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僕にとっての

作者: 凛々
掲載日:2026/04/14

壊れていく心。

誰かに助けてもらいたい。

ヒーローってほんとにいるんでしょうか。

ヒーローは遅れてやってくる

 今にも雨が降りそうなどんよりとした雲。

 汚れきった体操服を着て、片手には通学用バックを引きづりながら、空を見上げる。

 足取りは今日も重い。いつもと同じ景色なはずなのに、全てが濁って見える。

 いつもは何も考えないようにしてるけれど、今日という日に限って、無駄なことを考えてしまう。



『《《ヒーローは遅れてやってくる》》』って言葉が大嫌いだ。なんで、ピンチになった後に来るのか。みんながボロボロになってから助けに来るのか、僕には分からなかった。もっと早く来て、ことが大きくなる前に助けることができたんじゃないかって。そう思ってた。けれど、ヒーローが助けてくれるだけで幸せなのかもしれない。現実には、そんな都合よくピンチに駆けつけてくれるような人は居ない。いてくれたらどれだけ、嬉しかったことか。

 ふと両の手を見ると、皮膚が荒れている。

 あぁ、あいつらが机を汚くしたせいだ。

 綺麗にした時に強く擦りすぎちゃったのかな。

 いじめられている僕の元に誰も来ない。見て見ぬふり。僕にとっちゃみんなが悪者に見えて仕方がない。周りを見ても、僕を嘲笑ってるかのように。なんで生まれてきたんだろう。諦めよう。体も心もボロボロで、限界らしい。


 そう。こんな僕にとって、生きる理由をひとつ探すより10個のこの世から消える理由を探す方が容易いなんだ。

 何も意識せず、公園の屋根のあるベンチに座り込んだ。どっと力が抜けた。歩くことに労力を使わないことで、思考することにいっそう拍車がかかった。何も考えないようにしたいけど、やはり考える。

 どうやって死のうかと意識がそっちばかりに行ってしまう。首吊り、飛び降り、はたまた線路に落ちようか。毒?練炭?刺殺?考えるだけで、なんだか楽しくなってくる。でも、死にたいわけじゃない。消えてしまいだけだ。

 矛盾だらけの僕の人生。

 ポツポツと雨が降っていた雨も次第に強くなっていき、ザーッと音を立て周りの生活音をかき消していく。思考しても思考しても雨に流されていくような。考えがまとまらない。だから余計に今の僕には分からない。

 何人かの僕が僕に問いかける。

『いじめられている方が悪いのか、いじめる方が悪いのか。』

『自殺するのは弱いからか。』

『自傷はただの自己満なのか。』

『逃げるというのは卑怯なのか。卑怯だから悪なのか。』

 この世に絶対的な正義があるならば、僕は悪者になってやる。

 気付いたら手を強く握っていた。爪が皮膚を刺し、少し紅くなっていた。痛いような痛くないような分からない。もう分からない。

 本当に――本当にいいのか?

 僕が悪になったら家族は悲しむだろう。

 

「今日も遅くなるからご飯は適当に食べときな」

 

 いや、そんな訳ない。僕に興味なんてない。

 どうせ他の男と遊んでる。

 いっその事、全部壊してやる。

 楽になれるのなら、悪にでもなんでもなってやる。だから…だから、ヒーローよ。僕を殺してくれ。死ぬ勇気すらない僕に、勇気を与えてくれ。それが無理ならいっその事殺してくれ。さっきまで、雨音が鼓膜の奥にまで響くようなうるささだったが、それか嘘みたいに無くなった。僕以外の人や物。何もかもが消えてしまったような。なんとも言えないこの気持ちはなんだろう。心地良ささえも覚えていく。

はぁ、最後くらいヒーローに助けて貰いたかったなぁ。

――――もうどうでもいいか。

 そして、ある考えが僕の中を支配した。

 ……そっか。僕をいじめるやつに仕返しをしてやればいいんだ。そしたら僕もスッキリするし、きっとヒーローが僕を止めに来る。簡単な事だったんだ。そうしたらきっといじめられなくもなる。この地獄よりも、刑務所内の方が楽に決まってる。

 僕をいじめたやつがのうのうと生きてるなんて、幸せになろうなんて許せない。壊されたんだ。僕にも壊す権利はあるよね。

 悪を滅するのはまた別の悪でなければならないんだ。

 いままで考えてたものが吹っ切れた。

 そうなった僕はただ気持ちが良かった。雨なんて気にしてなんかいられない。雨に打たれて笑った、はしゃいだ。泥だらけの体操服もさらに汚れた。いつぶりだろうか、何もかもを忘れ、純粋に笑ったの。

 ははは!おかしいのはこの世界か、はたまた僕なのか。まぁ、知ったこっちゃない。

 笑いが止まらない。楽しいって、幸せってこのことか。

 僕の人生だ、僕のやることが正しい。好き勝手やってもいいじゃないか!!

 そうか、そうだよな!ヒーローがいるってことは、悪者がいるんだ。悪者がいないとヒーローなんてやってこないんだもんな!

 なにか壊われる前に、早く来いよヒーロー。

 でもさぁ、ヒーローは遅れてやってくるんだっけか。

 遅れてきたら、間に合わなくなるぞ。

 僕は、僕はここにいるぞ!早く来いよ!

 お前たちが無視してきたこの僕が壊してやる。あの教室も全部、何もかも!

 

 もう手遅れだ。

 僕は気付いてたけど気付かないフリをしてた。僕はとっくの昔に壊れていたことに。後戻りはできない。

 僕は狂ってた。最初からそうだったのかもしれない。

 

 「僕ってば、天才だなぁ…《《悪》》になるのも悪くないな。」


 

もう誰もいない公園で雨音だけが大きくなっていく、何かを隠すように。

これって小説って言えるんでしょうか。

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