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13.罠にかけよう

万全の態勢で迎え撃てると思っていたら、まさかの展開だ。チオシアが作った罠がスライムに作動前に飲み込まれてしまったらしい。最初に使う予定だったものだから大事なやつだと思うんだが、それがなくなるのはかなり痛手なのではないだろうか。

ついでに、不安になってくる。めちゃくちゃ自信満々に痛い目を見せてやるとか言ったけど、痛い目を見るのは俺たちの方なんじゃないか?


「チオシア。何かやった方が良いことはあるか?」


「キヒヒッ!勇者様、心配すんな。まだまだ罠は残ってんだから」


「しかし、そうはいっても最初の罠が飲み込まれたってことは続く罠も万全に機能してくれるとは言い切れないぞ?」


「それでもかまわねぇよ。さすがに飲み込まれるのは予想外だが、完璧に機能しなくても効果は出せるように調整してある」


チオシアは自身があるみたいだが、俺は罠の構造とかを正確に把握できていないから不安だな。

ちなみに、飲み込まれてしまった最初の罠は糸に引っかかるとそれに合わせて刃物が飛んでいくというタイプのものだ。その引っ掛かる糸どころか飛んでいく刃物も一緒に飲み込まれてしまったものだからまったく意味をなさずに終わってしまったということだな。


では次はどうなるかと言うと、こちらは相手がスライムだということで急遽用意したもの。

あまり大きくはないんだが、地面に穴をいくつか開けてそこにスライムの体の一部が移動する際に入っていくようにしてある。

そして入ってきたところでやはり糸のようなものに引っ掛かってそれに合わせて罠が作動し、


「…………見た目からだとサッパリ効果を出せているのかが分からないな」


地中で作動する罠のため、効果が出ているのか出ていないのか把握することができなかった。

地味だなぁ。これ、製作者としてはどう評価するつもりなんだろうか。今後もし似た様な敵が出てきた時、同じ罠を作るつもりなのか気になるところだな。


ただ、なんとなくだが嫌がってそうに視えなくもない。

プルプル震えてるし。

…………震えてるのはいつもの事なんだけどな。


「キヒッ!効いているのか確かめたいなら、次の罠にご注目だ。あれをどうするかはかなり指標として大きいぞ」


急遽作った罠だったからそれなりに早く穴のゾーンは突破されてしまったが、チオシアによると次の罠は見た目から判断するのに持って来いのものらしい。

それが何かといえば、


「非常に強い酸だ。そんじょそこらのスライムの出す溶解液よりもよっぽど強力な奴だぜぇ」


酸だ。

地面にくぼみを作ってそこに溜めた酸だ。見た限りは特に泡が出ていたりもしないため特にそういう風にも見えないのだが、非常に強力な酸らしい。人間が触れたら下手をすると骨まで溶けていってしまうくらいには危険な物らしい。

もしかして、チオシアってそれを普段持ち歩いていたりするのか?もしこぼれたら、大けがでは済まないようなものを。さすがに、ここで調合したものだよな?

どちらにしろ怖い気がするが、それはいったん気にしないようにしよう。それより、そんな強力なものだとも知らずスライムは、酸が大量に配置されているゾーンに近づいて行くのだった。


うぅん。地味正直言って、かなり地味だ。

さっきから全く以て映えないんだよな。近くで見てる村の人間も微妙な顔をしているぞ。

地面に掘った穴の中で何かやったりとか酸を配置しておくだけとか、インパクトがなさすぎるんだよなぁ。もうちょっと印象に残る物を使ってくれた方が戦闘としては盛り上がるんだが。

今のところ、村の人間がこの光景に飽きてないのは賢者のアンミが派手な魔法を使ったり弓使いのシアニが矢の雨を降らせて頑張って絵面を派手にしてくれてるからだと思うぞ。

なんて思う俺の気持ちを知ってか知らずか、


「おっ、なんかスライムが嫌がってないか?」


「キヒヒッ!間違いねぇ!あの酸にはさすがに勝てないみてぇだ!…シアニ!矢にの酸の入った瓶を付けて置け。アンミは安全に避け終わった後の酸の水たまりを魔法で動かしてスライムにかけるようにするんだ!」


「「…………了解」」


酸が効果を示したように見え、少しだけ村の人間達が色めきだつ。それと共に、その効果が出る間にとチオシアは迅速な指示を。


ただ、なんとなくアンミとシアニは嫌そうなんだよなぁ。的確だと思うんだが、チオシアの指示に従うことがそんなに嫌なのか?見た目と言動はかなり怪しいが、悪い奴ではないんだけどな(人類に対する姿勢に目をつむれば)。

村人には気づかれないくらいの不満を表明するにとどめているとはいえ、もう少し素直に受け入れてくれてもいいと思うんだがなぁ。

ただ嫌がられはしたもののその分析と指示が的確であることに間違いはないみたいで、


「おおっ!かなり嫌がってそうだな」


「キヒヒッ!進めば進むだけくらわしてやるよぉ。苦しめ、もっと苦しめぇ」

「…………矢がやっと効果を出してきた」

「儂の魔力が持つかのぅ。さすがに消費が激しいんじゃが」


ものすごくスライムが嫌がってそうな雰囲気はある。明らかに先ほどまでと比べて進み方が慎重になってきているし、速度も緩やかになっているんだから。


ただそれはそれとして、こちらの消耗も激しい。特に、賢者のアンミは魔力の消費が激しいみたいだな。遠距離攻撃を繰り返し続けた影響でそれなりに消費していたのに、そこからさらに得意な魔法と言うわけではない液体の遠隔操作なんてものをさせられているんだからそれも仕方のない事だろう。

できる人間がアンミくらいしかいなかったから仕方のない事ではあるんだが、最初のスライムの気を引くための遠距離攻撃くらいアンミにそこまでやらせる必要はなかったんじゃないかと思えてしまう。

もちろん、チオシアも普段から指揮をしているわけではないからそこまで考えろというのも無理がある話だし、かなり最善に近い指示は出せているとは思うけどな。それにまだ、アンミに魔法を使わせた意味がないとは言い切れないわけだし。


なんてことを考えつつも、一応このまま続けて大丈夫なのかとチオシアに視線を向けてみる。

ただチオシアは特に気にした様子もなく相変わらずの正義側がするものではない笑みを浮かべたまま、


「クヒッ!酸で多少削れたし、次で完全に心は折れそうだなぁ。楽な相手だぜ」


「ん?そうなのか?」


「ヒヒッ!そうさ。もう次で決まる」


次の罠で終わると言ってのけた。

かなりの自信だな。酸で多少嫌がっていたし小さくなったようにも見えるが、それでもまだまだ巨大だし俺にはスライムの心が折れるビジョンが見えない。

そう考えていたんだが、


「ヒヒッ!来るぞ来るぞぉ~!」


チオシアが目を大きく開き、明らかに邪悪なものにしか見えな笑みを浮かべたところでドォンッ!という爆発音が響いた。

その音に俺は思わず体を震わせ驚いたんだが、それだけで終わらせる気はないようで、連鎖的にドドドッ!と爆発音とともに風圧が俺の方にまで届いてきて、


ドオオオオオオオオォォォォォ!!!!!!!

「み、耳が」

「キャハハハハハハッ!!!!爆発!爆発だぁぁぁぁぁぁ!!!!!全部吹き飛ばしちまえぇぇぇ!!!!!!!」

「ぬぅ!キンキンするのぅ」

「…………やるなら先に言え。ぶっころ」

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