20.飛び出せ寄生虫
寄生型の魔物に多くの魔物が支配されているのではないかと言う予想を立てた俺たち。寄生虫型などいろいろと寄生型と言っても考えられたりはするんだが、基本的に最近の寄生型のトレンドは寄生虫が多いから寄生虫だろうという風に考えて動くことにするぞ。
寄生虫の場合体を持つ魔物ではなく中身の寄生虫さえ潰すことができればだいたい解決するから、できるのであればそれだけを狙えばいい。例えば魔力感知のうまい奴なんかがいれば寄生虫のいるところだけ魔力に変な部分があるからそういうところを見つけてもらってそこに攻撃をすればいい。かなり内部の深いところにいることが多いからそれなりに強い攻撃は必要だが、それでも必ず体を使われていた魔物まで命を失うわけではないからマシな方だろう。
ただ、残念ながらここにそんな人間はいない。
賢者のアンミも魔法には長けているが、だからと言って魔力感知なんて言うのはお門違いだ。基本的に頭脳担当であるため、そういう部分の力が特段強いというわけではないんだ。
「となると、1番確実なのは燃やしてしまうことか」
「そうなるな。全身燃えれば逃げ道もなくせるし、高確率で始末できるだろう。とはいえ、火は管理が大変なんだよなぁ」
「キヒッ!油と火薬なら俺が持ってるぜぇ」
「炎の管理は魔法で多少はできるんじゃが」
アンミが炎の管理はしてくれると言ってくれるものの、俺としてはそれで解決できるとも思えない。炎の管理なんてこれもまた得意分野ではないだろうし、ここで魔力を使い過ぎればその後の戦闘での魔法の使用に支障が出かねない。
悩ましい話だな。
と思っていたところ、さらに提案が来て、
「火薬があるなら、それをあの中央に投げ込んでしまえばどうじゃ?上位の個体を爆発で排除さえしてしまえればその後はそこまで時間もかからんし、火の管理で魔力を使い過ぎても問題ないじゃろう?」
「なるほど?確かに、上位個体さえいなくなればその後の戦闘でもアンミに必ず動いてもらう必要もなくなるわけで…………それなら悪くないか」
強い敵さえいなくなれば、全てを倒しきるのにもそこまで時間はかからないはずだし、もしある程度魔力を使い過ぎても何ら問題はない。アンミの提案は非常に魅力的に聞こえた。
特に気になる点もないからそれを俺も選ばせてもらい、
「キヒヒッ!いくぜいくぜいくぜぇぇ!!!3,2,1!爆発だぁぁ!!!」
斥候のチオシアが、持ってきていた火薬で作った爆弾を投げ込み上位種たちの周辺で爆発させる。
更にあたりに油をまき散らしてそこに火をつけて逃げ道をふさぎ、ジワジワと炎で追い込んでいく。
ただそこまでやっても油断なんてできない。
爆発は下がそれが全ての上位種に当たったのかどうかも話わからないし、
「シアニ、どうだ?どれくらい上位種は倒せた?」
「6割くらい。2割は大けが、1割は軽傷。残りは無傷」
「1割は無傷か…………それって、そんなに上位種がいるわけでもないし1体だけって話で良いよな?そういうことならそこまで厳しい話でもないか」
割合だけで聞かされるとまだ残っているように感じてしまうが、そもそも上位種の数はそこまで多いわけではない。住民から聞いていなかった上位種もいたから10体は超えていたが、それでも20体は超えていなかったんだ。となれば無傷だとされる1割なんて、1体か2体と言ったところだろう。軽傷を合わせたとしても4体に届くかどうかと言ったところだろうし、十分対応可能だろう。上位長けてと言っても、そこまで突出した力を持っているわけでもないからな。
炎を突破して外に出てきてもすぐに倒せるだろうし、そもそもその前に、
「1,2,3…………4体目も撃破。頭部までこんがり焼けてる」
「ナイスだシアニ。これで上位種を使われることはもうないか」
弓使いのシアニが残っている上位種も射抜いてくれる。しかもそこで使う矢は油をしみこませてありさらに油の入った筒のようなものも括り付けてあるから、燃えるのも一瞬。魔物の頭部に突き刺さった後、一気にその頭部を焼き尽くしてしまえるわけだな。
こうしてかなり数も減らせたわけだし、ある程度気を抜いてもいいだろう。シアニが倒してくれたから、もう目に見えて強い個体がいるわけではないしな。
なんて思ったんだが、
「…………おい。あのゴブリン、動いてないか?」
「っ!?本当ですね。あの傷から考えてすでに息はなさそうですが…………まだこの状態でも動かせるほどの力を寄生虫が持っているとでもいうんですか?」
炎が全身を包み、もう明らかに生物として生きているはずがない状態のゴブリン。上位種ですらない通常個体であるそのゴブリンの1体が、まるでアンデッドかと思うような動きをしてゆっくりとこちらに近づいてきていた。
寄生虫なんて通常は魔物が生きている間しか操ることができないはずだというのに、それでも確実に息はないだろう魔物を動かすことができている。相当今回の寄生虫は厄介な性能をしていることが理解できた。
「とりあえず念入りにもっとやってかないといけないことは分かったが、まずはあれの処理からやるか。寄生虫まで燃やし尽くす前にこっちまで来てしまいそうだ」
「…………なら、私が」
対処に当たらなければならないかと考えて俺が前に出るんだが、それよりも先にシアニが動いた。ちょうど上位種を狙う必要がなくなったからかこちらに対応する余裕があると判断したようで、近づこうとするその操られたゴブリンの亡骸に向けて矢を放つ。直後、その頭部は矢の威力が強すぎたためかはじけ飛んだ。
さすがに頭を完全に貫かれてしまえば全身を寄生虫が上手く動かすことはできなくなるはずであるため、その一撃は完璧なものだと言えるだろう。
「これで解け、」
これで解決だな。そう言って、ついでにシアニへ感謝の言葉でも告げようかと考えたところで猛烈に嫌な予感がした。
俺の感が激しく警鐘を鳴らしているんだ。だからこそその警戒の意味を頭で考えるよりも先に体が動いて、
「…………危なかったな」
「…………勇者様。ありがとうございます。助かりました」
俺の剣が何もいない場所へとのびて、直後それに飛んでくる何かが当たった。
その飛んできたものをよく見ると、それは無視。恐らく今回の問題の原因だろう寄生虫らしき存在が俺の剣で綺麗に真っ二つになって地面に落ちていた。
勘に従ってよかったと安どの声を出せば、その寄生虫が邪魔されずに飛んできていれば接触していただろうシアニから礼を言われる。
さすがにシアニとしても、今のものは予想外だっただろうな。
「気にするな。俺も勘に従っただけで何が起こるかは分からなかった。今回のはたまたまだ…………しかし、ここまで跳べるだけの力を寄生虫が持っているなんて信じられないな」
「今の飛距離と速度、どう考えてもこの虫の体だけで出せる者とは思えない。今まで操っていた体の方も何か使われているんじゃないか?」
飛んできたのは、シアニが頭を吹き飛ばしたばかりのゴブリン。まだ俺たち近接職の攻撃は当たらないような距離感だったのにもかかわらずそこから俺たちに届きそうなほどの飛距離を見せてきたんだから、クーロリードが分析するようにかなり推進力を得ていることが分かる。それも、おそらく自分の体を使うだけでなく今まで操っていたゴブリンの体も使って、だろう。
どういう使い方をしたのかと気になって頭部の吹き飛んだゴブリンの亡骸の方を調べてみれば、
「ここ、少し爆発したような飛び散り方をしてないか?矢で吹き飛んだことによるものじゃないよな」
「ふむ。となると、あの寄生虫は寄生していた体の一部を爆発させる力を持つというわけか」
恐ろしい。あまりにも恐ろしすぎる能力だ。
もしこれが自由に使える脳力なのだとしたら、寄生虫のいる魔物を倒そうとしたときに急に魔物の一部が爆発して寄生虫がこちらに跳んでくるなんて言うことも起きかねないわけだ。それをすべて避けきるというのは至難の業だろう。
「正面から行かなくて正解だったな」
「全くだ。ただ、そういう手を使えるというのなら上位種があそこまで寄生されてしまったことにも納得できる」
「ああ。確かにな。あいつらも強さとしてはほどほどだし、避けられなかったわけか」




