ゲーミング
いつも読んでいただきありがとうございます!今回は、掃除のご褒美(?)として二人が初めて「ネットカフェ」に足を踏み入れるお話です。学校では神童と呼ばれたシュンとタラカですが、仮想世界の洗礼を受けることに……。10歳の少年にボコボコにされるエリート二人の勇姿(?)を温かい目で見守ってください!
掃除が終わった後、僕たちは市場へと向かった。
上海の商店街は、ただの市場じゃない。そこはもはや戦場だった。一歩足を踏み入れた瞬間、何千人もの値切る声が物理的な壁となって押し寄せてくる。混沌としていて、騒がしくて、それでいて最高に美味そうな屋台飯の匂いが鼻を突いた。
蜂の巣に石を投げ込んだ時の蜂みたいに、人で溢れかえっている。
そして、僕たちはそこに立っていた。
何かを買うためじゃない。僕たちは一文無しだから。
というか、厳密には市場に用があるわけでもなかった。目的はこの通りにある、ある場所だ。
なぜかって?
楽しむため。人生を謳歌するためだ。
どうやって? 決まってる、ゲームをするんだ。
「……ここが、ゲームができるっていうネットカフェ?」
シュンが指差した。
周囲は商店や美容室が立ち並んでいる。
「ああ。うちの学校の連中も、毎日ここに来てるらしいぞ」
タラカが自信たっぷりに言った。
「じゃあ、入ろう」
シュンが一歩踏み出す。
「待てよ、息子」
タラカが慌てて追いかけてきた。
店の中は薄暗かった。
至る所にモニターが並び、奥の方からは誰かの叫び声が聞こえてくる。
汗と、安っぽいスナック菓子の匂い。
本当に、涙が出るほど安っぽい菓子の匂いだ。
店主は40代くらいの、黒髪で手足が二本ずつあるおじさんだった。
……いや待て、僕は今作文を書いてるんじゃない。
そのおじさんは、ダイエットを宣告されたばかりの不機嫌な猫みたいな顔をしていた。そして、純粋な疑いの眼差しで僕たちを凝視してくる。
「……なんか、鬱になったドラえもんみたいだな」
僕は口が動いている自覚もなく、そう呟いてしまった。
タラカが僕の頭を思いきり引っぱたいた。
「バカ! お前、それ心の声じゃなくて口に出てるぞ!」
おじさんが怒りに満ちた顔でこっちを見ている。
「おじさん、すみません! 許してください!」
タラカが必死に謝る。
「こいつ、ちょっと頭のネジが飛んでるんです!」
「ほら、二人分の料金です。2時間お願いします!」
タラカはテーブルに金を叩きつけると、素早くシュンを奥へと引っ張っていった。
「このクソッタレ。死にてえのか? 思考と発言の区別くらいつけろよ!」
タラカがビンタをかまそうとしたけれど、僕の反射神経がそれを鮮やかに……
――パコォッ!
……防げなかった。僕の反射神経、全然速くないじゃん。
「お前があのおじさんをドラえもんとか呼ぶから、殺されかけたんだぞ」
タラカが怒鳴る。
「ごめんタラカ、つい。でも……事実だろ?」
シュンが言った。
「とにかく、これでお前の借金は40元追加だ。合計55元な」
「分かったよ(死んだらな)」
二人は隣り合わせに座り、コンピュータを立ち上げた。
「さて、どのゲームをやる?」
タラカが尋ねる。
「PUBG、Free Fire、それからArena of Valorか」
「どれも聞いたことあるな」
「後ろの席の連中がいつも話してるやつだ」
シュンが言う。
「PUBGにしようぜ」
タラカが提案した。
「降りて、拾って、撃つ。それだけだろ? 簡単なはずだ」
「いいよ。面白そうだ」
シュンも同意した。
二人はログインした。
アカウント名は、これ以上ないほどありきたりな名前にした。
Xun_Pro
Taraka_king
タラカは「シュンの親父」という名前にしようとしたが、幸運にも既に使用されていた。
……ちょっと待て。なんでその名前にしようとしたんだよ。
最初のマッチが始まった。
輸送機に乗せられ、どこか適当な島へと放り出される。
「タラカ、これどうやって降りるんだよ!」
シュンが叫んだ。
「そのデカいボタンを押せばいいんだよ!」
「どれだよ!」
「人間が飛び降りてる絵が描いてあるデカいボタンだよ!」
「あ、これか」
二人はどこか適当な場所に降り立ち、そして20秒間、木に引っかかって動けなくなった。
「どうやって脱出するんだ、シュン!」
タラカがマウスを激しく動かしながら叫ぶ。
「知るかよ! 僕だって出ようとしてるんだ。ノキアのヘビゲーム以外やったことないんだからな!」
シュンが返す。
「僕だってそうだよ!」
そして木から脱出している最中、僕たちは撃たれた。
Pookie_Jingという名前のプレイヤーに、たった2発で仕留められた。
「女の子か」
タラカが言った。
「ゲームの世界じゃ、女の名前はだいたい中身は男なんだよ」
僕は知識をひけらかすように、ドヤ顔で言った。
「まあいいや、負けは負けだ。次行こう、次!」
今度は「ポチンキ」という場所に降りた。
「シュン、見てくれ! M762っていう銃を手に入れたぞ!」
「こっちはM416だ」
二人は敵を発見した。
スコープを覗いて、引き金を引く。一発も当たらない。5メートル以上は逸れている。
けれど、相手は?
たった2秒で、僕たちを蜂の巣にした。
チャット欄を見る。
「雑魚だな、クソガキども」
相手がタイピングしてきた。
「俺は10歳だけど、2秒でお前らを殺したぞ。この初心者め」
「……誰だこのガキは!?」
「ぶっ殺してやる!」
「どこに住んでるんだ!」
シュンがデスクを叩き、立ち上がった。
「落ち着け、息子! 落ち着けって!」
タラカがシュンの肩に手を置く。
「……タラカ、息子って呼ぶな。マジでキレてるんだから」
「息子よ、叫ぶな。パパがついてる」
「ほら、味方が蘇生してくれたぞ。僕の――いや、ごめん」
タラカが言い直した。
「タラカ、あのガキを包囲するぞ。絶対に仕留める」
「いいか、あいつから正確に280センチ離れた地点に降りろ」
パラシュートで降下しながら、僕は復讐の計画を練った。
その時だ。変な音が聞こえた。
僕のキャラクターが死んだ。その3秒後、タラカも死んだ。
あのクソガキ、パラシュートで降下中の僕たちをスナイパーで撃ち抜きやがった。
「……あのガキ、マジで……」
「どこに住んでるんだよ!」
「お前ら、騒ぎすぎだぞ」
おじさんがやってきた。
「あ、すみません……」
タラカが謝る。
「まあ、ちょうど2時間経った。もう帰りな」
「……はい、分かりました」
二人はネットカフェを後にした。
2マッチ。キル数ゼロ。
10歳のガキに空中で撃ち殺されるという惨敗。
(住所さえ分かれば、絶対にぶちのめしてやるのに)
シュンは心の中で毒づいた。
「でも、楽しかったな。こんな高揚感、今まで感じたことがなかった」
「息子……」
「……悪かった。相棒」
「シュン。数学の代わりに、またいつかやりに来ないか?」
タラカが両手を広げて言った。
「ああ、もちろんだ。絶対またやる。来週にでもな」
シュンは拳を握りしめた。
「また遊ぼう」
「人生を楽しむために!」
その日の夜、僕たちはまた遊びたくて、スマホにPUBGモバイルをダウンロードした。
ワクワクしながらアプリを開く。
「早くXun_Proのアカウントにログインしたいな」
「僕もだ。Taraka_Kingが僕を待ってる」
けれど、ログインしようとして、僕たちはあることに気づいた。
「……あれ? 僕のアカウント、どこ?」
「待て、どうして変な名前になってるんだ?」
「ちょっと待て……もしかして僕たち、ゲストアカウントでログインしてたのか?」
「クソッタレ!!」
二人の叫び声が重なった。
僕たちは一晩中アカウントを復旧させようと奮闘したが、幸運にも……
いや、復旧なんてできなかった。ただ時間を無駄にしただけだ。
けれど、2戦0キルの死んだアカウントについて見ず知らずの人に熱く語り合うのは、案外楽しかった。
時間は無駄になんてしていない。僕たちはただ、「楽しんだ」のだから。
そして、それこそが一番大切なことなんだ。
いかがでしたか?現実は甘くなかったですね。「280センチ離れて降りろ」なんて計算をしている間に撃ち抜かれるのが、ゲーマーの世界の厳しさです。結局アカウントも消えてしまいましたが、二人の友情(と借金)は確実に深まったようです。次はどんな「遊び」に挑戦するのか、お楽しみに!




