表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
嘯くヨタカ  作者: イタノリ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/9

少女救出作戦

 この大都会では夜だというのに人が多すぎる。走って移動したいが、それでは一目につく。ではどうすればいいか。簡単な話だ。目にも止まらぬ速さで走り抜けて行けばいい。


「さて、それでは仕事と参りますか。ボタン、気合い入れて走るよ」


「はぁ〜い」


 私たちは音も立てず風も吹かせず、されど目にも止まらぬ速さで走り出した。(あやかし)たる者、これくらいの芸当はできて当然。古来より人間達が妖を目視できずにいるのは、こうした単純な理由もあるのだ。


 道の辻々に立つ道祖神は自らの石の腕で目的地を指し示してくれている。案内に従って走っていくが、どうも郊外の方へと案内されていく。女の子を拐かした悪党どもは都市部から離れようとしているのだろうか。だが、郊外へ行けばそれだけ人通りも少なくなり人目にはつかない。これは悪党にしても、私達にしても好都合。


 ある程度街から離れ、空き地や田畑が目に映るようになったあたりで道の辻に立つ道祖神が力強く一台の車を指し示した。


「おっ?姉貴、見てあれ!」


 一台の乗用車が、道を走っていく。一瞬だけしか見えなかったが、その一瞬で充分。後部座席にお行儀よく座っている子供が見えた。間違いない。絵巻で見たカスミという女の子だ。


「見〜つけた。やっちゃう?姉貴」


「待ちな。今ここで車を襲ってやるのもいいが、万が一子供の身に何かっあったら地蔵から説教される。それはごめん被りたい。少し泳がせてみよう。他にも仲間がいるのかもしれないし、アジトに戻るのかも。もし奴らに仲間がいるのなら、悪党面を拝んで、まとめてしばき倒してやりたい」


「さすが姉貴ぃ〜。悪い顔してるねぇ」


「あら、そうかしら?」


 私はこの仕事に楽しみなんざ見出しちゃいない。だが、自分達は強く、狩る側の人間だと可愛くも勘違いしている悪党どもに、そんなのものはただの勘違いだ、お前らは人間は弱く狩られる側の立場だ、ということを身をもって教えるのは少々小気味よい。


 ということで、しばらく悪党を泳がせ後をつけることにした。それほど時を待たず車は郊外の小さな倉庫の前で停まった。倉庫の中から、二人の男が現れ、運転席の男と二、三言葉を交わすとシャッターが上がり、車を倉庫の中へと誘導した。


 思った通り、仲間がいたか。ひょっとしたら、()()()の線もあるが、細かいことはどうでもいい。そのへんは警察が好きに探ればいい。私達は言われたことをするだけだ。ついでに子供を攫う悪党共をしばき倒す。


 ボタンには倉庫の天井で待機させ、私は倉庫のシャッターの前へと移動した。ふとシャッターを見上げると監視カメラが設置されているのが見える。


「まぁ、それくらいするか」


 妖とはいえ肉体を持っている以上、カメラには映ってしまう。地蔵からも派手にやるなと言われた以上、できるだけスマートに事を進めたい。さて、どうするか。


「ボタン、天井から中の様子わかる?」


「大体わかるよ。中で奴らなんか話してるよ。音声、そっちにも繋ごうか?」


「えぇ、お願い」


 妖力は実に便利だ。私とボタンの妖力を電波のように波長を合わせ繋げるだけで、現代でいうところの通信が可能になる。お互いに気持ちが通じていると、まるで電話のように会話することができて、便利なことこの上ない。


 そしてボタンは今、倉庫の中に自分の妖力を薄く拡散させ充満させている。こうすると中の様子が手に取るようにわかるし、音や会話も聞こえるようになる。それを妖力に乗せて倉庫内の情報を私に伝えることができれば、離れた場所にいる私でも情報を得られる。


 倉庫内にいる人間は全部で十人。助け出さなきゃいけない女の子に、親に偽装した男女の二人。その男女と話している男とその護衛らしき大男で二人。残りの五名は武装して倉庫内を巡回中だ。


「姉貴ぃ。中の悪党ども、兵隊さんが持つような鉄砲構えてるのがいっぱいいるよ」


「小銃ね。随分厳重に警戒しているようだけど、これはめんどくさそうな予感」


「え〜?大丈夫っしょ。撃たれたところで死ぬことなんか無いし。超〜痛いけど」


「そこじゃないわ。女の子一人連れ出すために、なんでここまで厳重な警備をしているのかってことよ。おまけに、地蔵の話では警察の目は完全に欺いているようだし、不可解ね」


「難しいことはよく分かんないけどさ、武器持ってる奴ら、車運転してきた奴となんか話してるよ」


 意識を澄まし、倉庫内の会話を感じ取る。聞こえてきた。


「予定通り、例の子供を連れてきた。あとはそちらの管轄だ。俺たちはこれで失礼して引き続き()()()を行う」


「確かに、子供は受け取った。後のことはこちらに任せろ」


 組織的に子供を攫っているのか。随分手慣れた様子だ。


「それにしても、今回の子供は眠らせずに連れてきたのか。かわいそうに、怖がってるじゃないか」


「薬を飲ませる暇がなかっただけさ。今回は妙な気がしてな。早めに持ってきた」


「おいおい、まさかアシなんか残しちゃいないだろうな?ただでさえ警察が嗅ぎ回ってるんだ。まさかつけられてないだろうな?」


「それは大丈夫だ。だが、警戒するに越したことはない。それに、この子は特におとなしい。大人に歯向かうような子じゃない。眠っていた方が、こんな強面どもに囲まれちて怖がる必要もなかったが、仕方ない」


「そうかそうか、そりゃ確かにかわいそうだ。なぁ、嬢ちゃん。俺が怖いか?ほら、言ってみろよ」


 男は女の子に詰め寄り、ねっとりと高圧的に話しかけている。だが、女の子は何も話すことができない。体が震えているのが妖力を通じて感じる。かわいそうに、こんな悪党どもに囲まれて。


「それにしても、最近()()のペースが早い。何かあったのか?」


「依頼主が早く子供をよこせと、うるさいんだとよ。変態どもめ。そんなに子供が喰いたいのかねぇ。金持ちの趣味はわからねぇな」


「まぁな。このご時世に儀式や生け贄で長命や若さが手に入ると本気で考えているとは驚きだ。聞いたことあるか?日本人は質がいいらしいぞ。特に子供。そして、殺す前にこれでもかとありとあらゆる苦痛を味合わせた子供の血にはより若返りの効果があるとかで、金持ち共は好んで子供のを痛めつけた上でその生き血を飲むらしい」


「まるで吸血鬼だな。ガキ共には同情するよ、こんな事聞きたくなかっただろ。なぁ嬢ちゃん。いや、死ぬ前に自分が辿る未来を知れて逆に良かったのかもな」


 男の下卑た笑いが倉庫に響く。胸糞悪い。地蔵め、こいつらを生かして逃せっていうのか。


「姉貴ぃ、随分怒ってんのねぇ。まぁ、気持ちはわかるけど」


「あぁ、ごめん。妖力介して感情まで伝わっちゃったわね。でも、あんたも随分ご立腹の様子じゃない」


「へへ、バレたか。んで、どうする?もう、おっぱじめようか?」


「私が合図するまでボタンは待ってな。私が正面から行って敵を惹きつける」


「はいな、じゃぁ切り込み役よろしくお願いしま〜す」


 さて、楽しい夜の始まりだ。悪党どもに、狩られる恐怖を思い出させてやる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ