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鑑識眼  作者: 寝眠猫
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アオの思い


暗い。痛い。怖い。苦しい。何も見えない。一体ここに閉じ込められてどのくらい経ったんだろう。

はじめは必死に出ようと抵抗したけど、こんな魔力のこもった鎖で縛られて逃げられるはずもなく、無駄な足掻きはいつの間にかやめていた。

今まで何があっても必死に生きようとしてきたのに、家族も仲間も失った今は早く死にたいとしか思えない。どうせ死ぬなら早くこの苦しみから解放されたい。でもこの思いもそろそろ叶いそうだ。多分もうじき死ぬだろう。亜人族だからなのか本能的にそろそろ死ぬと察した。…やっと解放されるんだ!

……僕の人生はいいものだったのかな。生まれてから今まで、僕のやりたかったことはやれてたっけ?家族も決して愛してはくれなかったし、友達だと思ってたやつに気がついたらいじめられてたし。誰からも愛されたことなかったな。


……最後くらい、誰かに抱きしめて欲しかったな。


ゴゴゴゴゴゴ………



!?



へ?え!?!?!扉が開い、た?え!?なんで!?ここってダンジョンの最下層だ、よね!?!!


「まっぶし!」

嘘……人、人間だ。いやでもこんなダンジョン最下層に来れる人なんていないはず……流石に騎士団でも一人では無理だ。じゃあ、一体、?

「……………だ、れ?」

僕の声で人がいることに気がついたその人は僕を見るなり目を見開いて呆然とした。

ま、まぁそうだよね。亜人族だし。これは逃げられるか殺されるかのどっちかかな。……でもやっぱりこういう反応をされるのは慣れてるはずなのにいつまで経っても嫌だな。さっき扉が開いて、驚くと同時に少し期待の気持ちがあったのは間違っていたんだ。

「お、おい!!大丈夫か!!?」

その人はそう言うなりずかずかと僕の方へ近づいてきた。

う、うそ…こっちに来る!!

「ヒィッ……や、やめてください!!ぼっ僕、ちゃんとここでじっとしてます!!多分もうすぐ死にますから!!」

震えてしまう体を必死に抑えて、恐る恐る人間の顔を見た。

綺麗な顔だった。今は怖い気持ちでいっぱいのはずなのに、一番に思ったのはこんなものだった。

男の人間にしては長いまつ毛、目の色は片方青色で、暗い中、水面のようにきらきら輝いていた。

だけどなぜかゾットするほど冷たく乾いた目。

身長は高く、すらっと長い手足。でもどこかほっそりしている。

なんだか女の人間にも見える気がする……。

そんなことを呑気に考えていると

「待ってろ。すぐ解いてやる。」

「……へ?」

人間はそう言って氷の魔力で作られた鎖に触れた。その瞬間。


バキッ!!ホロホロホロ……


「う、うそ……亜人族の僕がどれだけ頑張っても解けなかったのに……。」

し、しまった!驚きのあまり亜人族ってバラしちゃった…。…でもまぁ見た目で最初からわかってたか。でもなぜか人間は納得したような顔をして

「よかったな。お前の毎日の努力のおかげだ。」

「え?い、いや……あなたが壊したんじゃ…」

なんだこの人?今この人間が壊したんだよな?さっきのは冗談なのかな。

「そういえば君はなんで縛られていたんだ?」

「そ、それは……。」

あんな聞いて楽しくないことを話してもいいのかな。この人は亜人族をよく知らないっぽいし、僕の事情を聞いたら、めんどくさくなって僕を捨てて行っちゃうんじゃないか。…やっと助けが来てくれたのに……

「いや、無理に話す必要はない。鎖は解けたんだ。君は自由にしてくれ。じゃあな。俺は行く。」

!……やっぱり置いていかれるよね…。最初に会ったときからこの人間の目は冷めきってたし期待なんて…

……でも…。

「ま、待ってっ!!!」

いくら冷たい目を持っていてる人間でも、見知らぬ耳と尻尾が生えた人間じゃないものが鎖で縛られているというめんどくさそうやつを助けてくれる人なんて、お人好ししかいないよ。

「ま、待って…。は、話を聞いて、ほしい、。」

僕は一つの希望をつまみ、今までのことを話した


「よく頑張ったな。よくここまで生きてきた。偉いぞ。」


涙が溢れて止まらなかった。

認めてくれた。抱きしめてくれた。人間からしたら成り行きで言った、ただの一言と行動だったかもしれない。でも、涙でキラキラした視界に入った優しい目は澄んだ海のようでとても綺麗だった。




「クロはほんとにかっこいいね!」


それは僕とクロがダンジョンで、地上に出るために探索を進めていたときにふと言った言葉だった。

「………冗談きついよ。」

「へ?」

その時のクロはなぜか下を向いて、辛そうな表情をしていた。

「クロこそ……自分の顔見たことないの?」

僕がそう言うとクロはなにか気がついたような表情をして、少し照れながら話し始めた。

「そうだった。俺実は昔?は太ってて、痩せてから鏡は見れてないんだよ。」

僕はその言葉を聞いたとき、すごく危機を感じた。

それってクロは自分の顔のかっこよさに気がついていないってことだよね?ならダンジョンで女の人に声をかけられてる理由は僕がいるからだと思ってるのかな?(僕目当ても多いけどクロ目当ても多いのに…)

自分の顔のかっこよさに気づかずに女の人と話したりなんかしたら、無自覚天然系イケメン的な感じで相手は確実に惚れてしまう!

………これは……クロと他の人間が極力関わらないようにしないといけないな……

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