資産家独居老人の道楽14
「いたぞ!!」
ザエモン辺境伯領から単騎で飛行する物体を発見した!
何度も辺境伯の館付近をウロウロと飛んでいたのに1度も本人に会えなかった。
でもあの刀の気配は間違いない!!
私は全速力で彼追いかけた!!
「速い!!なんて速さだ!!」
そうしている間に奴は速度を落としたので私は声をかけた。
「待て!待てといっているだろうが!!」
おもむろにその男、老人は振り返りこう言った。
「声はずっと聞こえておるのじゃ。忙しいのに何の用件があるのじゃ?」
「お前その刀誰にもらった?」
「神を名乗る青年じゃのう」
「やはりあいつか〜」
そうは言うものの昔過ぎて顔も思い出せないのだが。
「用が済んだのならもう行かせてもらうとするかのう」
「あっけない奴だな!黒龍だぞ!リアクション少なくないですか?」
「え?斬ってもいいのかのう」
「物騒なことを平気で……。お前王宮へ行くのか?」
「そうじゃのう…。行かねば多くの命が失われるからこう」
「じゃあこうしよう!ワシの名は黒龍ナーガだ。お前は?」
「剛田甚左衛門じゃ」
「日本人……なのか!?」
「そうじゃのう」
「そういうことであれば同郷のよしみとして同行しよう」
「うむ、それも面白そうじゃのう」
「さあさあ、背中に乗ってくれ!」
私はこうして剛田甚左衛門を背中に乗せて王宮へと向かった。剛田甚左衛門の刀はカタカタと震えていた。まだ私のことを覚えてるようだ。
王城の4階の広いテラスに降りると王宮と王城は天地をひっくり返す騒ぎだった。
「アンドロイド国王はおられるかのう?」
「何奴!ここを王城と知っての無礼か!?」
衛兵が頑張っている。
そんな悶着を数分繰り返していると、奥から声が聞こえてきた。
「もうよい!」
「夜分遅くのご無礼をお許しくだされ」
アンドロイド国王に対して剛田甚左衛門が平伏して応えている。国王の1000倍は強いのに不思議だなあ…。
「ザエモン辺境伯よ、黒龍ナーガまで連れてこられては嫌とも言えまい。要件を述べよ」
「1つ噂に聞いたザエモン辺境伯謀反の件は一切ありませんのじゃ。2つ、反乱奴隷スパルタンをワシに頂きたい」
私は思わずグアオ!と声に出してしまった。
「ザエモン辺境伯よ、今この時私に拒否権はないようだ。だがしかし…条件はある。ザエモン辺境伯領にたどり着いた反乱奴隷に対しては罪を不問とする。しかしたどり着く前に我々に倒され捕縛された反乱奴隷は厳罰及び死罪だ。あとザエモン辺境伯への移動中の反乱奴隷の一切の護衛を禁ずるぞ。守れるか?辺境伯」
「王陛下の過大なる温情に感謝申し上げます」
「気を付けて帰るがよい。くれぐれも黒龍ナーガの手綱を緩めるなよ」
こうして剛田甚左衛門を背に乗せて私は王城を飛び去った。すると剛田甚左衛門が声をかけてきた。
「カブアに行ってくれんかの!!」
「すぐそこだな」
しばらく飛んでいると粗末な野営地の様な物が見えた。
低空で飛行すると反乱奴隷たちの野営地のようだ。
「ここじゃのう」
そう言われたので私は地上に降りた。
そして剛田甚左衛門も地上に降りる。
「黒龍ナーガがなんの用でここに来た!!」
精悍そうな青年が鋭すぎる眼差しを私たちに向けてくる。が、しかし…。私は用がない。
「血気さかんじゃのう。おぬしがスパルタンか?」
「いかにも、俺がスパルタンだ。その方は?」
「ザエモン辺境伯のゴウダ・ジン・ザエモン辺境伯じゃよ」
「あの、奴隷開放令を出した!これは失礼しました。いったい何の用件があるのかお聞きしてもよろしいですか?」
「聞いてくれんかのう?お主たち何とかわが領地までたどり着くことは出来るかのう?」
「徒歩で2ヶ月あれば」
「国王との話は付けてあるといえばある。わが領地に来れば自由民じゃ。だがそこまでの道のりに護衛は禁じられたのじゃ」
「それでも目的地が出来れば戦えない者たちは大いに助かります」
「いま総数で何人ほどなのじゃ?」
「おおよそ6万人かと」
「戦えるのは?」
「2万です」
「厳しいのう。ではこうしようかの。この黒龍ナーガを置いて行くから上手く逃げおおせてわが領地に来るが良い」
「なんと!?」
スパルタンは大いに驚いていた。私も大いに驚いていた。何を勝手に決めてくれているんだ!
「良いかスパルタンよ。黒龍ナーガは全能ではない。隊列が伸びれば隙も生まれようぞ。なるべく非戦闘員を囲むように戦える者を配置するのじゃ」
「ザエモン辺境伯!ありがとうございます!」
「ワシは受け入れ準備をしておく!健勝でな!」
そう言うと剛田甚左衛門は飛び去ってしまった。
置いていかれたよ……。
カブアのあるワイモバ領からエーユ領そしてマイネ領と3つの領地を越えてザエモン辺境伯領になる。反乱奴隷たちを抹殺するために送り込まれる軍と戦いながら進むのは容易くはないだろう。
実際にそうだった最初は国軍も領軍も私黒龍ナーガがいるから撤退行動をしていたが、最後列が襲われて私が対応すると先頭が攻撃されて…。その繰り返しで反乱奴隷たちは削られて行った。
ザエモン辺境伯領の城壁が見えた頃には6万だった反乱奴隷たちに他から加わった反乱奴隷を含めても3万人にまで激減していた。戦える奴隷2万は微減だが戦えない反乱奴隷4万以上が倒れたということになる。
剛田甚左衛門は用意周到だった。
反乱奴隷3万人を収容できる街を作り上げていたのだ。その手腕は見事としか言えない。
私は反乱奴隷3万全員が剛田甚左衛門の庇護下に入るのを見届けて、空へと飛んだ。
反乱奴隷たちの逃避行を遡ったのである。
街道には磔された反乱奴隷が吊るされており、それは何万という数が永遠と街道沿いに続いていた。
人はここまで無慈悲なのか…。
かつての私も無慈悲だったのか…。
こみ上げる怒りと自責の念で私の眼球は赤く染まり、視界も赤く染め上げられていた。
気がつくと私はドラゴンブレスで全ての磔された反乱奴隷を焼き払っていた。苦しみから開放するために。
その後視界に入った軍数千人も弔いとして殲滅した。
王城や王都を焼き払いたかったが、それも虚しい行為だと感じてあきらめたのであった。
久しぶりに寝床に帰って来た。
いつもの場所でいつものように眠りについた。
嫌なことは忘れたい。
その寝落ちしかけたその時に私は爆音と閃光と落ちて来る天井を背中で感じていた。
「あの野郎だな!」
私は王都と王城を焼き払うために破壊された寝床から舞い上がった!
「噛み砕いてやる!!撫で斬りだ!!」




