反逆者
僕は10年A組のシュン・リャム。いよいよ、学校生活最後の年だ。
「学生時代は人生で一番いい時期だ」なんて、誰もが口を揃えて言う。最高の思い出ができる場所なんだと。幼稚園からの友人も、かつて僕にそう言っていた。
でも、僕はそうは思わない。
僕の手元に残っている思い出といえば、金メダルと表彰状だけだ。部屋は「満点」の山で埋め尽くされている。
最初は、それでいいと思っていた。母さんはケーキを買ってお祝いしてくれたし、僕を褒めてくれた。そのサイクルが始まったのは、幼稚園の頃だった。
「母さん!見て、クラスで1番になったよ!」
幼い僕はそう言った。
「まあ、シュン、すごいじゃない。今日はご褒美にお菓子を買ってあげるわね」
あの頃の母さんの笑顔は本物だった。今向けられるような、作り物の笑顔じゃなかった。
でも、今はどうだろう。
自分が幸せなのかさえ、もう分からない。
たとえ100点満点を取ったとしても、母さんはもうあんな風には笑ってくれない。
「母さん、中間の成績、全部満点だったよ」
僕は誇らしげに言った。
「よくやったわね」
母さんはスマホから目を離さず、感情の微塵もない声でそう言った。
ライバルのタラカ・ジも、きっと同じ気持ちだったんだろう。
いつも僕が1位で、彼が2位だった。
中学1年生。
期末試験で僕は1位になった。
彼との差はわずか5点。大した差ではなかったけれど、それが僕らのライバル心の火種になった。
彼は僕を見つめていた。その瞳に宿っていたのは悲しみではなく、闘志という名の燃料だった。
「次は絶対に負かしてやる」
彼はそう宣言した。
「やってみれば」
僕は冷静に返した。
それが、お互いを高め合うためのエネルギーだった。二人の間の火花は、回を追うごとに熱く燃え上がっていった。
でも……。
彼が僕に勝ったこと?
それは今まで2回しかなかった。中学2年と中学4年の時だ。彼は約束通り、2回目に僕を追い抜いた。
1回目は僕がインフルエンザにかかった時で、2回目は交通事故で腕を骨折した時だった。
それでも僕は書いた。折れた腕を抱えながら、試験を受けた。一度だって休んだことはないし、試験を逃したこともない。
「シュン、どうしてここに来たの? 休みを取りなさい、たかが試験じゃない」
英語のチャン・リン先生にそう言われた。
「いいえ、先生。試験を受けるのは僕の義務ですから。はは……」
あの頃の僕は、本当に愚かだった。
周りは僕とタラカが憎み合っていると思っていたけれど、実際はそうじゃない。僕らの関係は、どちらかと言えば「中立」だったと思う。
もっとも、順位の話以外で会話をしたことなんて一度もなかったけれど。
そして今、僕たちは屋上で二人きりで立っている。ここなら、誰にも邪魔されない。
僕たちがここにいる理由、それは中学3年の学年末試験の結果だ。
僕はいつものように自信があった。試験を終えた後、すぐ後ろにいたタラカと、簡単な問題について語り合った。
「タラカ、試験はどうだった?」
「まあ、正直手応えはあるよ。97点は固いかな。君は?」
……。
けれど結果発表の日、僕の人生は、そしておそらく彼の人生も、音を立てて崩れ去った。
「見せてくれ」
僕は生徒たちをかき分けて掲示板を見た。そして、絶句した。
僕の順位は3位。タラカは2位だった。
悪い結果ではない。点数だって、わずか4点差だ。
でも、正体不明の二人の生徒に負けたという事実が、僕をひどく吐き気させた。
僕のスコアは900点中895点。
誰もが羨むような、完璧に近いスコアだ。
その日の夜。
「お前には心底失望したよ、シュン」
父さんは僕の順位を見て言った。
「……ごめんなさい、父さん。次はもっと頑張るから」
僕は俯いて答えた。
「シュン、たった4点差で、どこの誰とも分からない生徒に二人も抜かれるなんて……母さん、本当にショックだわ」
「でも、母さん。6千人も生徒がいるんだ。そんなに悪い結果じゃ……」
言い返そうとした僕を、父さんの怒鳴り声が遮った。
「口答えするな、この恩知らずが!」
「まあ、あなた。怒鳴らないで。今回だけよ。シュン、部屋に戻って勉強しなさい」
母さんがなだめるように言い、二人は静かに言い合いを始めた。
僕の結果は、本当にそんなに悪かったんだろうか?
たかが点数が、それほどまでに重要なのか?
……いや、よせ。そんなことを考えるな。親の期待に応えなきゃいけないんだ。
そして今、僕はタラカと向き合っている。
「シュン、もう終わりにするよ。君のライバルでいるのは、もうやめだ。ようやく気づいたんだ。ある学期にどんなに良い成績を取ったって、次の瞬間にはゴミ扱いされる。敗北者になるんだ。だから、僕はもう点数を追いかけるのをやめる。この1年は、高校生活を楽しむことにした。今までできなかったことを、全部やるつもりだ。僕には成績以外、何も残ってない。だからこれからは、楽しいことだけを追いかけるよ」
タラカの言葉が空気に溶けていく。彼は僕と視線を合わせたまま動かない。
「……どうして僕にそんなことを言うんだ?」
沈黙を破って、僕は聞いた。
「君が、僕にとって一番友達に近い存在だから。成績のこと以外話したことはなかったけど、でも僕はもう行くよ。ライバル関係は解消だ。君を誘いに来たんだ。人生の新しい章を始めようぜ。成績なんて追いかけずに、やるべきだったことを全部やろう。人生を楽しもう。運命がくれた最後のチャンスだ。来年には卒業なんだから」
深い声で、タラカは言った。
人生を楽しむ? 彼の言葉が、トラックに撥ねられたような衝撃で僕を貫いた。
彼は正しい。たった一度のミスで、両親はあんな態度を取った。ここ数年、僕自身のことなんて一度も気にかけてくれなかった。
でも……。
「じゃあな、シュン。君は勉強を続けるかもしれないけど、僕はもうこの生活から降りる。割に合わないよ」
タラカが屋上の出口に向かって歩き出した。
行かせてやるべきだ。僕には親の期待がある。それを捨てるのか?
「待って、タラカ! ……僕も、君と一緒に人生を楽しむよ。今までやったことのないことをしよう。遊ぼう。一緒に人生を楽しもう!」
何だったんだろう、今の言葉は。反射だったのか、それとも心の叫びだったのか、自分でも分からない。
でも、墓場まで持っていけないような成績表のために、人生を無駄にするのはもう嫌だ。
もしあの時、母さんがもう一度笑ってくれていたら、父さんが僕を認めてくれていたら、タラカに頷くことはなかったかもしれない。
けれど、今は違う。もう決めたんだ。
「人生を楽しもう!」
僕は笑って言った。
僕たちは二人で駆け出し、屋上の扉を抜けた。
こんにちは!最後までお付き合いいただき感謝です。それでは、また次のチャプターで




