14.ついに裏切られた!!
ドオオオオオオオオォォォォォ!!!!!!!
「み、耳が」
耳を抑えて全員うずくまる。目の前がちかちかするほどの音の大きさだったな。耳はキンキンするし目の前はチカチカするし当然平衡感覚を保つことも難しい。
あまりにも凶悪な罠だった。味方にすらここまでの影響を与えるとはとてつもないな。
ただ、それだけのことをした結果を出せてはいるようで、
「ヒヒッ!見ろ!スライムの姿はなくなったぞ」
「うわっ。本当じゃねぇか………跡形もなく爆散させたとかそういうことじゃないよな?」
「ヒヒッ!残念ながらそうはできなかったなぁ。体の何割かは消し飛ばせただろうが、仕留め切れてはいねぇ。単純に、爆風で飛ばされたってだけだろうなぁ」
「…………視界の端に飛んでいくスライムが見えた。間違いないと思う」
正直チオシアの言葉だけだったら信用しきれなかったが、弓使いのシアニも証言してくれたためその言葉に嘘はないだろうと思えた。まさか、爆発で拭き飛ばすとは思わなかったなぁ。
さすがに今の爆発でなら数割は体も吹き飛んでいるだろうし、元の状態に戻るにも時間がかかるだろう。解決したのかは分からないが、問題の先送りにはなっただろうな。痛い目を見せれた、と言うことで良いだろう。
俺はまだ少し足りないのではないかと思ってしまうが、こうした結果は村人たちにも理解できるようす。
爆発による影響からどうにか回復すると、
「う、うおおおぉぉぉぉ!!!!」
「スライムが消し飛んだぞ!!」
「やはり爆発!爆発はすべてを解決するんだ!」
「すげぇぇ!!!!さすが勇者様だ!」
いや、やったのは俺じゃなくてチオシアなんだが?
とは思うものの、こうして喜ばれるのは仲間のしてくれたこととはいえ嬉しい。
爆発した周囲はひどいことになってしまっているように見えるが、誰もそんなことを気にした様子はないし俺も気にしなくていいだろう。今はただ俺も、この結果を喜んでおくとしよう。
「っ!勇者様!」
「ん?…………ぐあっ!?」
俺が村人たちと喜びを共有して盛り上がろうかなんて考えたところで、突然少し切羽詰まったような声がかかる。一体何事かとその声に反応して足を止めたところ、直後に鋭い痛みが走った。
急いでその痛みの原因の方向へと腕を伸ばしてその体へと一撃を入れつつ反動を使って距離を取る。
すぐにそこへ聖女のアクアが駆け寄ってきて回復をしてくれるわけだが、俺はそれに感謝するよりも困惑が先に来た。
なぜなら、そこで攻撃を仕掛けてきたのが、
「なんだ?なぜ突然俺を?この村を守ったつもりだったんだが」
「うるさい!スライムが失敗したなら俺がやるしかないんだ!」
なんとこの村の村人らしきものだったんだ。
ビックリだよな。
だって俺、絶対にパーティーメンバーの誰かだと思ってたんだぞ!?ついに裏切られたか~、とか思ってたのに全然関係なかったからな!?
なんで先にパーティーメンバーじゃなくて村人の方が裏切ってくるんだよ。おかしいだろうが。どう考えても一般人よりもこっちの方が裏切りそうなのに。
「お、お前!何をしているんだ!勇者様に武器を向けてタダで済むと思っているのか!」
「うるさい!村長に何が分かる!自分だけはあの時、逃げていただけの癖に!!」
「っ!?お、お前!」
しかも、その攻撃してきた村人は村長とも何か因縁があるっぽい。好き勝手矛先を向けすぎて誰に何をしたいのかがよく分からないな。ただ暴れたいだけのようにすら思えてしまうんだが。
ただ、暴れたいだけのやつがわざわざ勇者である俺にまで武器を向けてくる理由はよく分からない。確かに傷はつけられたが、だからと言って倒しきることは難しいなんて分かってるはずなんだから。
ちなみに、どうでもいい事ではあるんだが村長がこの村人に嫌われているのは帝国の実験の話を聞く時に愚痴っていた個人的な話が関係しているんだと思う。俺は完全に要らない話だと思って省略してしまったが、内容としては実験体が脱走した時などに出てくる兵士のお遊びに村人たちが付き合わされていたとかいうもの。もちろん、お遊びと言うのは村人にとって全く以て楽しくはない物だったらしいが。
おそらくそのお遊び関連で村長は何かやったんだろうなぁ。
ただ、そうした人間ドラマがいろいろとあることは理解してるんだが、俺もそれを聞いているほど暇じゃない。悪いがこっちも勇者なんだ。救わなきゃいけない数が多すぎて、1人1人の不満をじっくり聞いている時間はないんだよ。
「村長。そこの人間は命を取ってしまっても構わないか?」
「い、命をですか!?」
「こちらとしても、命を狙われてしまうと絶対的な安全が確保されない限り安心できなくてな。多少の罰を与えるなんてことだけじゃあもう解決できないんだよ」
俺は人類を救うと決めている。だからこそ、前回の村ではその救うつもりだったものに剣を向けなければならなくなって躊躇したんだ。
だが、今目の前にいる相手に躊躇する気持ちは一切ない。なぜなら俺に対して攻撃を仕掛けてくる相手は、盗賊と同列に考えていいんだから。人類の敵を、俺は守るべき人間だとは思わない。
盗賊退治も勇者の仕事だと分かっているからなのか村長は止まらなさそうな俺を見て慌てる。
村人の方から恨まれているようだが、村長の側は処分したいとは考えていないみたいだな。もしかしたら聞かされた愚痴のような個人的な話はもっと本来複雑だったのかもしれないな。それこそ、命すら狙ってきそうな相手であっても逆に命を奪うことには躊躇してしまうくらいには。
ただ俺からするとそんなことは正直関係ない。
「村長。悪いが覚悟を決めてくれ。俺も、ここで終わるわけにはいかないんだ」
「し、しかし………」
俺に再度説明されてもまだ躊躇する様子を見せている村長。
だがこっちだって、かなり焦ってるんだ!早く片づけないとマズいって気持ちがあるんだよ!ここで俺の事を非道だと言って村の人間が一丸となって襲ってくるならまだいい。それならばどうにかできる可能性はある。
だけどな?ここで一緒になってパーティーメンバーも裏切るなんてことになったら本当にマズいんだよ!!俺が1番恐れているのはそこなんだよ!さっきアクアが回復はしてくれたが、どこで俺をここで始末した方が良いなんて言う結論に達するか分からん!
この俺の全力を持って、村人にパーティーメンバーが同調する前に型をつけなければならないんだ!!
なんて俺が本気で思っているんだが、村人の方は追い詰められた様子はあるものの絶望した様子はない。
俺が本気で命を奪う選択肢を取ることは理解してると思うんだが、それでも俺を倒せると疑ってなさそうなんだよな。
そのため何かあるのかと警戒していると、
「駆け出しの勇者程度に、俺が倒せるもんか!俺に剣を届かせる前に、魔族がお前の命を奪うんだよぉ!!」
「何!?魔族が?」
「ああ、そうだ!ここには魔族が来ているんだ!お前たちに勝てるわけなんてない、強大な力を持った魔族がなぁ!!」
向こうが勝手に自信の出所を教えてくれるんだが、正直困った。
どうやら魔族がいるらしい。もちろん実験体が俺たちの到着に合わせて放出されたことから魔族が近くに潜んでいることは分かっていたしこの村に内通者がいるという可能性は考えていたが、それでもここまで明確に内通者であることを宣言しても問題ないほどの魔族がいたとは。
もしかすると、そんな魔族ならあのスライムなんて敵ではなかったのかもな。俺たちが魔族警戒のためにスライムを倒しきらなかったことは無駄な努力だった可能性があるぞ。
「なら、余計に早く動く必要があるか。魔族だけでなく一緒に攻撃してくる相手がいると面倒くさいよな…………村長、悪いが待っていられないようだ」
「ふんっ!偉そうに!お前に何かできるわけが………あ?」
村長の言葉を待たず、俺は駆けだす。いや、駆けだそうとした。
だが、すでに遅かったようだ。うちのパーティーの斥候が本領を発揮して、裏に回り込んでくれていたらしい。
しかも、
「とりあえず、勇者様と同じ部分に同じ深さの傷をプレゼントだ」
「い、痛い!痛いぞ!?なんで!?」
なんか俺につけた傷と全く同じものをつけてくれたようだ。つまり、復讐した、ってことか?
たぶん俺の復讐を勝手にやってくれたんだよな?全く嬉しくはないが感謝はしておくか。




