表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
偽りのピンクブロンド【商業化予定】【全体改稿予定】  作者: 川崎悠
第6章 アリスとアリスター
47/115

47 悪役令嬢の試練①

 現在、学園は夏季休暇中。2学期が始まるのは、まだまだ先。

 義弟のジークと公爵位を懸けて競い合いをすることになった私。


 課題は3つあり、1つ目は商会の運営。

 『アリスター商会』を立ち上げ、店舗を1つ王都に構えることになる。

 商材、人員、予算の指定は現段階ではナシ。

 公平な競い合いをし、そのことを告知する予定なら、どうするおつもりか。


「何もかも決めない内から王都の土地の確保と言ってもね」

「王都で通じる商売をせよ、ということですね」

「そうね。まず場所を指定したのは、そういうことでしょう」


 新しい商売が出来るかどうかではなく、この王都で長期間の運営ができることを考えよ、と。


「お嬢様はジーク様が選ぶのは、どこだと思われますか?」

「まぁ、一等地だと思うけど……」


 王都と言っても広い。王宮へ続くような大通りもある。

 当然、その道は王宮へ向かうか、出てくる馬車やら何やらが通る場所。

 横幅が広く取られ、また人々が賑わうようにも出来ている。

 こういう国だけど、やはり『侵略される』ことは考えられており、大通りは途中から大きく曲がっていて……。

 土魔法による『壁』や『穴』を即座に作れなくはない世界だ。

 バカ正直に攻めてくる相手は、通る道が分かっている方が対処し易いだろうな。


「大通りですか」

「ええ」


 中央通りが一番賑わうのは確か。

 お父様が地図上に記した場所の中には、大通りの土地も含まれている。

 土地の購入に掛かる費用は、やはり計算されるのかしら?

 ゼロスタートで売り上げだけの勝負とは限らない。

 前者は現実的な商売。後者はゲーム的ね。

 お父様がどういう能力を見たいのかによって変わってくる。


 将来的に言えば公爵家という『土台』は、元からしっかりしているのだから、その土地を使った経営能力しか見る必要はないとも考えられるわ。

 そうなれば土地を押さえた分のマイナスなど関係ない、後者の方の選定になる。

 王者の商売。恵まれているから、より恵まれる。


「アリスターお嬢様はどちらに? 同じく大通りを狙いますか?

「……そうねぇ」


 どんな商材を扱うにせよ、大通りの確保は有利。

 しかし、指定場所の土地に大通り枠は一つしかない。

 となればジークは真っ先にその場所を確かめ、問題がなさそうかを確認するはず。

 そして3日と待たずに決めるだろう。


 ただ、それがお父様の罠である可能性は……?

 如何にも目先の利益に飛びつくような姿になる。

 王者の商売をするのはいいが、それと見極めが出来るか出来ないかの能力は別だ。


「……大通りを選択するなら、時間を掛けた方がいいと思うのよね」

「そうなのですか?」

「ええ」


 ぶら下げられた美味しい話なのよ。

 そこにすぐに突撃するのは、公爵の振る舞いかしら?

 損切りができる範囲なら別に構わないという考え?


 ジークは、こういう時にどう動くキャラクターだったろうか。

 生憎と、この『公爵位の競い合い』はゲームのイベントにはない出来事だ。

 私の『原作』知識では勝敗を見抜けない。

 キャラクターとしてのジークがヒロインと出会うのは、王都だ。

 よく出歩いている。彼のホームフィールドだと言えるだろう。

 ジークは王都のことをよく知っている事になる。


 遅かれ早かれ、ジークとヒロインは出会うだろう。

 そこで『ジーク商会』を知ることになる。

 彼女は、何かのゲームイベントだと思うかしら?


 そうすると彼女は、きっとジークに協力するだろう。

 前世の知識を持った何かしらの商品の提案をする。

 そして『大商人の子』ホランドにも声を掛けて……。

 私がヒロイン側なら、相手と同じ商材を選ぶだろうな。

 その上で売り上げを競うことを考える。

 ただ、スタート段階で、私と真逆の経営方針をジークが掲げるなら、ヒロインとの出会いで方針転換を余儀なくされて隙が生まれて……。


 『ヒロイン』レーミルの様子からして、焚き付ければジークにも手を出すんじゃないだろうか?

 そこで仲違いを誘うか。いえ、でもその企みって私の負けフラグ?

 『愛は勝つんだ』ということでヒロインとのタッグこそが私を上回る理由に……!


「考えてもどうにもならないわね」

「そうですね。与えられた情報が少ないですから。あえてそうすることで、もっと細かく聞くことを促しているなどは?」

「……その線もあるわね」


 商売をするのだから、事前に情報を調べ尽くすのは当然だと言える。

 今の私たちは如何にもゲームの準備を進めてもらい、よーいドンのスタートを待っているかのようだが……。


「……競い合いという考えを一旦、横に置いておいて、まず商売としての成功を考えましょうか。

 私一人で運営するものじゃない。従業員の生活だって巻き込むのだし」

「はい。それが良いかと思います、お嬢様」


 私は、お父様に改めて尋ねるべきことを事前に書き出すことから始めたわ。

 競い合いに勝つためではなく、商売として成功させるためにね。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ