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死にたがりな僕らの一か月  作者: 海瀬幸
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早朝にあの橋へ

 身震いがした。


 このままここで我慢して死ぬのもいいのかもと思った。が、全く周りが見えない橋で息絶えることは、時間がかかりそうなのと、色々と考えすぎてより辛くなる未来が見えて諦める。


「かえるか……」


 また、朝を迎えるのを考えると辛い。が、必ず来るものを避けることは出来ないのだ。


 だから今日も、諦めて家に帰る選択を強いられる。




 十一月七日。火曜日。晴天。光が差し込む早朝のリビング。


 家から身支度をしている時に机の上に置かれた封筒を見つける。


 学校からのもので開けられた形跡はない。

 

 だいたい検討はついていた。身支度は止めて中身を確認した。


「無期限……停学処分」


 停学になるまで意外と長かったなと感じた。


 そして、誰も信じてくれないんだと、自殺する理由を改めて再認識する。


 封筒は破り捨て、あの橋へと向かう。


 早朝という事もあって、車が数台と橋を渡る人が数名いた。


 太陽が顔を見せる朝は、改めて最高な日にさせてくれる神様からの恵みであると感じた。


 橋の中央部にて、車や人がいなくなるのを待った。


 僕の自殺を見ることで、関係のない人のこれからの人生に影響する何かになっては申し訳ないから。関係ない人は巻き込んではいけないと思う。


 フェンスを乗り越え、両手を広げて太陽の光を全身で受け止める。


 視線を下へ向けた。デジャブ。


 僕はここから見える景色に既視感を感じた。


 けれど、それよりも復讐という憎悪。


 みんなが後悔するであろう未来が見えて口角が上げる。


 隣の席の枝元さん、君の選択で僕は死ぬ。


 クラスメイトの山岡さん、君の嘘で僕は死ぬ。


 病院の先生、その強い正義感によって僕は死ぬ。


 親である二人、信じてくれなかったから僕は死ぬ。


 みんな大っ嫌いだ。


 そして僕は、瞼を閉じて橋から飛び降りた。


 飛び降りたのだ。



「あの、三回目ですよ」


 僕は見覚えのある少年に言い寄られていた。


「昨日は覚えてない感じだったので、言わなかったけど……貴方、三回目です」


 白いスーツをピタッと着こなしている金髪の少年。


 僕は少年の姿に過去の記憶がフラッシュバックして蘇っていた。


 そして、自殺を失敗したことに対して急激に冷めた。


「説明しましたよね?」


 呆然としながらも小さく頷いた。


「はぁーー。絶対にわかってないと思う」


 少年は顔を俯かせて下を向いた。


 少年に何かしらの迷惑をかけているのかもと感じながらに、死にたい気持ちが積もる。


「それじゃあ、僕の手をお取りください」


 少年は思い出した記憶と同じように手を差し伸べてくる。


 記憶によればこの手を握って謎の白い空間に移動する。


 そして同年代の子がいて、アナウンスが流れて数時間その場にいさせられる。


「……? 握ってください」


 少年は手を伸ばした状態で疑問の顔を浮かべ、空を見上げて何かを考える素振りをする。


「んー? ちなみに、握らない選択肢はないですからね」


 何か感じ取ったのか少年は意味深な発言をした。


 達観している少年の瞳には有無を言わせない力があった。


 まったく可愛げがないなと思いながら、仕方なくその手を握る。


 少年はニコリと口角を上げ、元々いなかったみたいに姿は消えてあの空間になる。

 

 

 デジャブ、既視感、見覚えしかない記憶通りの不思議な空間。


 ただ、記憶で見た制服の少女や体中に絆創膏が貼ってある少年はいなかった。


 見覚えのない学ランを着た男の子と、見覚えのある同じ高校の制服を着た女の子が記憶と同じ場所にいた。


 そしてあのアナウンス。


 今はここにいない彼らは、今日、自殺をしなかった。


 急激に冷めた気持ちは一周回って冷静さを生み出す。


 そして、見覚えのある端っこにいる子は、今日も、自殺をした。


 見覚えのない学ランの子は昨日はしなかった。


 腰を下ろして、あぐらをかいた。


 たとえ冷静になろうと、この場に数時間いなければいけない事実は変わらず。力が抜けきって呆然と床を眺める。


 ここで、思い出していた記憶の断片が脳内ビジョンで再生され始める。


ご意見、ご指摘、ご質問、ご声援、読んだよなど、なんでも反応いただけると喜びます。

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