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死にたがりな僕らの一か月  作者: 海瀬幸
2/11

ふしぎな少年と白い空間

「……」


「この人何言っているのだろう、って顔ですね。皆はじめはそういう反応をするんです。今から説明するので、何も考えなくても大丈夫ですよ」


「……」


 何を説明されるのかわからないが、今は考えたくなかったからただただ聞いた。


「まず、野々山さん、今月は自殺はできません。その理由として、月での自殺人数が決まっていて。もう、その人数死にました。二日前にです。だから、貴方は今月、自殺できません」

 

 少年は淡々と説明を始めた。一度も瞬きせず、目を合わせてくる。


 理解できたのは、今月は自殺できないということだけだった。


 「わかってくれましたか?」

 

 頷いた。わかってはいなかったが。


「はぁーー」

 

 少年は息を吐くように溜息をついた。


「絶対わかってないですよね」

 

 鋭い一言を添えて、少年は何もない空間から右手にノートのような物、左手にペンを出現させて、目の前でメモをし始めた。


「自殺できない事は説明した……」

 

 メモを取りながらブツブツと独り言をする少年。


 僕はこのメモを取る姿に見覚えがある気がした。

 


 少年はメモをし終わったのか、ノートとペンを手元から消して見せた。


「手をお取りください。目は閉じた状態がおすすめです。説明はあちらでしますので心配しないで大丈夫です」


 少年はこちらに手を向けて握るように要求してきた。別に従わない理由なんてなかったし、瞼を閉じて言われるがまま手を取った。 

 

 握った。と一瞬感じたが、それは幻想だったように感触はなく、いつもは気にしない風の音までも感じなくなっていた。隣にいたであろう少年の気配は一切しなかった、ゆっくりとゆっくりと瞼を開いた。「明るい」目に入ってくる情報は光のような何かで視界が奪われる。目を開ききる直前でようやく世界が広がっていくように周りがしっかり見えた。

 

 ここは、橋の上ではなく真っ白な空間であった。


 男女が六人。制服の少女や体中に絆創膏が貼ってある少年、僕と年齢があまり変わらなそうな人達がいた。体を振動させていたり、何もない空間をボーっと見ていたり。


 周りを見渡していると、端で体操座りをしていた少女と目が合ったような気がした。

 

 女の子は制服姿でかなり見覚えがあった。

 

 たぶん同じ高校の制服であると思う。


 僕はその場で腰を下ろし、あぐらをかいて床を見つめた。


「初めまして皆様」


 頭上から優しげな声色の女性の声が聞こえた。


「今日、自殺という行為をおこなった皆様。各々理由はあってのことだとは重々承知しております。ですが、百日前から月での自殺者数の上限を設け、その上限に達してしまった場合にはその先の方々の自殺は無かった事に、戻されるようになりました。けれど上限を超えてしまった時にもしてしまう人は出てくる。なのでその月に自殺できない方々には説明をして、理解してもらう。そしてそのあとで、この場所で数時間ほどいてもらうことになったのです。いろいろ思うところはあると思いますがこの時間で考え直してくれたら幸いです」


 デパートや大型ショッピングモールでのアナウンスを聞いているような感覚だった。

 

 この空間で数時間は過ごさないといけないということは分かった。


「お時間が立てば元々いた場所に戻りますので、ご安心してください」


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