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第43回:止まらない尿意

 ユニスは胸元にフリルのついた袖のないワンピースを着ていて、それがとてもよく似合っていた。妙に足が長い。

「あんたがいるから、和羽ちゃんが苦しまなきゃいけないんだっ。和羽ちゃんをいじめるやつは、誰だろうと許さないんだから。死んじゃえ、悪魔」

「……おいおい、なんでそんなに俺を殺したがるんだ」

「悪魔は巫女を殺す。女神も殺す。でも、そんなことはユニがさせない。和羽ちゃんはユニが守る。和羽ちゃんはユニが守る」

「おいおい、その巫女だか女神だかが、雪菜だって言うのか。俺は殺したりなんかしないぞ」

「だって、本に書かれているもの。運命なんだもの。あんたの中の悪魔は、絶対に、巫女に選ばれた和羽ちゃんを殺すんだもの」

 ユニスは怒りのあまりか、泣き出しそうな表情でナイフを握っている。不意に刃物を見れば誰しも動揺しようものだが、はずれは、呼びかけられたときこそ一瞬ひやりとしたものの、刃先が自分を向いても取り乱したりしない。

 少女は自分を殺すことができないだろうとたかをくくっているわけではない。彼女は妖怪という名の人間を何人も殺してきた実績がある。校舎屋上でしたように、はずれをなんらかの方法で殺すのは可能だろう。

 だが、今この瞬間においては、彼女はただの少女であるように思えた。彼女自身がただの少女でありたいと望んでいるように。

 その、十代も半ばを過ぎていない少女が、人一人を殺そうというのだ。しかも東雲荘の家族を。自らたくさんの安息と幸せの可能性を捨てる行為なのだ。

 はずれはユニスの決意を、真っ向から受け止めるつもりでいた。無論、考えなしに命を絶つことは誰に対しても益はないと思っている。

 だから、この夢の中のようなふわふわした感覚しかない世界であっても、死んでもいい気にはならない。

 それに。

 そんな身に覚えのない理由で殺されるだなんて、うんざりだし。

 誰かが勝手に「自分が雪菜を殺す」なんて運命づけているなんて、むかつく。

「俺の運命とか、勝手に言い出したやつ、出てこい。ぶん殴ってやる」

 しかし、答える者はない。

 言った途端に、はずれは尿意を催した。このタイミングは、とても格好がつかないことだと思ったが、漏らすのはごめんだ。

「……もしかして、そんなベタベタなこと言って逃げるつもり?」

「疑うか。ああ、疑うな、これは。なんだったら、中までついてきて監視してもいいぞ。逃げたりしないから」

「あ、あんた、やっぱりおバカっ。レディに向かって、なんて事を言うの。さっさと行ってきなさいよ」

 少女の怒声を背に受けてトイレに向かう。東雲荘のトイレは、縁側の端につくられている。汲み取り式の、いわゆるボットン便所であるために、その方が都合がよいのだった。

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