名前のない光
日常のふとした瞬間に紛れ込む、言葉にならない感情や見落とされがちな光景。
誰も気づかない場所で静かに呼吸する「名前のない光」を巡る、ささやかな物語です。
どうぞ最後までお付き合いください。
アスファルトの隙間から
小さな青が息をのむ
誰も気づかないその場所で
世界は静かに反転する
ビル風に煽られた言葉が
夜の街灯をすり抜け
硝子の肌に溶けていく
名前もない痛みをかかえ
僕らは今日も
名前のない光を探している
名前のない光は、いつだってそこにある。そこにあるのに誰も気づかない。だからなまえがないのだ。仮にでも名前をつけてあげればいいのに。
ビルの隙間から熱風が吹いてきた。それはわたしのスカートにいたずら(しようとするので、両手でフレアスカートを押さえた。
期待したのに、という残念そうな男たちの目は必ずある。
━━名前のない光がその瞬間に発生した気がした。
なのに男たちの視線を気にした刹那……。それは消えていた。誰の所為でもない。強いて言えば、気まぐれな風の所為。ただの自然現象だ。
その自然現象は、名前のない光の存在感を圧倒する存在感を持っていた。
また風邪が吹く。彼が言う。
━━今この場の君の存在感は凄いよ。他を圧倒している。
そうか、わたしが圧倒しているのか。
ならば、名前のない光の名前はわたしぎ決めてしまって良いのでしょう?
ご愛読いただき、ありがとうございました。
街の片隅に埋もれてしまいそうな、微かで名もない光。それに形や名前を与えるのは、いつだって誰かの小さな意志や眼差しなのだと感じます。ビル風のように騒がしい世界の中で、自分だけの特別な輝きを見つけ出す「わたし」の姿を描きたくて、この物語を紡ぎました。
ふとした瞬間に足元に咲く青や、名付けようのない光の存在を、読者の皆様にも感じていただけたなら幸いです。
最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございました。また次の物語でお会いしましょう。




