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鑑識眼  作者: 寝眠猫
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プロローグ

強くなりたい。そう考えたことは生きていて幾度もあった。だがもう、そう考えることはないであろう。なんたって俺は______

 


いつもの放課後、俺はバイトに行こうと急いでいた。重い体を必死に走らせ、それは傍から見れば何かから逃げるようにも見えただろう。だがそれは間違ってはいなかった。

「おいちょっと面貸せや。」

こうやって校舎裏に連れ出されるのはいつものことだ。何をされるかはもういやというほどわかっている。

「クソデブが調子のんなよッ!」

「がはっ!?」

まずい。みぞおちを食らった。…あぁ……胃液が口内に広がっていくのを感じる。ううー…しょっぱい。

俺はいじめられている。殴る蹴るの毎日。原因はやはりこの体型と顔のせいだろう。それとあともう一つ……

「また麗夏さんに声かけられてたよなァ?調子乗ってんじゃねぇぞ!!」

「アガッ!……ゲホッゲホッ」

……あぁ今日の殴りにいつもより力が込められていたのはこういうことか。

神崎麗夏。彼女はなぜか俺に構ってくる。そのせいでこんなに殴られているとは本人は知らないだろうが……いやそれも俺がこんな見た目じゃなかったら起こらないことか。

しばらく俺を殴り蹴り続けて飽きたのか、いじめの主犯、澤田健二がうずくまっている俺の髪を引っ張り上げた。

「明日は来んなよ!!クソデブゥ!!!」

「あかっ!?」

顔面に強烈なパンチを決められた俺は気を失っていた。目が覚めた頃には辺りは暗くなっていた。

ボロボロになった体で必死に歩いた。自分が惨めで情けなくて悔しい。よろけて倒れそうになるのをどうにか防ぎながら病院に向かった。 



「すみません。黒木大河です。」

「あら。今日も妹さんのお見舞い来てくれ……」

俺を見ると病院の受付の人の顔が強張った。

「はぁ…またこんなに怪我をして…一体いつも何をしてるんですか!?」

「い、いえ少し運動を……。」

「運動でこんな……?はぁ…もうほどほどにしてくださいよ?妹さんが目を覚ましたときにこんな姿だと悲しみますよ!」

俺には双子の妹、黒木八恵がいる。八恵は物心ついたときくらいにはもう難病にかかってしまっていた。手術するには莫大なお金が必要でありながら、成功率はとても低い。八恵は目を覚まさず植物状態、息子はいじめを受けている。そんな親からしたら地獄でしかない状況、両親は耐えられるはずもなく、母と父は心中をした。俺と八恵は完全にふたりぼっちになってしまった。八恵の眠った顔を見ているといつも思う。

………強くなりたい。………

この容姿のせいでいじめられ、バイトも行けず、いるだけで迷惑をかける日々。

八恵を守れるのは俺しかいない。

「俺どうしたらいいんだよ……八恵…。」

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