22.研究資料きちゃ~
絡んできたよく分からん輩を眠らせて、その後を衛兵たちに任せた後にお偉いさん方へと今回の件の報告を。
それからしばらくすると睡眠薬の効果が切れたみたいで襲ってきた奴の起床報告が来て、それから続々と情報が集まってくる。毎回情報が手に入るたびにわざわざ俺たちのところへ来る衛兵が大変そうだったな。
どうでもいいが、それのお陰であまり大きな声で愚痴も言えないしパーティーメンバーは不満そうにしてた。これはこの後の愚痴が長くなりそうな予感だ。
とりあえずそれは良いとして、
「情報をまとめると、まずあいつが今回の寄生虫騒動の原因ってことで間違いないってことだよな」
「そうじゃな。そういう話じゃった。そして、寄生虫のことが発覚してしまったため、調査が進めば自分が原因だと知られてしまう恐れがあるとして未来に不安を感じて、その不安を恨みへと変えて勇者様へ勘違いも甚だしい復讐をしにやってきたというわけじゃな」
「しかも、寄生虫が問題となった原因がただの飼っていた寄生虫の管理不足ですからね。目を離している間に逃げられてしまったなど、救いようがありません。その脱走の後も誰かに相談することすらせず黙っていたということですし、かなり罪深いですね。人間として生まれただけで罪だというのに、そこからどれだけ罪を重ねれば気が済むことなのか」
「お、おう。そうか」
聖女のアクアのセリフに関しては何と返せばいいのか分からないが、とりあえずそういうことみたいだ。あいつがペットとして飼っていた(まずここがものすごく不思議なんだが)寄生虫が目を離してしまった好きに脱走し、放っておいたらとんでもない事態になってしあった。そして俺たちがその寄生虫の存在を伝えたことで琴が明るに出てしあったため、調査をされれば自分がやらかしたこともバレてしまうと恐怖。結果、その恐怖しなければいけない原因は寄生虫を発見した俺たちなんだと考えて復習を場当たり的に行おうとしてしまった、と言うことらしい。
何と言うか、かなりあいつはおろかだっていう話だったな。
「まさかそんな理由で人間から武器を向けられることになるなんてなぁ」
「そうだな。だが、あんな寄生虫を飼育する人間を一般人と呼んでもいいものか」
「…………帝国の研究員?」
「ああ。言われてみればその可能性はあるか。明らかに普通の寄生虫よりも強化されていそうだったし、あいつが研究やら実験やらして強化した可能性はあるな」
そしてそんな実験を行なえるほどの知識や技術を持っているのは、国の所属でもなければあり得ない。
と案ると、帝国の研究員だったなんて言う可能性も十分考えられるわけだ。あの、とんでもない改造された魔物達を生み出した帝国の、な。
「帝国の研究員のイメージに合致すると言えば合致するような気もする。特に、あの覚悟の決まり様とかな」
「ある意味研究者らしいと言えばらしかったぜ。研究のためなら他をかなり犠牲にできるところとかなぁ。キヒヒッ!!」
研究者のイメージがかなり悪い気がするが、あの実験結果を知るると何とも言えなくなってしまう。国家所属の研究者がやることが人間の改造だからな。
ただその印象の悪さはいったんおいておけば、意外と研究者であることは悪くないことのように思える。もし帝国の研究者であのモンスターの改造に関わっているのであれば、スライムの研究データだって所持している可能性があるんだから。
あれを人間側が使えるようになれば、かなり魔族に対抗しやすくなるはずだ。
「資料とか残ってたらこっちにも回してもらえるようにするか。国に提出するなりして実用レベルまで技術を高めてもらいたい」
ということでさらなる仕事をお願いして申し訳なかったんだが伝令役の衛兵に頼んで資料を渡してもらえるようお願いしておいた。本当に帝国の研究員であの研究に関わっていたかどうかはわからないが、それでも寄生虫のデータでも十分強力であることは間違いないから貰っておいて損はないはず。
どうしても人類が劣勢になって打つ手がなくなってしまったなんて言う時にはあの寄生虫を解き放って進攻してきた魔族に植え付けるのも悪くないかもしれない。
本当の本当に奥の手でしか使えないけどな。
なんて思っていた翌日。
俺からのリクエストだからなのか意外とすぐに対応をしてくれて、
「こんなに資料を作ってもらって悪いな、これ、全部原本ではなく写しだろ?…………だが、頑張ってもらっただけあってかなりためになりそうだ」
「勇者様にそういっていただけたのであれば製作者も喜ぶはずです!!」
かなりの量の書類の束が届けられた。軽く目を通してみただけでもかなりの種類の魔物やら動物やらそれ以外の分野やらの研究結果がかかれており、相当あの襲てきた奴も研究量をこなしていたことが分かる。量だけ後そこまで判断できるかは分からないが、もしかしたら研究者としては一流だったのかもしれないな。ただ、人間性に問題があったというだけで。
礼を言った後に仲間たちとじっくり資料を読み込んでみるといろいろ新しい発見もあって、
「何だこの植物。触れただけで魔族でも気絶するくらいの量の魔力を吸上げるみたいだぞ」
「こちらも不思議ですね。どうして格が弱点のはずのスライムから完全に核をなくすことに成功しているんでしょう?」
「ちょっと待て。それ、あの巨大化したスライムに使われたら世界が滅ぶぞ?人間も魔族も弱点なしのスライムには無力だろ」
「それで言えば、こっちも相当じゃぞ。メスとオスの両方の役割を兼ね備えたゴブリンの開発にすでに成功しておるようじゃ。これは、ゴブリンの無尽蔵の増加につながりかねんのぅ」
「おいおい。無限にデカくなるスライムと無限に増えるゴブリンとかどっちも最悪すぎるだろ。魔族とか人類とか言ってられないじゃないか」
数々の研究に気が遠くなる。こんな研究、今まで見たことも聞いたこともないぞ?何を考えたらそれをやろうと思うんだろうな?ある程度の段階まで成功してしまっているし、これが完全に研究の最終段階まで進んでいたのなら世界は終わっていた可能性すらあるぞ。研究者、怖~。
しかし、この研究のまとめ方を考えると、それなりの研究を実際に行なっていることが分かる。帝国に所属していた時などにやっていたものなら問題ないんだが、寄生虫と同じようにここで研究しているものがあったりしないよな?ちょっと怖いんだが。
なんて思ったことがフラグと言うものになってしまったのか、
「勇者様!お疲れのところ申し訳ないのですが、ご助力をお願いしたく!!」
「ん?何があったんだ?」
「霊の不届きものの持つ土地を調査していたのですが、かなりの改造を施された魔物などが発見されまして。管理者がいなくなってしまったためか暴れ始めてしまったのです!現在は我々衛兵が対応しておりますがいつまで持つかは正直申しまして………」
「なるほどな。分かった。すぐに準備をする。悪いが案内をしてほしいから少し待っていてくれ」
魔物達が暴れ出してしまったようだ。しかも、研究をされていたことから考えると外ではなく、居住地のあたりでそれは発生しているんだろう。急いで対応しないと周辺の住民にも被害が出かねないな。
「面倒なことをしてくれたもんだ…………とりあえず、この資料も持って行っておくか。もしかしたらそれの中の情報で解決策が見つかるかもしれない」




