カコ
「クロ、あれはどういうこと?」
ギルドからラッキーアイテムの腕輪をもらい、俺とアオは宿へ来た。
宿はよくできていて、パーティーごとのプライバシーが守れるように、丈夫な作りになっていた。
一階には共同で使える豪華な露天風呂や広々とした食堂があり、大体のパーティーはそこで食事をとるそうだ。
2階から最上階までは全てパーティーの部屋になっていた。パーティーの数はすごく多いからか、俺たちのような出来立てのパーティーは下の階数にある狭い部屋だった。腕輪で見れるパーティーのギルドへの貢献度によって部屋の階数を上げれるようだ。
そして、宿についた俺はアオに質問攻めされていた。
「クロ……あの新聞の話、嘘だよね?」
…意外だ。いくらアオでも少しは疑われると思っていた。俺はアオに出会ってから今まで、女神の話、転生する前の過去の話は一切してない。だが、俺がアオ以外の人と中々会話をしないところとか(なぜかアオも俺が他の人と話させないようにはしていだが)たまにふと自暴自棄になってしまっているらしく、アオのそばから離れ、魔物に無抵抗に襲われかけたりしていたところをアオに何度か助けてもらったことがある。アオはいつもそういうとき、なにも俺に聞かなかった。ただひたすら抱きしめてくれていた、気がする。
「俺を疑わないのか?あれで俺は闇の勇者ってことがわかっただろ。」
「疑う?……あぁ。確かに疑ってるよ。」
……流石に、そうだよな。……あれ?自分から疑わないのかなんて聞いたくせに、いざ疑ってるって言われるとなんか、胸が痛い。
「あの新聞をね。」
「……へ?」
「だっておかしいよね?クロがそんな事するはずないじゃないか。しかもなに?あの悪意ありすぎる見出し。あんなに悪臭がする新聞をすんなり信じるバカもこの国は多いんだね。まぁ俺だけがクロの本当のことを知ってるって考えたら嬉しいから、バカが多くて良かったって少し思っちゃってるけどね。それで本題だけど、あのクソ話を作った奴は誰なの?」
「……ふふは!」
ま、まずいあまりにもアオが熱弁で笑ってしまった。さっきの胸の痛さもいつの間にか無くなっていた。
「わ、笑わないでよ。ちょっと気が張ってたんだ…………それで!誰なの!!クロのこと俺全然知らない!!ちゃんと教えて。」
「あぁ。ずっと言ってなくて悪かったな。ちゃんと説明するよ。」
俺は今までの出来事をアオに全て話した。アオなら分かってくれるというのは信じているけど、やっぱり怖い。昔いじめられてたことも話した。やっぱり失望されるだろうか……。
「…………そいつらは今どこにいるんだ。」
ま、まずい!!アオが尋常じゃないほど怒っている!
「ま、まってアオ。落ち着いて。俺は大丈夫ほら!全然大丈夫だし、今はアオが一緒にいてくれるから幸せだよ?」
「クロ‥……!あ…でもさっき恨みを思い出せてよかったって……。」
「あぁ。俺は闇属性だから、恨みとか、憎悪の気持ちがある方が強い力を使えるんだ。正直に言うと俺はあいつらを殺してしまいたいくらい憎んでいる。でもそれは闇の力の思うままになってしまう。闇の力に飲み込まれて死んだら何も意味ないからな。だから俺は強くなって元の世界にアオと行くためにあいつらを程よく利用するってだけだ。もうあいつらとは一生関わらない、赤の他人だから。」
「……そっか。クロは強いんだね。……俺も頑張るよ!!俺もクロと一緒にクロの生きてきた世界に行きたいからね!」
「あぁ。信じてくれてありがとうな。ア、オ……」
「あれ?クロ…。ふふ寝ちゃった。色々あったもんね……おやすみ。」
「………あ、そうだ。アオはあのクラスメイトらと女神を利用するとか言ってたけど、俺は利用できそうになかも。会ったら絶対、殺しちゃうもん…。クロは自分がどれだけ思われてるかを自覚したほうがいいかもね。この話を俺にして、後悔とか……しないでよ?」