番外編 本の虫《ブックワーム》のひな祭り。
ほんとならその弐を書くはずなんですけど、ひな祭りということで、
こちらをupさせてもらいました。
その弐は次回に回したいと思います。
今日は3月3日、ひな祭りである。
イベント好きの母は、すっかりのりのりになって、7段もあるひな壇を
出して、せっせと組み立てている。
きれいだし、おいしいものが出でくるので、ひそかな楽しみになっている。
それでも首を突っ込むとロクなことが無いと、わたしは静観を決め込んでいた
のに、そんなわけにもいかなくなってしまった。
「じゃん!!どう、これ。かわいいでしょう?沙美の分もあるわよ、ほら!」
それを見せられた私は、自然と血の気が引くのをかんじた。
「えっ、ちょっ、おかあさん!?」
「ほら、こっちにきて」
だ、だれかたすけてぇーーーーーーーー!!!!!!
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母さんのお使いで、沙美の家まで来たおれは、手の中にある2つの袋に視線を
落とした。どちらも小さめだが、右は俺からの、左は母さんからのものだ。
ひな祭りなんだから、お祝いぐらい持って行きなさいといわれ、
ついつい買ってしまった。
チャイムを鳴らそうとしたところで、ちょうどおばさんが出てきた。
「ほら、亜樹くんを連れてくるから」
「やだ、やめてよ、おかあさん!」
なにやらもめているようなので、どうしました? と声をかけると、
何やらいたずらっ子のように笑うと見て、と体をどかしてくれた。
「やだってば……、嘘、何でここにいるのぉ!」
という沙美の泣き言が聞こえた気がしたが、おれはそれどころではなかった。
なんて可愛い!
おばさんによって施されただろうお化粧は、薄めではあったが、
沙美のことをを存分にひきたたせるものだった。
さらに、もっとすごいのは沙美の着ている十二単だった。
明らかに時代錯誤なはずのそれは、とてもよくにあっていて。
あまりの衝撃に思わず扉を閉めてしまったほどだ。
その時撮った写メはいまでも宝物だ。
その後、すっかり怒ってしまった沙美は部屋に入ってしまったので、
俺はそっと中に入ってさっきの袋を取り出し、
中に入っている指輪を手に取った。
沙美、と出来るだけやさしく聞こえるように話しかけ、沙美の手をとって、
「着物、可愛かったよ?、これは沙美にと思って」
といって、左手の薬指にはめた。
「プレゼントだよ」
「……大事にする。」
真っ赤になりながらもそう言ってくれた沙美があんまりにも可愛かったから。
思わず抱きしめたくなったけど、
それは我慢し、おばさんによろしく、というにとどめて部屋を出た。
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その後、自宅への帰路にて。
(沙美を可愛くしすぎだよ、おばさん!!俺を殺す気かああぁぁ!!!)
その後、沙美の部屋にて。
(天然たらしもいい加減にしてよぉぉ!!!)
その日大きなくしゃみが2つ、お昼時の街に響いたそうな?
すっかりお母さんからのプレゼント渡すの忘れてますね、はい。
沙美に見惚れ過ぎだよーーー!!!