昼食!
いつも読んでいただきありがとうございます!第10年A組、シュンとタラカの物語。今回は、ガリ勉だった二人が初めて「学校の外」へ飛び出すお話です。エリートの二人が、ただのラーメン一杯に翻弄される姿を楽しんでいただければ幸いです。
昼休みのチャイムが鳴った。いつもなら「時間の無駄だ」と感じるその音が、今回ばかりは勝利のファンファーレのように聞こえた。
僕は微笑んでいた。自分でも理由は分からない。ただ、これから一時間、教師の小言を聞かなくて済むと思うと、それだけで幸せだった。
今までのような惨めな気持ちは、どこにもない。
いつものように皆が教室を出ていく。
「先生、お疲れ様です」
教室を後にする先生に挨拶をしてから、僕は弁当箱を取り出し、包みを解いて蓋を開けた。
中身はいつも通り。白米に魚、そしてアーモンドが4粒。
「これで頭が良くなるし、度胸もつくぞ」とは父さんの言葉だ。
「……いただきます」
僕はため息をつきながら、箸を手に取った。
「よお、シュン」
不意に肩を叩かれた。タラカだ。
「どうした?」
「皆が食べてるようなものを食べに行こうぜ」
タラカが身を乗り出して言った。
「体に悪くて、でもちゃんと味がするやつ……」
「味? 味がするって、お前……」
僕は自分の弁当を二度見した。そして、また包みを結び直した。
「よし、行こうぜえええ!」
僕たちは昼休みの学校を飛び出した。
行き先は図務室でも図書室でもない、外の世界だ。
「で、何食うんだよタラカ!」
走りながら僕は叫んだ。
「知らねええええ!」
「バカかお前は!」
僕は彼の顔を見た。
「適当にクラスの誰かの後を追えばいいんだよ!」
「おっしゃ、行くか!」
校門の外へ向かう生徒たちの波が見える。
「タラカ、本当に行くのか?」
「昼休みに学校の外に出るなんて、初めてだ」
「僕もだよ。……なら、行こう!」
人混みをかき分け、僕たちは門を突き抜けた。
「出たぞ!」
二人で声を上げた。
二酸化炭素の少ない、酸素の濃い新鮮な空気が肺を満たす。
「化学式で考えるなよ、バカ!」
タラカが笑う。
「これは、僕たちが今まで手に入れられなかった『自由』の味だ」
そうだ。これが自由だ。
外の世界は屋台やストリートフードで溢れかえっていた。
「さて、どこで食う?」
タラカが辺りを見回す。
「うーん……一番混んでる店にしよう!」
僕たちは周囲を物色した。
ここはガラガラ。あそこも微妙だ。
「シュン、あの麺の店、あそこに行こうぜ」
二人でそこへ駆け寄った。
その時、僕は勢い余って誰かに強くぶつかってしまった。
相手がこちらを振り向く。その目は怒りで血走っていた。
「あ……す、すみま……」
謝ろうとしたけれど、相手は黙って僕を睨みつけたままだ。
「すみません、この子、僕の息子なんです。本当に申し訳ありません!」
男が僕をパンケーキみたいに叩き潰す前に、タラカが僕を人混みから引きずり出した。
「死にてえのか、シュン? ここじゃ誰も僕らのことなんて知らないんだぞ」
「それは分かったけど、誰が息子だよ!」
僕は彼に怒鳴った。
「いいじゃん、助けてやったんだから。あのままじゃ生きたまま食われてたぞ」
タラカは僕の肩に手を置いた。
「普通に友達って言えばいいだろ、この野郎……」
「まあ過ぎたことはいいだろ。ほら、列が空いてきた。何か食おうぜ」
店に入ると、先客が注文していた。
「激辛卵のせ麺、一杯」
「15元だよ」
店主の親父さんが丼を差し出す。
僕たちの番だ。
「なあシュン、何にする?」
「分かんない。同じやつでいいよ」
「おじさん、激辛麺を二つ」
「はいよ、一人15元だ」
丼を受け取りながらポケットに手を入れて、僕は凍りついた。
……お小遣いなんて、貰ってない。
「ねえタラカ、僕の分も15元貸してくれない?」
僕は彼を突っついて、耳元で囁いた。
「嫌だね」
タラカはニヤニヤしながら顔を背けた。まるで彼女でもできたみたいな得意げな顔だ。
「お願い、お願いだって。明日返すから」
嘘をついた。
「はぁ、分かったよ。ほら。返すまで貸しだからな」
「分かった、分かったよ」
僕はため息をついて受け取った。
人混みを抜ける。皆、道端の縁石に座って食べていた。
「僕らもあんな風に座るしかなさそうだな」
と、タラカ。
「でも、衛生面は?」
「気にするな。外に出たら楽しんだもん勝ちだ。座ろうぜ」
「……分かったよ」
僕は埃を払って腰を下ろした。
「うわ、冷たい……」
「僕も。……でも、なんかいいな」
道路は少し空いていた。時折、バイクや車が通り過ぎていく。
上海の街が、いつもより静かに感じられた。
「これで静かだって?」
タラカが茶化すように叫ぶ。
プップー!
「おい、そこ退け! 渋滞させるんじゃねえ!」
バイクの運転手が怒鳴った。
「……せっかくの気分を台無しにしやがって」
僕はぼやいた。
「まあ、食おうぜ」
タラカは僕の返事も待たずに、最初の一口を啜った。
そして、固まった。喋ることもせず、石みたいに。
「どうした、タラカ?」
「……驚いた。すごい味だ。食ってみろ、一度にたくさん頬張った方が味がよく分かるぞ」
僕は丼を見つめた。
「そうなの?」
僕は迷いながらも、麺を大量に掴み……一気に口へ放り込んだ。
必死に咀嚼する。
最初は何も感じなかった。
けれど、次の瞬間。
「うっ! なんだこれ!? 口の中が燃える!」
「これ何だよタラカ! 全然美味しくないじゃん!」
僕が彼の方を向くと、タラカは麺を道に向かって派手に吹き出していた。
そして、彼の顔が変貌する。
眉毛が額のあたりまで跳ね上がり、ピクピクと動き出した。
上へ。
下へ。
上へ。
下へ。
「お味はいかがかな、息子よ?」
ドヤ顔を浮かべているが、眉毛の痙攣は止まっていない。
「タラカ、このクソ野郎!」
僕は彼をひっぱたこうとした。
「ほら息子、パパが水を買ってきてやったぞ」
彼は僕の手にボトルを押し付けた。
「誰がパパだよ、死ね!」
「お前だよ」
彼は即答した。
僕が本気でキレたと察したのか、タラカは逃げ出した。
僕はそれを追いかける。
「パパを追いかけるんじゃない、息子よ!」
彼は振り返りながら叫ぶ。
「このクソッタレが!」
僕は手近なボトルを、彼の背中に向かって投げつけた。
「いってえ! 何すんだよこのアマ!」
「おお……僕、コントロールいいじゃん」
僕は独り言を漏らした。
「違うね! 今のはただのまぐれだ!」
タラカが言い返す。
結局、それが僕たちのランチだった。辛すぎて、結局麺は食べられなかった。
おかげで、その日は一日中お腹が空いたままだった。
「全部タラカのせいだ!」
「お前が勝手に食ったんだろ、このボケ!」
いかがでしたか?結局、お腹を空かせたまま午後の授業を受けることになった二人ですが、その顔はどこか晴れやかです。完璧な成績よりも、友達と食べる(そして吐き出す)激辛麺の方が、彼らにとっては価値があったのかもしれませんね。次回、空腹の二人にさらなる試練が!?お楽しみに!




