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鑑識眼  作者: 寝眠猫
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裏切り

今、なんて……

「……はっははは…それってつまりクラスメイトの誰かを殺して魂を捧げると、元の世界に帰れると?」

「…はい。」

額から冷たい水が止まらない。

ここにいる皆、今すぐにでも帰りたいと思っているだろう。だが帰るにはラスボスの魔王の核を取るしかない。…クラスメイトを殺す、これは今すぐにでも帰ることができる方法だ。これは……まずい気がする。


パン!パン!


あのリーダーぽい女神が突然手を叩いた。

「勇者様殿!これは一つの方法であって、魔王を倒さずとも帰る方法は他にもあるでしょう。ですから一度冷静に。」

俺達のざわつきを見てか女神たちがうまく仕切ってくれたようだ。

「少し話がズレてしまったようじゃが、お主らには属性判定をしないといけないのじゃ。あそこに水晶玉があるじゃろ?順番に触れるのじゃ。」

魔法に詳しそうな女神が俺たちを水晶玉の方へ誘導した。

皆はざわつきながらも渋々属性判定に取り掛かった。


「「「「おおおおおお!!!」」」」

属性判定の最中、女神たちの驚く声が聞こえた。振り返ると澤田が触れた水晶玉が眩しく黄色に光りを放っていた。

「こ、これはすごいです!!勇者様♡光の属性ですよ!!!」

光の属性と判明した瞬間、女神たちの澤田を見る目が急変したのはなぜだろう。強いからか?

「ふーん。まぁこんなもんだろ。光が強いってなら俺が持ってて当たり前だ。」

澤田はまんざらでもない様子だ。…俺はどうなんだろ……。クラスの皆が続々と水晶玉に触れていっている。大半は火、水、氷、風だったが、澤田以外にも、神崎と京極、氷室という奴が光の属性だった。

光の属性保持者は、これからの冒険などに女神が一人ずつつくらしい。女神がつくなんてすごい属性だな……

俺はなんの属性なんだろう……光が強いならやっぱり光がいいな…でも女神は4人だ。光の属性はもう出ないのか?なんてことを考えながら触れた水晶玉は真っ黒に染まった。

「え?黒?黒って…なんなんですか?」

俺を含め周りがざわついた。その中でも特に女神の見る目が変わった。

「……あぁ。ふふ闇属性ですか。」

女神たち3人はニヤケが止まらないと言った様子だった。唯一なにかを慎重に見るような目で見てきたのはあの魔法に詳しそうな女神だった。

その女神が説明を始めた。

「闇属性はのぉ、勇者の書をみたらわかる通り、これといった活躍がまったくない、なのに保持者が世界に同時に1人しか存在しないといった、まぁいわば……特に意味のない属性と言われているんじゃ。」


「……へ?」

ま、まて俺はそんな弱い属性を引き当ててしまったのか?

「ぷっふははははは!!!!お、お前!ふっふははは!異世界に来てまでも落ちこぼれかよ!!!」

澤田が笑いをこらえきれない様子で言ってきた。

「…ぷっ」「くすくす」「……ふふ」

おいおい……嘘だろ……いつも俺がいじめられてる時に標的にならなように何もしなかったやつらも、自分のほうが強いとわかった瞬間笑い始めた。女神も笑いを必死にこらえているように見える。

「で、でも……活躍をかかれていないだけかもしれないじゃないか!!きっと闇の属性だって、」

俺は異世界に来てまでも弱いままだということを信じたくない。惨めにすがろうとしたが、

「いいえ。闇の属性は何もできないです。他の属性と違い、スキルも何もありません。この世界は戦うと強くなるなんてことはありません。肉体的、精神的には強くなりますが、魔力が強くなることはありません。属性は自分の軸なのです。あなたはその軸が人一倍劣っているのです。」

「で、でも……」

必死に抵抗しようとしたがなにも返せない。俺は、俺は異世界でも底辺なのか?弱いのか?

「め、女神様、同じ世界の人の魂があれば元の世界に帰れるんですよね……?」

委員長が急にそんなことを聞き出した。

「ええ。そうです…。あ!!!……とてもいいことを思いついてしまいました!!闇の属性保持者の落ちこぼれ、黒木大河さんを魂として捧げるのはどうでしょう?!」


「……は、?」


おいおいまて……どういうことだ……俺の魂??俺を殺して元の世界に帰るとでも言うのか!??!

「女神さん、それに委員長……何を考えているのですか。クラスメイトである黒木さんを殺すとでも?」

神崎から出た声とは思えないほど低いトーンで発せられた言葉に委員長含め、クラスメイトはまどろんだ。

「でもいい考えだと思いますよ?私は。」

この女神は人の感情を読み取れないのか、ただ単に空気が読めないのかは謎だが、場に合わず、とびきりの笑顔でそう言った。

「……は?」 

神崎が鋭い目で女神を睨みつけたが、女神は億劫もせず話し始めた。

「魂を取ると言っても、殺さないとできないわけではありません。一度気を失っている間に魂をぬく儀式を行えばいいだけです。その後はまぁ…植物人間状況にはなりますがねー。死なないだけましでしょう?殺さずに魂が取れるのは光の属性保持者だけですが…。」

「っ…………!」

植物状態?殺す?儀式?死ぬ?頭に何も入ってこない。俺は殺されるのか?今。ここで?……嫌だ……嫌だ………!

「ふっはは!!そういうことなら俺がやってやろうかァ?委員長。帰りたいんだろ?俺が殺して黒木の魂をてめーにやろうか?」

「……本当か!?いいのか!澤田くん!!俺には大切な妹がいてな……元の世界にどうしても帰らないといけないんだ…黒木くんには悪いけど家族を優先しないわけにはいかないんだ。」

「……ねぇちょっと…二人共何を言っているの?冗談よね????」

何か騒がしい……何も頭に入ってこない。俺はここで死ぬのか?

「んじゃちょっとくら魔力ってやつを使ってみるかァ!…………光の力を持つ精霊よ、今ここへ集え!スターライトニング!!……ってすげー!!呪文みたいなのが勝手に頭に入ってる!!」

「ま、まつのじゃ!最初は魔力を制御しないと!力が出すぎてしまうのじゃ!!しかも黒木の立っているところはダンジョン上じゃ!!このままじゃ落ちてしまう!!」

魔法の女神が何か必死に止めている様子が見えた。だがそれも遅かったようだ。澤田は俺に向かって手をかざし、魔法を放った。その威力は想像を超える、凄まじいものだった。

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