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偽りのピンクブロンド【商業化予定】  作者: 川崎悠
第四章 公爵家の競い合い
112/115

113 そして、いつものカフェで過ごす

「お疲れ様でした、お嬢」

「うん、ありがとう、ルーカス」


 私たちは再び学内カフェに来ていた。

 魔術対抗戦はクルスを撃退して、私の優勝で無事に終わりだ。


 はっきりとしてきたのは『アリスター』とレイドリック様の周囲は、完全に決裂しただろうって事。


 私が優勝しても、彼は言葉ですら褒める事はしない。

 その表情には敵意すら浮かんでいた。


 ……本当、あの目を『私』に向けてくるのに『アリス』には微笑むのだもの。

 どんどん気持ちが冷え込むばかりね。

 クルスは、一度の敗北で折れるかどうか。

 負けた相手が『悪役令嬢』だから、余計に拗らせそうで嫌よねー。


「それにしても」

「うん?」

「……お嬢は、凄まじいですね」

「なぁに、それ!」

「いえ、流石にあれは皆の見る目が変わると思いますよ?」

「あはは……」


 魔法による近代兵器の再現。どう考えてもオーバーテクノロジーなシロモノだ。

 恐ろしいのは、それを私という個人が行使できているところ。

 そりゃあ、見方も変わるわよね。


「でも、あれはクルスの魔法と連携した上での事だから。私一人では流石に出力不足よ。それに、見て貰ったように一発打った後で彼は気を失ってしまった。いくら威力が高くても継戦能力とコストに難があるから……」

「お嬢が居るなら、どうにでも出来そうな気がしますけどね」


 それはそうかもだけどね!


「だけど現状、雷魔法を使えるのはクルスと『アリスター』だけよ?」

「そうですね。天才児と言われる彼を、お嬢は凌ぐ才能を持っていると知らしめたワケです」

「あはは……」


 こうして悪役令嬢は来年、ヒーローたちにリベンジされるのであった、まる。

 よーし、来年は不参加でいきましょう。勝ち逃げ万歳。


「しかし、実際……」

「うん」

「お嬢が、対策を講じていなければ、本当に命の危険があったようです」

「そうね……。クルスは冗談では済まない攻撃をしてきた。そこは許せないわ」


 私が死んでこそ、或いは死に掛けてこそ彼の反省に繋がったのかもしれない。

 だけど、そんな役目は真っ平ごめんだわ。

 だから、こちらも力で圧倒した。彼の流儀に合わせて魔法で凌駕して見せたのだ。


「魔法ってどこまで許されるのかしらねぇ」


 個人で爆発だって起こせる。その気になれば物を浮かせて重機のような事も。

 理論が構築されれば、天変地異だって起こせそうだ。

 それらが個人の力量で叶ってしまう、世界。


 違和感や危機感を持つのは私だけかしら。

 まぁ、個人所有の武力でなければ安心なのかと言うと、そんな事もないと思うけどね。


「貴方は、私が怖い? ルーカス」

「……『アリス』は怖くないですよ、お嬢」

「あら、まぁ。ふふふ」


 それは『アリスター』は、ヒューバートでも怖いって事かしらね?

 ヒーローに怯えられるとか悪役令嬢しちゃっているわ。


「ああ、来られたようですよ、お嬢」

「ん」


 学内カフェの入口に現れたのは、ミランダ様。そして。


「シャーリー様、来てくれたのね」


 ミランダ様に案内されて、シャーリー様が学内カフェにやって来た。

 二人の友人、いわゆる取り巻きは誰も居ない。

 私が立ち上がって手を振ると、ミランダ様が笑顔で応え、シャーリー様は訝し気な表情を浮かべる。


「ごきげんよう、ミランダ様。そして、シャーリー様」

「貴方は……?」


 私に馴れ馴れしく話し掛けられ、気分を害された様子だ。

 つまり『アリス』の正体に気付いていない。

 それにしても分からないものなのねぇ。


 もちろん、意図して化粧を変えたり、口調を変えたりはしているのだけど。

 私は微笑みながら彼女の問いに答える。


「私は、アリス。アリス・セイベル子爵令嬢です。生徒会では『書記』をしています。そして、」


 私は無遠慮にシャーリー様に近付いた。

 子爵令嬢と名乗られて、厳しい表情になるシャーリー様。

 そんな彼女に顔を寄せ、耳元で囁きかけた。


「私が、アリスター・シェルベルですよ、シャーリー様」


 ……と、ミランダ様と違い、今度は私から正体を明かした。


「……!?」


 バッと身体を離し、そして私の顔をまじまじと見つめるシャーリー様。


「ふふふ」

「あ、貴方……まさか、そんな。どうして、いつから……!?」

「私は1学期から、こうして学園に通わせていただいています。今では生徒会の一員として、レイドリック様の下、頑張っているんですよ? ふふふ!」


 驚愕するシャーリー様。

 そうして私は、彼女を私の計画に巻き込む事にしたの。

 ええ、それは、つまり。


 レイドリック様とは婚約破棄し、王太子をサラザール様に変更してさしあげましょう計画に!


「お嬢ってネーミングセンス、よくないですよね」

「何か言ったかしら!?」


 まったくヒューバートったら。

 でも、彼とこうして気軽に話せる関係が、今はもう好きになっていた。

 だからね、私は……未来を概ね決めていたし、望む事があったの。


 そんな私の態度こそが決め手になったのでしょう。

 シャーリー様は、私の協力者になってくれる事になったわ。

 生徒会にも参加してくださるそう。


 これで……『公爵令嬢同盟』の結成ね!




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― 新着の感想 ―
否定できない、ネーミングセンス……………………………… センスが家出してるのかもしれん………………
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