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9.信仰対象はどうした

魔物の注意を引いて誘導することはそこまで難しい事ではなかった。

事前に誘導予定の場所の塀の補強なんかもやってたからかなりギリギリになってしまったが、それでも思考が単純だからなのかすぐにこっちに向かってきてくれてどうにかなったんだ。

ただあえて問題を言うとすれば、


「ちょっと来過ぎじゃないか!?」


「どれだけ実験をしていたんだ?これだけの数を実験体にして保管しておくなど、相当広い場所を確保しておかなければ難ししい気がするんだが」


魔物の数があまりにも多い。多すぎると言ってもいいほどだ。

基本的に魔物が集まる場所は決まっていたんだが、それでもまだそこまで来ていなかった魔物が前や横からやってくるんだ。四方八方から襲ってくる魔物をこの闇夜の中処分していき、息も絶え絶えになりながらやっとの思いで誘導場所へと移動していく。


ちなみにこうなることまでは予想していなかったものの、過酷なことになるなんて言うのは分かり切ったことだったため弓使いのシアニには安全な場所から支援だけしてもらっている。シアニなら狙いを外すこともないし、ある程度距離があっても矢は完璧に当てられるからな。

その支援のお陰もあって、横や前からの敵を躱しながらでも後ろから追ってくる魔物達に追いつかれず誘導することができるわけだ。


「アンミがいればもう少し楽になっただろうか」


「あの幻影があれば俺たちが出て来なくてもどうにかなった可能性はあるな!」


全く以て適任ではない仕事だ。一緒に来てくれている重戦士のクーロリードだってこうして逃げ回ったりすることには向いていないし、俺だって周囲を囲まれている状況で動くということには適していない。

なんでこうも適してない俺たちが働いているんだか。単純な思考のやつらには賢者のアンミの幻覚が確実に刺さるし、寝てなければもっと楽だったのになぁ。


「にしても、数が多すぎる!」


「潰しても潰しても次から次へと湧き出てきて…………面倒にもほどがあるぞ?今までどうやってこれらを実験室で保管してきたというんだ!」


色々と足りない部分はあるが、それでも今の精一杯をやろうと全力で俺たちは動き続ける。

敵を避け、切り裂き、押しつぶし、そして誘導して。命の危険はいつもほどではないが、それでもギリギリの状態が続いていた。

正直ミス1つ許されない状況と言ってもいいかもしれない。


あまりの差御湯量に俺たちが少し体力にも気を遣わなければいけなくなるのではないかなんて思い出したところで、


「勇者様、ご無事ですか!」


「…………ん?」

「どうやら新しく起きたみたいだな」


増援が来た。

今まで寝ていたと思うんだが、何が原因となったのかは分からないものの新しく起きてきた奴が現れたんだ。

それが、聖女のアクア。


正直回復役が現状いたところでどうにかなるようなものではないと思うかもしれない。実際、賢者のアンミがいてくれた方がよほど楽だったのは間違いないだろう。

ただ、アクアはアクアでできることがあるんだ。

ここで活躍するアクアはただのヒーラーとしてのアクアではなく、


「私が全て叩き潰してあげましょう!!」


攻撃役としてのアクアだ。それも、ほとんどの攻撃が意味をなさないタイプの攻撃役として、だ。

メイスを振り回すだけでなく、アクアは自分に常に回復を行ない続ける。これによって多少傷がついたところで瞬時に回復するし、それこそ腕や足の1に本吹き飛んだところで即座に治せる。

魔物の群れに囲まれようとも、首や頭を一撃で破壊されない限りは永遠に暴れまわることができる絶対的な破壊兵器となっていた。


「しかし、このタイミングで起きてくるなんて何があったんだ?あれだけの騒音で寝ていられるならもうずっと寝ていられそうだが」


「うるさかったのは鼓膜を破壊して解決したのですが、さすがにこれだけ血や肉が飛び散ると臭いがきつい物でして」


「ああ。臭いか。確かに倒すのに必死になっていたが、臭いもきつく成ってきているな」


興奮していて戦いの事に意識が言ってしまい、嗅覚に鈍感になっていたのかもしれない。確かにこれだけの魔物が倒れているんだから血の匂いとかきついだろうな。アクアが起きてきたことにも納得だ。

後で臭いをどうするかも考えないとな。


…………いや、違うよな?分かるぞ。そこではないと思うよな?


なんでうるさいからって自分の鼓膜を破壊しているんだよ!!!それで解決したって判断するのはおかしいだろうが!騒音の解決に動けよ!!

いくら何でも、鼓膜くらい簡単に治せるからってそれはやりすぎだろうが!こいつ、人間への恨み以外の部分でもねじ外れてるのかよ!!


「鼓膜破壊か。俺もそれをしておけばよかったか」


「必要なら私がやりましたよ。とはいっても、他人の鼓膜なんて破壊したことがありませんので力加減はできませんが」


「それは怖い…………ただ、俺の場合頑丈だから力加減ができないくらいでやってもらわないと鼓膜が破れない可能性はあるか」


「あら。頑丈と言うのも困りものですね」


そしてクーロリード、お前もかぁぁ!!!鼓膜の破壊を選択肢に入れてるんじゃねぇぇぇ!!!!

もしかしてこの勇者パーティ、常識とかないのか!?


なんて俺は危惧するんだが、当の2人は全く気にした様子もなく楽しそうな(?)会話をしながら魔物を処理していっている。

特に聖女のアクアはと言うと、


「勇者様に代わり裁きを下します!!」


なんか、勝手に俺の代行者になっていた。別に俺も倒そうとは思っているけど、だからと言って裁きとかは考えてないんだが?俺は別に善悪を決められる神じゃないんだし。

というか、逆に本来神が来るだろうセリフの部分に俺を入れるのは聖女としてどうなんだ?神を信仰している人間の1人のはずだろ?聖女に認められているんだから相当な信仰心のはずだろ?


いや、俺がそう思っているだけでその辺りは緩いのかもしれない。俺だって、そんなに神への信仰に関して詳しいわけじゃないからな。

それこそ宗派や解釈の仕方によっても変わってくるだろうし、きっと大丈夫なんだろう。聖女がやってるんだし、大丈夫なはずだ。

…………と思ったんだが、


「主の平穏な睡眠のために!」


その主、俺では?

さすがに主は神であるべき部分だろ?ただ、それにしてはあまりにも不自然すぎる。こいつらが暴れていることで神の眠りが妨げられるなんて聞いたことがないし、このセリフを今まで効いたこともなかったから。

その主が俺なんじゃないかと思ってしまうのも仕方のない事だ。


ただ、それはあまりにもやりすぎだろ。いくら勇者だからって信仰する神と同列に扱うことは、というか信仰する神のように扱うことはおかしい、気がする。

となると、俺ではない可能性も考えるべきか?

例えば、自分の主は自分だけだとかそういう風に思っている可能性とか。

…………聖女としては確実にアウトなんだが、こいつの普段の事を考えるとありえそうなんだよなぁ。何なんだこのどう考えても聖女とは思えない聖女は。


「勇者様。そろそろ目的の地点だ」


「了解。アクア、好きを見て俺たちは塀の中に入りこむぞ」


「かしこまりました。勇者様と共に」


色々と思うところはあるものの、アクアが来てくれたおかげでかなり楽になったし、誘導予定の地点までもう少しで到着というところまで来た。

ここまでくれば後はもう消化試合としてもいいだろう。油断はしないが中に入って休めるまで気を引き締めて仕事をして良き、その後はやあと俺たちも単純作業を繰り返すだけでよくなるのだった。

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