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溺愛に気づかない彼女は、つぶやきで世界を変える  作者: 酔夫人(旧:綴)


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第21話 王太子の悩み |王太子の側近(1)

「おはようございます」

「遅い!」


ルカヴィスの言葉にエリオットは壁の時計を見た。


「まだ始業五分前ですよ?」

「俺は待ってた」

「理不尽っ!」


エリオットはルカヴィスの乳兄弟。このように堂々と八つ当たりできるエリオットはルカヴィスにとって貴重な存在だった。


エリオットは信頼できる人物であると同時に、仕事もできる優秀な人物である。そんなエリオットはルカヴィスの不機嫌の原因は欲求不満だと判断した。


「また夜這いに失敗したんですか?」

「人聞きの悪いことを言うな、トライすらしていない」

「それはそれで心配なのですが」


男女の関係に大らかなゼフィリオンで、成人している男でこの国唯一の王位継承者であるルカヴィスが女性と関係をもってとやかく言う者はいない。しかも夜這いの相手が先日ようやく婚約者となったセラフィナとなれば反対どころか応援されるのだが――。


「痛い目に遭いましたもんね」


セラフィナがダメと思ったら、例え国王が許可を出したとしてもダメ。ダメというか無理。


 ◇


弟であるノアルドの協力でルカヴィスの愛をようやく信じたセラフィナは、ルカヴィスの求愛を受け入れ、翌日には周到に用意してあった書類を提出して婚約した二人。


その夜、ルカヴィスは夜這い……ではなく、セラフィナと関係をもとうとして失敗している。


平民の間でも婚前交渉は珍しいものではない。相思相愛からの婚約成立で気分が盛り上がったこともあり、ルカヴィスはとても期待しながらセラフィナの部屋に向かった。そんなルカヴィスの訪問にセラフィナは驚いたものの、喜んで部屋に招き入れてくれた。


あれは口実にもっていったワインの銘柄に喜んだのだとのちに判明したが、このときのルカヴィスに分かるわけがない。



ワインの瓶が半分ほど開いたところでいい雰囲気になった。


ルカヴィスが口づけるとセラフィナは甘く応え、深さと熱さを増した口づけにも熱心に応えてくれたからルカヴィスの期待は膨らんだ。


「今夜はこのままここで過ごしたい」


ルカヴィスのワインの香り漂う吐息混じりの誘いを、セラフィナは「酔って動けなくなった」と超解釈した。


なぜセラフィナがそんな超解釈をしたのかというと、「婚約期間は最短の三ヶ月」と聞いたセラフィナがせっかくだから純潔のまま花嫁衣装を着たいと願ったからだった。セラフィナの願いは叶う。神々が叶えさせる、セラフィナに超解釈させてでも。



「それならベッドはルカが使って。私はソファで寝るから」


おやすみといってソファに横になったセラフィナにルカヴィスは唖然としたが、気分が盛り上がって思考がポジティブになっていたルカヴィスは照れ隠しだと都合のいい解釈をした。


「抱きしめて眠りたい」

「……うん」


共寝して触れ合っていれば自然と、とルカヴィスは期待した。一方で、信じられないことのセラフィナはその可能性を一切考えず「ルカに抱きしめられて眠れるのは嬉しい」と感じていた。おそるべき、神の御業。


過保護でお茶目な神様たちの加護によりセラフィナはベッドに横になった途端に眠りにつき、かなり強く揺さぶっても全く起きる気配がなく、ルカヴィスは生殺しの一夜を過ごす羽目になった。そして翌朝、ルカヴィスは昨夜の不自然なほどの事象の理由を知った。



――せっかくだから純潔のまま花嫁衣装を着たい……って、“せっかく”ってなんだよ。ずっとそれを夢みていましたって感じじゃないだろ、ちょうどいいからってだけだろ、それ!


そんな乳兄弟の叫びにエリオットは気まずくなった。


しかし、どんな軽い思いでも、セラフィナの想いは神へのお願い。だからルカヴィスは結婚前に甘い夜を過ごすことについては完全に諦めている。生殺しがかなりきつかったので夜の訪問さえ控えているのだった。


 ◇


「欲求不満以外に殿下が不機嫌な理由が分からないのですが?」

「真顔で人を性欲魔人のように言うな。セラフィのドレスが気に入らないんだよ」


ルカヴィスの言葉に『なんだ、そんなことか』とエリオットは呆れたが口には出さなかった。どうせ『そんなことではない』とか文句を言われるからだ。



「セラフィナ様が中傷をされて傷つく前に、神の愛し子である証を見せつけて黙らせると仰ったのは殿下ですよね?」

「言った。言ったよ。言ったが……」


(三段活用か?)


「背中をあそこまで見せる必要はないだろう」


ルカヴィスの指示を受けたマルセラが選んだセラフィナのドレスはどれも大胆に背中が剝き出しになっている。ドレスの生地は第二の皮膚のようにセラフィナの体にくっついているため、それ以上は肌が露出することはないが、ハプニングを期待するような男共の視線がルカヴィスは気に入らなかった。


自分が荒ぶる前に改善するべき。

それがルカヴィスの言い分だった。


(分かりますけど、無理なんですよ……)



「仕方がありませんよ、証はかなり大きいですし」

「全部見せる必要はないだろう。チラッとだけでも、淡く光っているのを見れば入れ墨の類ではないと分かるのだし」


「まあ、そうなのですけれど、ね……」

(無理なんですよ……)


そんなことを思っていたらエリオットの歯切れが悪くなり、ルカヴィスに怪訝な目で見られた。


「エリオット、なぜそんな顔をする。そんな顔をされると……嫌な予感しかしない」


(正解です)


「残念なお知らせです」

「……やはりな」


「セラフィナ様はあのような露出の激しいデザインが殿下のお好みだと思ったようで、本日新たに二枚を追加で注文なさるそうです」

「なんだって!?」


ルカヴィスが勢いよく立ち上がると重厚な椅子が後ろに倒れ、その大きな音に有事だと勘違いした護衛騎士が飛び込んでくる事態となった。

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