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第0回:男の死
まことに、主は矛盾の家にこう言われる。
汝、我ならざる人よ、我を求めよ、そして生きよ。
罪深き哀れな子羊よ、限られたとき、限られた力しか持たぬものよ。
欲するがままに求めよ。考えるより先に求めよ。汝の空虚は真摯なる祈りによってのみ満たされる。
「……ああ、そうだ。私は一つの形を見たかった。粘土をこねくり回し、未知の可能性を創造したかった。偉大な父が見限った、このちっぽけな卵からはなにが生まれるのか試したかった。今日、この良き最期の日に私は仲間たちと灰燼に帰す。すべて無となり虚と成り果てる。ああハレルヤ。我らは焼き尽き灰となる」
そう言った檜垣という男は積年の大願を成就するその直前になって期せずして殺されることになる。
なにをするにも難しき世よ。人の命の儚いことよ。男の魂に平穏あれ。
アーメン。