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3.薬と幻覚だって!?

「あの魔物はよく西の森の方にでうろついているようです。確か、住処がそこにあったような。近くにいる森の動物などが逃げ出すため、森の様子を観察していれば大まかな位置は特定できるかと」


「なるほど。ならばまずは、そちらの方から探ってみることにするか。情報提供感謝する」


「いえいえ。少しでも勇者様のお役に立てたのであれば何よりでございます」


結局バジリスクの位置を特定する方法は思いつかなかったため(ないわけではないが全員外道な方法しか提案しなかった)村の人間から話を聞いてヒントをもらうことにした。意外と聞いてみれば有益な情報が出てきて、かなり助かったな。


こうして話も聞けて必要な情報は集まったし、俺たちはそれを基に早速当別へと向かう。

意外とこの村の人間も怯えて閉じ籠るだけではなく情報収集を怠らずに行っていたんだなと感心していたんだが、


「何が勇者様のお役に立てたのなら、じゃ。結局自分たちが助けてもらうためだというのに、何を自分の成果のように言ってあるのかのぅ」

「あのような情報、最初から出しておけばいい物を。聞かないと言わないなんて、本当に助けてもらう気があるのでしょうか?本当に愚かで仕方がありませんね」

「キヒッ。とりあえず石化してる人間がいたら全部破壊しておくとするか。あいつらに家族が戻ってくるなんて希望を与えてはやりたくないよなぁ」

「破壊なら任せて置け。俺が一撃で粉砕してやる」


うぅん。本当にひどい。こいつらはなんでこんなうがった見方しかできないんだか。

と、思っていたのだが、今回は1人静かな奴がいる。


「シアニ。何かあったのか?」


「…………観察」


「ああ。敵の発見のためには森をよく見てた方が良いって話だったな。わざわざそんなに集中してやってくれてたのか」


弓使いのシアニ。

普段は一言程度ではあるものの暴言を吐くのだが、バジリスク発見の為に相当気を張っているようだ。観察は大事だという話だったし、ありがたい事ではあるな。

それに、このパーティーの中で一番遠距離に攻撃できるのがシアニだ。1番最初に攻撃を仕掛けるのもシアニになるし、そんな人間が発見に集中してくれているというのはありがたいことだな。

本当に、人間嫌いと裏切りそうでさえなければ最高と言っていいほどの仲間なんだけどなぁ。


「…………いた」


「おっ。本当か?距離は?」


「そこの大きめの木を縦にして40本程度」


「結構あるな。なら、先制攻撃は問題なさそうか?」


「やれます」


気を張ってくれていただけあって、発見も1番早かった。

睡眠薬を塗った矢を弓につがえたシアニは、数秒狙いを付けた後にその矢を放った。弧を描いて行くその矢は木々の間を通り抜けて、


「ガアアアアァァァァ!!!!?????」


とどろく咆哮。どうやら命中したらしい。

その後激しくあたりが揺れ始めバジリスクがこちらを探しに来ていることが分かるが、構わずシアニは矢を放って行く。さすがにこの距離があるからバジリスクも正確にこちらの位置を把握できていないだろうし、補足される前に当てられるだけ当ててしまおうという判断は間違いではないだろう。

ただ、


「…………しぶとい」


「みたいだな。まだまだ元気に走り回っているし、もう少し眠るまでには時間がかるか」


それだけの数を打ち込んだにもかかわらず未だにバジリスクは眠る気配がない。特に睡眠への耐性が強いということもないと思うんだが、ここまで効果が出るまでの時間がかかることを考えると状態異常全般に高い耐性を持っている個体という可能性もありそうだ。


あまり時間をかけ過ぎると、こちらの位置を把握されてしまい石化の脅威にさらされかねない。

そんな状況の中、


「であれば、儂の出番と言うわけじゃな」


まだまだ俺たちは慌てない。

ここで活躍するのはアンミだ。賢者であるアンミは魔法による攻撃を得意とするのだが、1番の得意技はなんと攻撃ではなく、


「さまよえ『ラビリンス』」


アンミの魔法の詠唱の直後、周囲から様々な音が発生し始める。それはだんだんと広がっていき、俺たちの周りだけでなくかなり遠い場所からも聞こえてくるような気がした。

更にそれだけではなくどこからかきらめく小さな蝶まで現れ周辺を舞い始める。


だが、蝶に触れようとしても指はそれを通り抜けてしまう。

つまりそれらは、幻覚。

アンミが得意とする魔法は幻覚を用いたもので、敵のかく乱なども得意分野としているんだ。今回の場合は音やきらめく蝶という目につくものを生み出すことによる、バジリスクの混乱が目的だ。

実際、いろんな邪魔な要素が入るわけだから俺たちの位置の特定は難しくなっているだろうな。特にバジリスクのような知能が一定以下の魔物だとどうしても音には敏感に反応するだろうし。

矢だけに集中してそれの出所を追うってことは難しいだろう。アンミの魔法がかなり今回は刺さったわけだ。

こうなれば後は俺たち前衛職は何もしなくても、


「…………寝た」


「ナイス!さすがにこれだけやってれば効くのか」


シアニがバジリスクの眠りを告げた。どうやらうまく薬の効果が出てくれたらしい。結構時間はかかったが、これでやっと仕留める目処がついたってわけだ。

俺たちは正確に相手の位置を把握できているシアニの案内の元素早く接近し、バジリスクが寝ている場所へとたどり着く。


ここからはやっと俺の仕事となって、


「その首、もらった!!」


バジリスクの首へと剣を振り下ろす。

感触としてはかなり固いが、それでも俺の剣のお陰ですんなりその首を切り落とすことには成功。これで、バジリスク討伐成功だ。

案外終わってみればあっけなかったな。


ただ、そうして倒した後も一応やることは残っていて、


「まずはこのへんで石化してる人間を村まで運ぶか?魔物に破壊されても困るし」


「それは必要ないのぅ。もう儂らがすべて壊したのじゃ」


「…………なら、最初から壊れてたってことにして村の連中にまだ大丈夫そうな人の捜索協力をお願いするしかないか」


1番やらなきゃいけないことはできなくなっていた。

やるとは言っていたけどさすがに冗談だと思ってたから油断してたぁぁぁ!!!!こいつら本当にやったのかよ!この犯罪者共が!!

裏切りそうだとは思っていたけど、まさか本当に人類を裏切るとは。さすがにこいつらに裏切られると俺もやっていける気がしないし、終わりだな。


なんて思っていたんだが、


「しかし、勇者様の剣はさすがですね。こうも簡単にバジリスクの皮膚を切り裂いて見せるとは」

「俺でもこの首を一撃で落とすことは無理だな。さすがは勇者様」

「ケヒッ!勇者様。お疲れさまだ。けがはないか?」


なんで誰も俺に襲い掛かってこない!?

お前たち、人類裏切っただろうが!1番の敵は俺だろ!?なんで今も仲間みたいな顔をしているんだ!?俺の事を持ち上げてきていつも通りみたいな雰囲気を出しているし、怖いんだが!?


いや、こうして普段通りのように見せることで俺を油断させるつもりなのかもしれない。

俺の思考をぐちゃぐちゃにすることで少しでも処分しやすくするつもりだな!?

…………ハッ!?も、もしかして、バジリスクに使った薬を俺にも使っていてそれの効果が出ることを待っていたりするのか!?俺と直接戦うより、薬の効果を待った方が楽だし!

くっ!俺もここまでか!人類は、終わってしまいそうだな…………。






「おお!勇者様!ありがとうございます!」

「皆、家族を探しに行くぞ!」

「勇者様!本当にありがとうございます!」


数十分後。

俺たちは村まで戻ってきたのだが結局何もなかった。薬が回ってしまうことも、襲い掛かられることもなかったんだ。


さては、村の人間を人質に取ってから俺と戦うつもりか?

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