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6.改造された

違和感のある特性を持つ魔物。

俺たちはそれに警戒しながら先へと急いだのだが、変なことはまだまだ続く。


「勇者様。あまりにもこの周辺、生命体がおかしな力を持っているのじゃ」


「そうだな。明らかにこの力、外から付け加えられたものだろう。一体誰のものだ?」


倒したかと思えば直後に自爆をするサル型の魔物、反動でしばらく動けなくなる代わりに衝突するだけで木をへし折りなぎ倒すことができるモモンガ型の魔物。あまりにも成長し、自ら動くこともできなくなるほど巨大な毛を持つ羊型の魔物。

それ以外にも様々な魔物がいるのだが、どれも生命体としては明らかな欠陥を抱えていた。その力を持っていて、どうして今まで生きて来れたのかすら不思議に思うほどだ。

ほとんどが命を代償とするような力を持っていて、とてもではないが子孫を残し数を増やすことは不可能に近いように感じられる。


だがそれでも、魔物はいるのだ。それも、かなり大量に。

何をしたのかは分からないが何者かが魔物を活性化させて力を無理矢理引き出したか植え付けかしたんだとは思うんだが、それにしても不自然だ。


「このペースで命を投げ売っているところを見るに、全ての魔物が命を散らしてしまう日もそう遠くないとすら思えてしまうんだが。アンミはどう見る?」


「同感じゃの。これはまるで…………儂らが来ることを知っていて仕掛けたかのようにすら思えてしまうわい」


何者かが俺たちの存在を感じ取り、排除のためにこんなことをしてきた可能性。それが考えられるわけだ。かなりの量の魔物が変化させられているわけだし、知っていて準備をしておかなければこんなことはできないだろう。

そう。できないはずなのだ。

だが、一点気にあることがあるとすれば、


「どういうことだ?こんなにすぐにここまでの数を操ることができるものか?」


「とてもそれは考えにくいのぅ。だが、決まったのは昨日の今日じゃぞ?何かがおかしいのぅ」


「だよな。もしかして何かに思考を誘導されている、なんて線も考えていた方が良いか?」


あまりにも改造された魔物の数が多い。それはあまりにも、計画していたにしては多すぎたのだ。

それこそ、バジリスクを倒した後に妖精の泉へ行くことは決めた。そして、その泉へのルートを賢者が伝えたのなんて今日だぞ?それを事前に知っておいて準備するなんて不可能だ。

なら考えるべきは、俺たちが決めたのではなくここになるように調整されていた可能性。


なのだが、


「それ、どうすればいいんだ?」


「思考を操られているとなると何も対策を思いつかんのぅ。それこそ、勇者様が防具を手に入れたらそれを無効化できる可能性を期待するとかしかないかのぅ?」


「なんという望み薄なことにかけてるんだ。もうちょっと何かないのか?…………あったとしてもその考えを消される可能性が高いんだが」


「…………複雑すぎて考えがこんがらがる」


思考誘導や支配の場合、対抗手段と言うものはなかなか思いつかない。

事前に備えておけばまだ何とかなるのかもしれないが、もうすでに陥っている場合は手遅れな気がするのだ。だって、俺たちはその解決策を思いつかないように思考を誘導されている可能性が高いし。


【悲報】俺たち、詰んでる



「い、いや。ちょっと待て。まだ確定したわけではないんだから他の可能性を考えてみてもいいだろ。もし今悲観的になって考えたことが的外れだった場合貴重な時間を失うことになるからな」


「そうですね。一度考えるのは落ち着いた場所に移動してからでもいいかもしれません。下手にここで長考すると強い魔物に急襲される恐れもありますから」


悲観的になってもう何も打つ手がないと結論付けそうになったが、一旦そこはストップ。もしそうでなかった場合はかなりバカなことをしていたことになるし、あきらめては駄目だろう。

それこそ、思考誘導だった場合でもそれが完璧なものかどうかは分からないだから悲観することもないだろう。まだあきらめるには早すぎる!


「これから経由する村だってこんな魔物に襲われていたら大変だろうし、早く行った方が良いだろう!一般人にこの魔者達はあまりにも危険すぎる」


「あっ、ですね」

「それは別にどうでもいいが…………勇者様が行くというのならついて行くまで」


あぁ。露骨にテンション下がりやがった。滅茶苦茶行きたくなさそう。

お前ら、これから行く場所は寝泊まりする場所になるんだぞ!そこが壊滅してたら大変だろうが!せめて不幸を祈るにしても、これから行く場所じゃなくて今まで行ったもう行かない場所の不幸を祈れよ!

…………いや、まず不幸を祈るのは駄目だよな。俺も思わず変なことを考えてしまった。周囲に人間嫌いが集まりすぎて毒されてしまったな。危ない危ない。


とりあえず、先を急いだ方が良いことは間違いない。

俺以外はあまり積極的に進もうという気概が見えないし、俺が先導しないといけなさそうだ。


「魔物の襲撃で村が滅ぶなんて、見過ごしてたまるものか!」


魔物を切り裂き、突然起きる爆発や倒れてくる木を回避し、俺たちは無理矢理村へと進んでいく。

さすがにその猛攻をすべて回避することはかなわず途中何度か攻撃を受けることはあったが、かすり傷程度で済ませることができたしアクアのお陰でその回復も一瞬。

時には倒れてきた木によって完全に囲まれて逃げられなくなった時も、


「ふんっ!この程度で勇者様の進む道を遮れるものか!!」


クーロリードがそれらをすべて粉砕して道を作ってくれる。抜け出した直後その気に囲まれた場所で大爆発なんかも起きたりして、俺も背中に冷たい汗が流れた。

まさかここまで凶悪なコンボを魔物が行なってくるとは。


「今の動き、明らかに魔物同士が連携していたよな?」


「そう見えたのぅ。儂にも何が起きているのかは分かりませんが、早くここから抜け出した方がよさそうじゃ」


「そうだよなぁ…………そう思わせることが相手の目的でなければ、だが」


なんて話を賢者のアンミとはしたもののの、1番の猛攻はそこだった。

それ以降も怒涛の攻撃は続いたのだが、結局危機感を覚えるほどのものはなし。

なんとなく不安を感じながらも俺たちは今日の目的地である村へと到着する。そしてそこで、


「あ、あぁぁ………」

「こ、ろ…………し」

「イダイイダイイダイイダイイダイイダイイイイイィィィィ!!!」


「…………なんだ?」

「おぞましいですね。人間の業、とでもいうべきでしょうか」


俺たちは村人を発見した。いや、正確には、村人だったと思われるものを。

そこに居たのは人の体がいくつもあるまり結合されたようにも見える、生物と呼んでいいのかすら怪しいおぞましい物。数人の顔らしきものが肉の中から少しだけ見えて、助けを呼ぶ声や痛みを叫ぶ声、うめく声と言ったどれも幸せではないことが確かな声を発していた。


どう考えても、魔物に使われたもの以上に凶悪な何かが行なわれていたのだろうことが分かる。

そしてそれと共に、


「アクア。あれ、治せるか?」


「治せはしますよ。ただ、あの生き物として、にはなりますけど」


「…………そうか、そうだよな」


俺たちが、とどめを刺してやらないといけないことも。

アクアの回復能力では癒すことしかできず、それぞれを分離してから治すという新しい工程をはさんだ作業は不可能。

もしかすると1人の人間の部位だけを上手く切り取ってそこから再生すれば数人は助けられるのかもしれないが、


「融合が激しすぎて、どこからが同じ人間なのかが分からない」


「あまりにもむごい。誰が一体こんなことを…………」


俺はここで、人に剣を向けるか否かという選択を迫られた。

今俺は、最悪だと頭を抱えた仲間たちと同じ行動をしなければならないという未来を選ぶかどうかという瀬戸際に立たされているんだ。

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