第6話 束の間の平穏
都に戻った白兎は、すぐに尚薬局を訪れた。楚大人に事の顛末を報告するためだ。
楚大人は腕を組んで考え込んでいる。
「……なるほど。青竜花を食べた家畜の乳が原因だったのか。確かに本草学にもそのような記述がある。実際にそれを見抜いたのは見事だ」
白兎は驚いた。
(あの楚大人が私を褒めている……?)
「だが勘違いするな。お前はまだ若く経験も浅い。今回は二度目の調査でようやく正解に辿り着いただけだ。最初から気づけなかったことを忘れるな」
すぐに厳しい表情に戻った楚大人に白兎はやれやれと思いながらも、どこかホッとする。
あの楚大人に素直に褒められるのは妙に落ち着かない。
「もちろんです。慢心せず精進いたします」
「あぁ、それでいい」
白兎は深く頭を下げ、尚薬局を後にした。
(褒められたのか、叱られたのか……まあ、どちらでもいいか。無事に解決してこれ以上被害は広がらないのだから。)
それに――これで追放されることもない。その事実に白兎は少しだけ安堵する。
部屋に戻るとドッと疲れが溢れて、白兎は倒れるように床に座り込んだ。
この三日間、ほとんど眠れなかった。
町の人々の敵意に満ちた目、石を投げようとした男の怒り、そして何より自分の診断が不完全だったという事実。
「師匠……」
(師匠なら、おじいちゃんなら、すぐに気づいたんだろうか……。)
ここにいないはずの祖父がふっと笑った気がする。
(……いや、きっとおじいちゃんだって最初は失敗を重ねてきたはず。最初から完璧になんてできないってよく言っていた。それに、おじいちゃんの水銀中毒はきっと失敗の表れだ。だから私に口酸っぱく煙を吸うな、素手で触るなって言っていたんだろう。)
「…………失敗は成功の基、か」
白兎は立ち上がり作業場への向かった。
錬丹の準備をしなければ。それが今の自分にできることだ。
その夜、白兎は作業場で辰砂の精錬をしていた。
より純度の高いものにできればそれだけ錬丹の成功確率が上がるため、錬丹術には必須の作業だ。
炎の色を見ながら火加減を調整する。
この作業は祖父と一緒にやることが多かったため、自然と彼のことを思い出す。
(……今頃、何をしてるのかな。寂しくないかな。体は辛くないかな。食事や睡眠はとれているかな。面倒がって体を洗っていないんじゃないだろうか。)
単純な作業故に、一度蓋を開けた思い出が急速に広がっていく。
静かな山の工房。霧に包まれた朝。祖父の温かい声。
「……っ」
白兎は目頭が熱くなるのを感じた。
(寂しがっているのは私、か……。でも、おじいちゃんの代わりにここで錬丹術師として、男として生きると決めたのだから――……お払い箱になるまで目立たず荒波を立てずに過ごしていかないと。)
深呼吸をして気持ちを切り替える。
再び作業に集中していると、しばらくして扉が叩かれた。今回は荒々しくはない。
「白兎様、おられますか」
「はい」
扉を開けると楊公公が心配そうな顔で立っていた。
「白兎様、本当にお疲れ様でした。少しお休みになった方がよろしいのでは」
「いえ、大丈夫です。まだやることがありますから」
「そうですか……でも無理はなさらないでくださいね」
楊公公は優しく言った。
ちょうど祖父のことを考えていたからだろうか、歳は半分ほどなのに祖父の面影を感じる楊公公に白兎は小さく笑う。
「ところで、明日からしばらく陛下のご命令で宮中全体が休みになります」
「休み?」
「はい。月に一度、職員たちが休める期間があるのです。三日間ほど白兎様も自由に過ごしてくださって構いません」
(休みといってもおじいちゃんに会いに行くには短いし、これは体を休めろという天のお達しかな。)
「分かりました。ありがとうございます」
「あまりご無理なさらず休んでくださいね。それでは、おやすみなさい」
楊公公が去った後、白兎はもう少しだけ作業を続けてから床に就いた。
翌朝、白兎は久しぶりにゆっくりと目を覚ました。
窓から差し込む朝日が心地よく、これは部屋にこもるのはもったいないと白兎は身支度を整える。
(まだ行ったことのない場所も多いし、少し宮中を散歩してみようかな。後宮には行かない――いや、行けないとして、確かあの辺りに庭園や池があったような。)
元々山で育った白兎だ。当然自然を好み、水の音や花の香り癒される質である。
白兎は後宮の周辺を避けながら、庭園や池のある場所を歩いた。
朝の空気は清々しく鳥のさえずりが聞こえる。
(こんなに綺麗な場所があったんだな……。)
白兎は花壇に咲く花々を眺めながら歩いた。
山の工房にも花はあったが、ここまで手入れされた庭園は初めて見る。
色とりどりの花が咲き誇り、蝶が舞う美しい庭園。見ているだけで癒される。
(あれは牡丹か。それに芍薬も……。あ、あそこに咲いているのは……。)
白兎は足を止めた。青い花だ。
連日悩まされていたこともあって一瞬青竜花かと身構えたが、よく見ると違った。
(なんだ。朝顔か。よかった……。)
白兎はほっと胸を撫で下ろす。
青竜花はそこにあるだけであれば美しい花であり、この花壇にあったとしても不思議ではないが、見ているとどうしても宿場町のことを思い出してしまうため今はあまり見たくない。
「あら、今日は珍しくお若い方がいらっしゃるわ」
突然声をかけられ、振り返ればそこに侍女服を着た年配の女官が立っていた。
六十代ほどだろうか。穏やかな顔立ちで優しそうな目をしている。
「はじめまして。錬丹術師の白兎と申します」
「あぁ、あなたが例の。何でもとても聡明だとか」
(どこからそんな噂が……?柳皇貴妃様との一件は楚大人の手柄ということで落ち着いたはずだ。それに、宿場町でのことを言っているのだとしたら、あまりにも耳が早すぎる……。…………もしかして、この方はかなり高位の侍女なのでは?)
「失礼、ご挨拶が遅れました。私は秀蘭と申します。皇太后様付きの侍女頭を務めております」
(なるほど、皇太后の……。耳が早いはずだ。)
宮中のすべてを知っているといっても過言ではない皇太后の側近なのだとしたら頷ける。
白兎は深々と頭を下げた。
「秀蘭様。お会いできて光栄です」
「堅苦しい挨拶は結構ですよ。私はもう歳ですから、若い方と気軽に話すのが好きなのです」
秀蘭はにこやかに言って、庭園の向こうに見える茶室を指差した。
「少しお時間はありますか?あそこに茶室があるのです。お茶でもいかがでしょう」
「ぜひ、同席させていただきます」
「よかった。ではついていらしてください」
秀蘭に案内され入ったのは小さな茶室で、静かで落ち着いた空間だった。
「ここは私の個人的な茶室なのです。たまに一人でお茶を飲んで休むのですよ」
手慣れた様子で茶を淹れる秀蘭を横目に、白兎は失礼にならない程度に辺りを見回す。
(侍女頭とはいえ、宮中に個人的な茶室……。相当気に入られているんだろう。すごい人だな……。)
「白兎様はお若いのに大変ですね。宮中は複雑な場所ですから」
「いえ……。ですがまだ慣れないことばかりです」
「それは当然です。でもあなたは聡明な方ですから、きっとうまくやっていけますよ。どうぞ」
「頂戴します」
秀蘭に差し出された茶器を受け取り、ゆっくりと味わうように茶を飲む。
(……おいしい。優しい味だ。ほんのり甘くて、後味はすっきりとしていて……。)
「これは何というお茶ですか?」
「普通の茶ですよ」
「本当に?初めて飲むように思えたのですが……」
「茶にも淹れるコツがあるのです。四十年、侍女として働いてきてようやく分かったことです。……宮中で生き延びるコツと同じですね」
「…………どんなコツですか?」
秀蘭は穏やかな顔で、だけど真剣な目で白兎を見る。
「『誰を信じるか』です」
(誰を、信じるか……。)
「宮中には様々な人がいます。善人もいれば悪人もいる。味方のふりをした敵もいれば、敵のふりをした味方もいる」
「…………」
「だからあなた自身の目で見て、心で感じて、信じられる人を見つけなさい。そしてその人を大切にするのです」
秀蘭の言葉には重みがあった。
「でも……どうやって見極めれば」
「それは難しいですね」
秀蘭は優しく笑った。
「ただ一つ言えるのは、あなたの直感を信じることです。何か違和感を感じたら、それは大抵当たっています」
秀蘭の言葉に白兎はあることを思い出す。
あの夜、月の下で出会った美人、蘭羽のことだ。
(あの人、とても優しかったけど……秀蘭様や楊公公様とは違う。どこか掴みどころがなくて、確かに――何か違和感を覚えた。)
でも、何にかは分からない。
会ったのはあの一度きりでよく知らないのだから仕方ないことなのだが。
「秀蘭様は……長く宮中におられるのですね」
「えぇ。四十年以上もいると、本当に色々なこを経験します。良いことも悪いことも」
何かを思い出しているのか、秀蘭は遠い目をしている。
「でも私は幸運でした。信じられる人に出会えたから。その人のおかげで今まで生き延びることができました」
「その方は……今も」
「いえ、もう亡くなりました」
秀蘭は静かに言った。
「でもその人が教えてくれたことは今も私の中に生きています。だから私も、若い方々に伝えていきたいのです」
白兎は秀蘭の優しさに触れて、少し心が温かくなった。
「ありがとうございます。秀蘭様のお話、心に留めておきます」
「ええ。困ったことがあったら、いつでも私のところに来てください。力になれることがあるかもしれません。それから、もう一つ」
にこやかに笑っていた秀蘭が少し真剣な顔をする。
「あまり無理をしすぎないでくださいね」
「え?」
「あなたは真面目で責任感が強い。それは素晴らしいことです。でも、自分を犠牲にしすぎてはいけません」
「…………」
「自分も大切にしなさい。あなたが幸せでなければ、人も救えませんから」
白兎は少し驚いた。
自分を大切にするなど、わざわざ考えたこともなかったからだ。
「……はい。ありがとうございます」
「今日は楽しい時間でした。またぜひいらしてください」
頭を下げて白兎は茶室を後にする。
(秀蘭様……優しい方だったな。あの方の言葉を忘れないようにしよう。)
秀蘭との出会いはとても貴重なものに思えた。まだ昼間だというのにとても有意義な一日を過ごせている気がして、白兎の足取りは自然と軽くなる。
白兎は再び庭園を歩きながら、秀蘭に言われたことを思い出していた。
『誰を信じるか』
『直感を信じること』
『自分も大切にしなさい』
白兎は今まで出会った人々を思い返した。
楚大人は厳しいが、医療に真面目で嘘はついていない気がする。
楊公公は親切で、どこか祖父のように思える時がある。
柳皇貴妃は……怖いが、少なくとも今は敵ではない。
そして……蘭羽。あの掴みどころのない男。
白兎は少し眉をひそめた。
(あの人、何を考えているのか全然分からないんだよな……。)
優しくて親切で、話しやすい。だからこそ、何か引っかかる。
完璧すぎるのだ。まるで演技をしているような……。
(いや、考えすぎかな。ただ人当たりがいい人なのかもしれない。)
白兎は頭を振った。疑い深くなりすぎるのも良くない。
その時、白兎は池の畔に美しい東屋を見つけた。
四本の柱で支えられており、小さいながらに解放感を感じる建物だ。
「翡翠亭……」
東屋の柱に掛けられた札にそう書かれていた。
特に立ち入りを禁止されているようにも見えず中に入ってみれば、池を眺めながら座れるようになっている。風が心地よくて静かに揺れる水面も見えた。
「綺麗だな……」
白兎は思わず呟く。
(庭園といい、この東屋といい、こんな場所があるなんて。宮中も悪いことばかりじゃないんだな。)
そんなことを考えながらぼんやり池を眺めていると、不意に足音が聞こえた。
振り返ると長身の男が近づいてくる。長い黒髪を後ろで結ったその姿には見覚えがある。――あの美しい顔立ち、蘭羽だ。
(うわ、また会ってしまった……。)
「あぁ、これはこれは、こんにちは。偶然ですね」
蘭羽も気づいて微笑みかける。
「翡翠亭にいらしたのですね。白兎と会えるとは思いませんでした」
「はい、私も驚いています。……ここは綺麗な場所ですね」
「そうでしょう。私もよくここに来るのです」
蘭羽は白兎の隣に腰を下ろした。
白兎は内心で少し身構える。
(何故隣に座るんだ……。その距離で座られたら自然と話す流れになってしまうじゃないか……!)
「宿場町の件、お疲れ様でした。大変だったでしょう」
「お耳が早いですね。……そういえば皇太后様付きの文官でしたか」
「すぐに宮中で広がりますよ。若き錬丹術師は優秀だと」
「それは……少し遠慮願いたいですが」
「ふふ。ですが、本当に無事に解決できてよかった。白兎のおかげで救われた人々は沢山いますよ。私には到底できないことです」
心から感心しているように言う蘭羽だが、白兎にはその言葉がどこか上辺だけのように聞こえた。
(……いやいやいや、考えすぎだって。いくらあらゆることを疑えと学んだからといって、人の善意まで疑うようでは人として終わりだ。普通に褒めてくれているんだから受け取らないと。)
「ありがとうございます」
「……少しお疲れのように見えますね。無理をしていませんか?」
「連日忙しかったので……。でも、ちょうどお休みをいただけたので大丈夫ですよ」
「そうですか。でも、もし何か困ったことがあれば、遠慮なく言ってくださいね」
(やっぱり、二度目に会う相手とは思えないほど優しい……。あまり疑いすぎても失礼だ。)
「ありがとうございます。何かあれば、頼らせていただきます」
「そうしてください」
優しく笑う蘭羽にどこかまだ疑いながらも、白兎もにこやかに笑い返した。
「そういえば、白兎」
「はい」
「宮中での生活には慣れましたか」
「それなりには。でも、まだ慣れないことばかりです」
「当然ですね。私も最初はそうでした」
蘭羽は懐かしい目をして穏やかに笑う。
「でも時間が経てば少しずつ慣れていきます。焦らなくても大丈夫ですよ」
「ありがとうございます」
「……では、私はこれで」
「もう行かれるのですか?」
「引き留めていただけたのなら嬉しいのですが、この後用事がありまして。今日は少し立ち寄っただけなのです」
(別に引き留めてないけど……。それにしてもこの人、私のことを男だと思っているくせによくもこんな甘いセリフを言えるな。根っからのタラシなのか?)
「あまり無理をしないでくださいね」
「蘭羽様も」
「では、また」
蘭羽が去っていくのを見送ってもう少しだけ池の鯉を眺めた後、白兎もまた部屋に戻ることにした。
庭園を抜け廊下を歩いていると、偶然にも楊公公に出会う。
「おや、散歩ですか」
「はい。とても有意義な時間でした」
「そうですか、それはよかった。宮中には美しいものが多いでしょう。人も、物も、自然も――すべてが美しい」
楊公公の言葉にはどこか含みがある。
まるで、美しいだけではないと言いたげだ。
「ところで、白兎様」
「はい」
「お呼びがかかりました。明日の夜、後宮に向かってください」
「えっ……!?」
「柳皇貴妃様がお呼びです」
白兎の心臓が跳ねた。
「また、何か…?」
「詳しくは分かりませんが、急ぎのようです。明日の夜、凝翠宮へ」
「分かりました……」
せっかく楽しい一日だったのに、白兎は少し憂鬱な気分になってしまった。
だけど、柳皇貴妃の呼び出しを断ることはできない。
「それでは、また明日。頑張ってください」
「はい……お疲れ様です……」
部屋に戻った白兎は不安を感じながらも、明日のために早めに床に就くことにした。
翌日の夜、朝からそわそわしていた白兎は薬箱を持って凝翠宮へと向かった。
凝翠宮の扉が開くと柳皇貴妃が座っているのが見える。
(あれ……誰も倒れていない。じゃあ何だ……?)
柳皇貴妃は相変わらず温度のない目で白兎を見る。
「来たか、白兎」
「はい」
「今日は診察ではない。そなたに頼みたいことがあるのだ」
「頼み……ですか」
「ああ」
柳皇貴妃は立ち上がり、おもむろに窓の外を見た。
「最近後宮で奇妙なことが起きていることは知っているか?」
「奇妙なこと……?」
「知らないか。何人もの妃嬪や侍女が、原因不明の体調不良を訴えているのだ」
白兎は息を呑んだ。
「原因不明の体調不良、ですか。死人はいないのですね」
「そうだ。皆死ぬほどではないが、寝込む程度には体調を崩している。楚大人も診たが原因が特定できないと言う。だが私は、これが偶然だとは思えない。そこでそなただ。そなたの優れた観察眼とその知恵で真相を突き止めてほしい」
(これは、失敗したら最悪首が飛ぶ。侍女だけであればまだしも、何人もの妃嬪が倒れたとなれば――これは、一大事だ。)
一度引き受けたら匙を投げるわけにはいかない。
明らかに無茶な命令。楚大人でも分からないことを、いくら先日の事件を解決したからといって白兎に任せようなどと……。
(……でも、人が苦しんでいるなら助けたい。きっとおじいちゃんならそうする。)
錬丹術師になったのも、男装をしてまで後宮に来たのも、すべては祖父の意志だ。事件を解決しているのだって、周りに求められたから。そこに白兎の意志があるのかと言われれば流されてきた、と言う方が相応しい。
でも――。
「分かりました、調査させていただきます」
白兎は少しずつ、自分の意志で動くことを意識し始めていた。
「頼んだぞ。また、今回の件に伴い、そなたの後宮への自由な出入りを許可する」
「えっ……」
「いちいち許可をとっていては面倒だろう。私の名において許可しよう」
「ありがとうございます」
「では、明日から後宮に入ってよい。被害者たちを診察し、原因を突き止めよ」
柳皇貴妃の声は命令口調だったが、その目には期待が込められていた。
「はい。必ず」
白兎は再び頭を下げる。
新たな事件が始まろうとしていた。
凝翠宮を後にした白兎は、廊下を歩きながら考えた。
楚大人でも分からない原因不明の体調不良。
となれば、通常の病ではないということだ。
(いったい何が原因なんだろう。毒か、病気か、それとも――。)
白兎が後宮の中庭を通り過ぎようとした時、池の畔に人影を見つけた。
月明かりに照らされたその姿は――蘭羽だ。
(また……あの人。)
白兎は隠れて様子を見た。
蘭羽は何かを観察するように、建物を見上げたり池を覗き込んだりしている。
まるで、何かを調べているかのような動きを白兎は疑問に思う。
(ここで何をしているんだ……?何かを調べるなら夜より昼の方が明るくてやりやすいだろうに。)
でも、自分には関係ないことだ。
声をかけずにそのまま様子を見守っていると、しばらくして蘭羽は去っていった。
そして確かにいなくなったのを見て、白兎もまたそっと後宮を後にした。




