽るように黒髪切りの隣席に座る男が笑った。
「なにがおかしい」
「いや、お前も怒るなんてことあるんだなと思って。悪い」
「……誠司?」
誠司は悪びれない表情で「よっ」と気さくに手を上げる。誠司は新宿のホストのように仕立ての良いスーツを着ている。
「なんでお前がここにいるんだ」
「お前に会いたくて」
「気持ち悪いぞ」
「冗談だよ。冗談。まぁ、酒でも飲めよ。要らない? ノリが悪いな。あ、それは、いつものことか」
「やけにテンションが高いな」
誠司は「そりゃそうさ」と自嘲気味に笑って言った。
「ラストシーンくらい楽しまないとな」