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ブースト

作者: 葉沢敬一

毎週日曜日午後11時にショートショート1、2編投稿中。

Kindle Unlimitedでショートショート集を出版中(葉沢敬一で検索)

 還暦が近づいて、LOH症候群なるものになってしまった。男性ホルモンは年齢ともに低下するものだが、その値が基準値を割り倦怠感、記憶力と集中力の低下、抑うつ気分になり、性欲もなくなってしまった。


 仕事で無能扱いされていて、それはまあ良いんだけど、仕事が堪えるようになってきた。たまたま読んだ本にLOH症候群の記述があり、医者に行って検査して貰ったらドンピシャだった。


 私は引退を考え始めたが、年金貰えるようになるにはまだまだある。とりあえず治療を受けようと思った。テストステロンの注射。お尻に太い針で注入される。いや、比喩的な意味じゃなくてそのまんま。


 すると気分は少しだけ良くなった。ここまでは良い。

 私は他の薬に手を出し始めた。外国製の元気になる薬とか。成分を調べ、覚醒剤などではないものを口コミで調べ個人輸入した。


 服用を始めると、格段の効果があった。力が強くなった。仕事の帰りにオヤジ狩りに遭ったが、6人の若者を数秒で昏倒させてしまった。まるで、相手が鉛を背負って動いているように見えたのだ。


 これは凄い。私は服用量を増やした。10代に若返ったというか、10代のスポーツ選手並みに強くなった。知力も10代に戻った。仕事もなんなくこなすようになった。


 しかし、副作用も出てきたのだ。肌が鱗状になった。

 職場で避けられるようになった。馬鹿にされていたのに、上司も同僚も化け物を見る目で絡んでこなくなった。


 ある日、鏡を見ると瞳が縦に裂けているのが見えた。

 は虫類の身体になってしまったらしい。


 薬の服用を止めようとすると、禁断症状みたいなのが現れて苦しくて薬を飲んでしまう。 製造元に問い合わせてみる。スペイン語で翻訳ソフト使って質問する。


 すると、回答が帰ってきた。

――5千万円で元に戻る薬売ります。

 なぜか、全財産ピッタリだった。


 私は悩んだ末、支払うことにした。鋭くなった知性がこのままだと危険だと知らせたのだ。

 届いた薬を服用しはじめると、外見は元に戻った。体力も知性も元の鈍いものに戻った。


 まあ。こんなもんさと自嘲気味に一年ぶりにLOH症候群の治療の予約をしたのだった。

 高望みしすぎたのが失敗だった。

全ての著作権は私、葉沢敬一にあり、勝手な書籍化、マンガ化、ドラマ化、映画化などは禁止します。

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