闇の真
「____目を___って!」
………………?誰、だ?なんだこの声?俺はどうなったんだ。
「その力____を_____救っ」
だからさっきから誰なんだよ…。でもこの声、なんか前にも………
「……!!!ガッハッ!?!ヴォエ?!ゲホッゲホッ!!」
口いっぱいに鉄の味が広がる。なんだか視界も狭い……。そういえば俺はさっき澤田たちに殺されそうになったんだ……俺は生きてたんだな。…………誰も見るだけで助けてくれなかったな。
「……クソッ!!!なんで俺ばっかりいつもこんな思いしなくちゃならないんだよ…」
周りに誰もいないからか、つい口に出てしまっていた。普段は思っても八恵のために必死にその考えを捨てていた。弱いから、醜いから、自分が全部悪いからと頭に擦り付けていた。毎日毎日殴られ、蹴られ、トラウマを体にねじ込まされて、恥ずかしい思いをさせられて、いじめを受けていると説明しても相手にもしてくれない先生。いじめられていると知って離れていった奴。いじめの原因にも関わってるとも知らずに注意だけする偽善者。俺と八恵だけを残して死んだ両親。
あぁ、これが限界か…。
「うあああああ!!!!憎い憎い憎い。死ね死ね死ね死ね死ね!!!……全部、全部消えてしまえよ……」
「ジョウケンガタッセイサレマシタ。闇ゾクセイノスキル、『鑑識眼』カイホウ。」
……………へ?
「な、なななに!?なんだ!!?もしかしてクラスメイトの誰かのスキルか!?ま、また俺を殺そうとしてるのか!!?」
「イイエ。ワタシハフルクカラ闇ゾクセイノユウシャノサポートヲシテイルモノデス。」
や、闇属性のサポート???どういうことだ?闇属性は何もできないんじゃなかったのか?というか、何処から話しているんだ!
「お、お前は誰なんだ?敵か!?味方なのか!!」
「ワタシハ、ハルカムカシ闇ゾクセイノユウシャサマ二スクワレタモノデス。イマオコナッテイルコトハ、イワバコジンテキナオンガエシノヨウナモノデス。カミノゴカゴトデモオモッテオイテクダサイ。」
「し、信用できない。俺はもう誰も信用できないんだ。姿も見えないし…。闇の属性は何できないと聞いたぞ。からかっているなら今すぐやめてくれ。」
「ソレハチガイマス!……イエ、ソノマエニスガタヲミセルベキデショウ。デスガスガタトイッテモ、ワタシノホンタイハトックニシンデイマス。ワタシハ、イシヲツイダキカイデスノデ、アナタノヒダリ目ヲ、オカリシマス。」
「え?さっきから何を、?…て、うわっ!!??」
何故か急に視界が明るくなって、相変わらず視界は狭いが、辺りが見えるようになった。
「お、おい…なんか左目がバグってるみたいになってるんだが…」
「スコシオマチクダサイ。……………デキマシタ。」
「うぇあ!?な、なんだ、これ……。」
俺の前にモニターのようなものが出てきた。モニターには、
レベル1、スキル2、体力1、俊敏性1、筋力1、スピード1、頭脳1、魔力測定不可
ざっとこんなことが書かれていた。 それにしても弱いな……
「あ、あのこれってなんなんですか?」
「コレハアナタノ、ゲンジテンデノレベルデス。」
レベル?でも女神が言っていたことによると…
「属性は軸となっていて、レベルが上ったり、戦うことで強くなることはないと言っていたぞ。」
「ソレハ闇ノゾクセイニツイテハ、セカイガホッタラカシニシテイルセイデ、解明サレテイナイカラデス。」
「…どういうことだ。」
俺が聞くとモニターは説明を始めた。聞いたところによると闇の属性というものはこうらしい。
闇の属性、闇の属性は保持者が光の属性よりも少なく、名前の怪しさからも、調査をされずに、そのまま世界からほったらかされた魔力であった。
そのせいで闇の属性を知るものは誰もいなくなり、ただただ影の薄い、落ちこぼれの属性と言い伝えられるようになりました。
500年以上も昔、ディザスタ王国の厄災を防ぐために他の世界から、勇者が集められました。1人目は光、2人目、3人目、4人目も光の属性。5人目は落ちこぼれと言われる闇の属性でした。
5人は世界を厄災から救うために各自、努力を積み重ねました。
そこで闇の属性を持った5人目は気がついたのです。闇の属性を持つものにはスキルがないわけではない。他から見えないだけでスキルはあるのだと。
闇の属性には『鑑識眼』が与えられる。゛本質を見抜く目゛。一度見た攻撃、スキルが自分も使えるようになるといったチートのようなスキルだったのです。そして闇の属性には他の属性と違い、強い軸があらず、軸が弱いからこそ、レベルアップが唯一可能な属性でもあったのです。
5人目は大変喜びました。闇の属性は決して落ちこぼれではなく、世界を救えるだけの力を持っているんだと。そこから5人目は、1人目、2人目、3人目、4人目と、訓練中にスキルを使っている時を、鑑識眼で捕らえ、光の力を全て使えるようにしました。来る厄災の日までは、秘密にしておこうと考え、そこからは鑑識眼で色々な人のスキルを捕らえ、力を増やしていき、筋力や体力などもあげ、レベルアップし、ぐんぐん力をつけていきました。4人ともきっと驚いてくれる。いや、4人だけじゃない。世界中の人が、闇の力のすごさを知ってくれる。と思い、来る日まで努力を続けていました。
来る日、世界は絶望に置かれました。厄災というものは想像を絶するものであったのです。倒しても倒しても出てくる魔物。世界は血の色に染まったのです。
5人の勇者は魔王を倒すことに奮闘していました。
ですが魔王の力は膨大なものであり、勇者たちは魔力を消費しすぎていたのです。そしてついには、勇者の1人目が魔王によって殺されました。2人目、3人目、と死にました。そこでやっと5人目は怖くて動けなかった自分を酷く恨みました。そして5人目は強い自分への憎しみが爆発したところで闇の属性の本当の怖さを理解したのです。闇の属性は軸が強くない、つまり力とひきかえに悪心が大きければ大きいほど、簡単に呑まれやすいものでした。
5人目はそれでも、まだ生きている4人目と世界を救うために、4人を見て習得した光の力を全て使い、魔王を倒したのです。
5人目は魔王を倒すと同時に、闇に呑まれ、死にました。
最後に生き残った村の人たちが見たのは光。結局後世に語り継がれたのは光だったのです。