能力
「ソシテ、ゴニンメニマモラレタ、ヨニンメトイウノガコノワタシデス。」 俺は少しの間、何も言えなかった。闇の属性の真実。語り継がれなかった5人目の思い。
「ダカラワタシハ、カコノワタシノイシヲツイデ、闇ノゾクセイノカタノ、サポートヲシテイルノデス!」
……正直、話が大きすぎてまだしっかりと処理できていないが、俺がさっき手に入れた鑑識眼というのは、一度見たスキルを使うことができ、さっきモニターに出ていたレベルを上げて、強くなることができる力があるということか。だが……なんだろう、もともとこうだったのだろうか?視界が左目は完全に見えず、右目も、半分くらいしか見える範囲がなくなっている気がする…。
「コレヲキケバチートスキルノヨウデ、ウレシイカモシレマセンガ、シカイガセマイハズデス。コレハチカラノダイショウトデモオモッテクダサイ。」
視界が狭まるだけが代償なら、いいほうなのだろうか?あ!代償といえば、
「そういえば、5人目は憎しみが大きくなって闇の力に呑まれて死んでしまったんですよね、?」
「ソウデス。闇ノマリョクハツヨイダケデハナク、ヘタスルト、ジブンマデシニオイヤッテシマウ、キケンナモノデモアルノデス。マァ、イマノアナタハ、シヌホドヨワイノデダイジョウブデスガ。」
弱いのは俺が一番わかってるさ………。
憎しみか、さっきいろんなものが爆発して憎しみが溢れ出ていた気がする……だから鑑識眼が開放されたのか?
「つまりは俺はなにも憎まずに魔王を倒せばいいんだな?」
「マ、マァソレガイチバンイイホウホウデショウ。デスガ、サッキノコトモ、イママデノコトモミテキマシタガ、アレヲニクマナイコトナンテ、フツウデキルノデスカ?」
なぜ知っているんだと言いたいところだが、どうせそういうふうになんやかんやできてるんだろう。
「好きの反対は嫌いではなく無関心と言うだろ?俺は闇の属性の勇者の話を聞いて、もう裏切り者のクラスメイトになんの興味もなくなった。考える時間を割くほうが無駄だ。」
さっきまで大きな話を聞いていたからだろうか?不思議とあんなに怖かったクラスメイトのことなんて忘れていた。
「…ナゼダカ、コノタンジカンデ、アナタハツメタイヒトニナッタキガシマス。」
あぁ。別にいいさ。俺はこの世界で生きる理由を見つけたんだ。5人目の勇者の話を世界に伝えるためにも、闇の属性について知ること。そして、魔王を倒して元の世界に帰るためにレベルアップをしていくこと。
俺は絶対に元の世界に帰ってやる
「そういえばさーここってダンジョンなんだよな?」
「ハイ。80階層デス。」
80階層かー。…………え?
「80階層!?!……いや、まぁここが何階層までのダンジョンなのかは知らんが、結構深くないか、?」
「ハイ。ダカラマズイデス。イマモシマモノニアッタラクイコロサレルトコロデスネ。」
おいおいそれってフラグってやつじゃないよな?
ドッドッドッドッドッドッ!!!
なんだ?この音、何か近づいてきているぞ。まさかフラグを回収するとでも言うのか?
「黒木様、ココデシンデモイイノデスカ?」
俺が焦りに焦っているのを見てか、話しかけてきた。
「いいわけないだろう…!でも、でもどうやってこんなでかい魔物を倒せばいいんだよ!!」
流石80階層と言ったところか、見た目は狼のような、大きな牙を尖らした魔物が目の前にいる。モニターが言うにはメガケルベロスというらしい。この世界は名前が安直なんだなと思いながら、自分より遥か大きいものが自分を食べようとしている事態に混乱と恐怖していた。
「ガオオオオオオオオオオ!!!」
狼がもう待ちきれないといった様子でこっちに向って走ってきた!!!まずい!!!
……あれ、これ右に来る、?
「!?!ガグルルルルルルル……」
まさかの避けれた。なんでだ?何故かケルベロスが迫ってきた時に右に来るぞという思考が急に脳内に入ってきた。
「鑑識眼ノ、ヒトツノノウリョクデショウ。」
モニターは俺の考えをだいたい読めるのか?さっきから怖いぞ。
鑑識眼ってそんなにたくさん能力があるんだな……まて、一度見たもののスキルが使えると言っていたな?なら……澤田が俺に向かって放った光の魔法も使えるんじゃないか?あの時はまだ鑑識眼が解放されているとは言われていなかったが、異世界に召喚された時点で、目については、話に出ていた5人目であろう人に話しかけられていたし。使える可能性は十分にある。
俺は急いでモニターを操作し、スキル欄を見た。
「……ある!!!これがあれば、あいつを倒せるかもしれない。」
一気にこっち側に起点が回ったと思ったのはつかの間、
「ん?なんだこれ。」
よく見ると、スキルの横には
レベル100以上 筋力500以上 体力500以上 スピード500以上 俊敏性 100以上 頭脳100以上
と書かれていた。
「ま、ま、まさか……!!!」
「ソンナニカンタンニスキルガ、カンタンニツカエルヨウニナルワケナイデショウ!トクニ光ノマホウデス。ナカナカノレベルアゲガヒツヨウデショウ。」
そ、そんな!!ならこいつをどうやって倒せば……
「!?うはっ!!!??」
……しくじった。俺の見えない左目の方から、ケルベロスは魔法を放ってきた。火の属性なのだろうか?口から火を放っていたな。
……もちろん。痛くないわけではない。だが俺はさっき気がついたんだ。スキル欄に猪突猛進が入っていたことを!どうやらこの鑑識眼は、人から得た魔法だけじゃなく、魔物から得た攻撃もスキルに入るらしい。しかも魔物がしてくる攻撃は、スキルというほどのものではないことからか、猪突猛進の発動に条件が必要なさそうなのだ。さっきの火の攻撃に関しては、俺のレベルでは使えないだろう。
だが、これだけで倒せるとは思えない。猪突猛進の攻撃だけでいくのはあまりにも怖すぎる。
どうすれば……
「鑑識眼ノダイタイノツカイカタニ、キガツイタヨウデスネ。」
「……はい?……ってあれ!?!」
さっきまで俺の目の前にいたケルベロスが跡形もなくいなくなっている。
「アノマモノハ、アナタノヒダリ目ヲスコシイジッテダシタゲンエイデス。ジッセンスレバ、鑑識眼ノツカイカタヲマナベルトオモイマシテ。」
はぁぁぁぁぁぁ……そういうことだったのか……。
「いや、幻影でよかったよ。あれが本物なら食われていただろう。」
「ドウデスカ?ヤルコトハミエテキマシタカ?」
鑑識眼はとても便利なものだ。゛本質を見る゛相手の攻撃が来る前に、危機感値のように大体どこに来るかがわかる。一度見たスキルを使える。だがそれは強ければ強いスキルほど、使うのにレベルアップが必要。なら俺がやることはダンジョン内でレベルをひたすらに上げることだ。そして魔物と戦い、スキルを手に入れていくことが最重要。
「あぁ!やることがはっきりと見えたよ。」