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偽りのピンクブロンド【商業化予定】【全体改稿予定】  作者: 川崎悠
第8章 ダンジョン攻略と文化祭
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97 聖霊のロザリオ

 ヒューバートと協力し、事態の終息に当たる。

 互いに変装中の身のため、正式な通報者になることは困るが……。


「警備に突き出すにせよ、事情の説明が難解ですね。信用されるかどうか」

「そうね……」


 ここで起きたことは一体、何だったのだろう。

 『聖霊のロザリオ』を媒介とした魔獣召喚?

 魔法陣が残っていれば証拠になったかもしれないが、私が焼き尽くしてしまった。


 そして黒ローブの男たちの正体は?

 彼らは一体、何の目的でこんなことを。

 王都の中で魔獣を呼び出すなんて。先程の魔獣が街中に現れていたら、どれだけの民に犠牲者が出たか。


「レーミルは、この事態に陥ることを分かっていたのかしら。それともヒューバートが解決すると思っていた……?」

「俺がですか?」

「……たぶん」


 あの余裕のある態度。

 一連の事件は、彼女にとって『知っているイベント』だったのだと思う。

 だが、もしもそうだとするならば。


 ……民に被害が出かねない状況を未然に防ごうともせず、笑っていたということ?

 ヒューバートの活躍はゲーム中、あまり語られない。

 詳細については彼女だって知らなかったという線もまだあるが。


 もしかして『魔王の復活』って人為的な災害なのかしら。

 先程の魔獣召喚の要領で、魔王を異界から召喚する?

 それを企てている『異教徒』がウィクトリア王国に存在していて?


 アルスにはどう伝えたものか。

 私たちはこの後、この男たちを連行して事情聴取を受ける?


「ヒューバート。どう思う? どうすべきかしら」


 私は彼にそう問いかける。

 ヒューバートは、人差し指を折り曲げて顎につけ、少しだけ考え込む仕草をした。


「……正式なところに捜査させた方がいいですね。ただし、ここで何があったか自体は秘匿した方がいいかと」

「そう……」


 魔獣召喚が人為的に成されたなんて、酷い話もいいところ。

 民に報せれば混乱の元となるだろう。

 であれば秘匿は当然。


「……そういった調査機関に渡りは付けられる?」

「ええ、まぁ」

「では任せてもいいかしら。もちろん手伝うわよ」

「いえ。……ただ」

「うん」

「そのロザリオですが。それも証拠品として提出しても? お嬢としては何かありますか?」

「ああ、これは。どうかしら、別に」


 証拠品にするのならアルスの手元に返るのが遅れてしまうが。

 それは仕方ないことかしらね。終盤で彼が手に入れられればそれでいいかもしれないし。


 私は、手に持っていた『聖霊のロザリオ』を改めて見た。

 銀色で、十字架を基礎としたアクセサリー。


 先程までは魔法陣によって何らかの力を引き出されていた? のか。

 先代教皇猊下が『奇跡』を込められた遺物。


 アルスが手に入れれば、もしかしたら魔王の討伐において何かしらの効果を発揮するのかもしれない。

 その魔王陣営に『私』が居ないことを祈るばかりだ。

 うん。ついで祈っておこうかしら?

 なんだか、物凄くご利益があるっぽいアイテムだし?


 ここは異世界。ファンタジー要素がある、魔法・奇跡のある世界だ。

 であるならば真摯な『祈り』もまた価値を持つだろう。

 というか『奇跡』とは、そういうものだし。


 私は、スタンダードな祈りの姿勢を取り、そして『聖霊のロザリオ』に祈りを捧げてみた。

 

「お嬢?」


 どうか、私は民の『破滅』を回避できますように。

 そして『私』にその破滅を打ち破る力をお授けください。


 ……ダメ元だった。思い立ち、興味本位で試してみただけ。

 それでも、それは真摯な願いでもあった。

 実際にそう思っているからこそ、今の私はこのような姿なのだ。


 カッ!


「え」


 聖霊のロザリオから光が溢れ始め、驚く。

 え、え? まさか、本当に?


「お嬢!」

「あ、いいの、これは」


 何か『悪い』感じがしない?

 光は優しくロザリオから溢れ出し、そして染み渡るように私の中に入ってくる。

 熱く、優しい。内側に滾るような光の奔流。


「ん……」


 『奇跡』が、私の中に宿った? 私、悪役令嬢なんだけど。

 やがてロザリオからの光は弱まっていき、沈黙した。


「お嬢。大丈夫ですか?」

「ええ。体調は大丈夫、なんだけど」

「今のは」

「……『奇跡』を賜ったみたい。つまり、この『聖霊のロザリオ』は、そういう修得アイテムだった?」


 つまり『わざ〇シン』ってこと?

 通常ルート攻略時は、ただのキーアイテムだけど、『魔王討伐』ルートにおいてはそういう役割を果たすものだと。


 魔法と違い、奇跡は賜るものだ。

 ありえなくはないのかもしれない。


「……『何の』奇跡を?」

「分からない……」


 賜った後って情報出て来ないの?

 こう、ステータス画面とか。便利なインターフェースはなし?

 教会へ行って調べないとダメかぁ。


 あ、でも。今ので本当に私が『奇跡』を賜っていたら。

 こっそりファムステルのダンジョン攻略に向かえるわね……?


 どうやら、今回の『イベント』の正式な報酬は、この奇跡の修得らしい。

 アルスかレーミルが本来なら手に入れるはずのもの?

 だとしたら単なる『治癒』や『解毒』ではなさそう。ちょっと怖いわ。


 ロザリオに祈ればアルスたちも手に入れられるかしら。


 私は、そうしてロザリオを奪還し、新たに『奇跡』を賜り、イベントを終えたのだった。

 男たちは、この後、ヒューバートが呼び出した捜査官たちに美味しく回収されていきましたとさ。


 うん。めでたしめでたし?

 ロザリオは捜査官に持っていかれちゃったけどね。


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― 新着の感想 ―
[一言] 原作だとヒューバートは魔物討伐優先で人間は取り逃がしてしまってたのかな? アルスはまだ探してるだろうからめでたしの前に一言教えてあげてほしい(笑)
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