第7話「試合をするそうです!!」
「頼む!!ヘルプ入ってくれないか!!」
2限目の終わりに次の授業の準備をしているとクラスのバスケ部からそう言われた
なんでも今週の末にバスケの親善試合があるのだがその日に模試が重なり人が少ないそうだ
多分この間のバスケの試合を見て頼んできたのだろう
「ちなみに弘人はもう誘ったの?」
「橘ならもう誘って了解を貰ってる」
「じゃあたくさん女子が来そうだな...」
弘人の女子人気を考えると多くの女子生徒が試合の見学に来ることが容易に想定できる
それでも弘人はバスケ部と同じくらいの実力があるので誘いたいのは確かだ
「まあ親善試合のヘルプくらいなら入るけどあんまり期待しないでね」
「ぜんぜん大丈夫だ!それじゃあ集合時間とかは後日」
「うん、分かった」
そして僕はバスケ部の親善試合に参加することになった
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「清水くんが試合に出るの!?」
雪華さんは僕の話を聞いて大きな声でそう言った
今日は全ての部活が休みのため僕と弘人、そして雪華さん、火希さん、磯谷さんで帰っていた
全員途中まで同じ方向に帰るからだ
「清水って運動できるんだ、私の中で勝手に運動出来ないイメージだったんだけど」
「真白は普段は疲れるから本気でしないだけで全然動けるぞ」
「出来ないイメージってちょっと悲しいな...」
どうやら周りから見て僕はそんなに運動が出来るイメージでは無いみたいだ
だからあの体育の時に意外そうな顔で見られたのかもしれない
その時僕の上着の右裾を雪華さんが引っ張った
「清水くん...あの、試合応援しに行くね!!」
「うん、ありがと。じゃあ頑張らないとね」
「そうだぞ真白~雪華さんに良いとこ見せるために頑張らないとな」
「別にそのためだけに頑張る訳じゃないよ...まあせっかく呼んでくれたんだから全力でしないとね」
「...相手がやる気を失うような勝ち方だけは控えろよ」
弘人が何を心配しているのかは分からないが僕としては全力で試合をするだけなので特に気にしなかった
弘人も試合に出るため「がんばろうな」とだけ言われて僕たちは別れた
そして試合の日が来た
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「...さすがにちょっと緊張するな...」
「そんな緊張することじゃないだろ、まあいつも通りすればいいんだよ」
「...弘人目当てでたくさん人が来たから緊張してるんだけど」
「それはすまん」
僕と弘人は試合前のコート設備を整えている間の時間にそんな事を話していた
実際弘人目当てで来た女子達によって2階の観客席はほとんど埋まっている
「まあ試合が続いてけば緊張もどっかいくさ。じゃあそろそろ行くか!」
「よし、じゃあがんばろう!」
僕たちは体育館の壁付近から立ち上がってチームの列に並んだ
そして試合開始のホイッスルが鳴った
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「こっちパス!」「前に出て相手前に出させるな!!」
体育館の中はシューズの音と選手の声が響き渡っていた
「弘人!パス!!」
「任せた真白!!」
弘人は相手の間を通して僕にパスをした。弘人のパスは僕の腕の中にスッと入ってきた
そのまま前でディフェンスをしている選手が近寄らないように体を後ろに倒しながらシュートを打った
僕が放ったシュートは軌跡を描きながらリングの中に落ちた
「ナイス真白!!この調子でもっと決めてこう!!」
「りょうかい!!」
ちなみに今は23-18でこっちが勝っている
しかしそんなときにうちのチームにアクシデントが起きた
前半の終わりにチームの人が一人けがをしてしまったのだ。うちのチームは控えが居ないので人数が減った状態で後半戦に臨まなければいけない
その後の試合はこちらの劣勢になっていって今は58-62で負けている
「...このままだとちょっとやばいね」
「ああ、今の感じだとさらに離されるな...後1分か...厳しいな」
現在はタイムアウト中で僕たちは自分達のベンチにいる
僕たちがどうしようか考えている時に体育館の入り口から僕達の名前を呼ぶ声がした
「清水君!!頑張れ!!」
「雪華さん!?」
「お~いひろく~ん!負けたらご飯1回奢りね!」
「それはちょっと嫌だな...」
「二人とも...」
そこには雪華さんと火希さん、そして後で着いてきた磯谷さんがいた
「まだまだ勝てるよ!!がんばれ清水くん!!」
「...弘人」
「なんだ真白」
「ラスト飛ばすよ...そして2ポイントだけ入れてくれないか」
「...了解」
僕は気合いを入れるために普段下ろしている髪を上に上げた
そしてタイムアウトが終わって再びホイッスルが鳴った
「弘人!!いけ!!」
「任せろ...おら!!!」
弘人はゴール下に待機して僕のボールを受け取ってそのままレイアップを決めた
現在は60-62、2点差で残り10秒、今は弘人がボールを持っているが前に人がいてシュート出来ない状態だ。なので僕は弘人の後ろの反対側に走った
「弘人!!」
「真白頼む!!」
残り3秒、ボールは僕が持っていて前には一人だけ
僕はコートの半分の所からシュートを打った
僕が打ったボールはブザーと同時にゴールの網でスパッと音を立てて入った
その瞬間体育館内は騒がしくなった
「うお~!!!真白ナイス!!よくやった!!」
「ははは、弘人も良くあれで理解してくれたよ」
「まあな!!」
僕はその場に倒れて弘人は僕のところに駆け寄ってきた
久しぶりに思いっきり動いたから体が重たい
その時僕が見ていた視線の先に雪華さんの白色の髪ときれいな顔が映った
「清水くんお疲れ!!はいお水、かっこよかったよ!!」
「いや...雪華さんが応援してくれたおかげだよありがとう」
そう言って僕は立ち上がって雪華さんの頭を撫でた
雪華さんの顔が赤くなっていたけどどうしたのか心配になった
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「...ここでも出すか天然たらし...」
「ほんとだよね、周りの人たちも当てられてるし」
「あれはもう直そうと思って直せるものじゃなくて天性の物だからムリなんだよね」
「「だよな(ね)」」
俺は試合が終わって雪華さんが真白の所に来たときにこうなると予想していたのでできるだけ当てられないように少し離れたほまと真名の所にいた
今まで幾度となくこの光景を見てきたのである程度分かるようになってきたのだ
「...やっぱりくっついてくれた方がどうにかなるんだけどな」
俺はそんな事を嘆きながらベンチに向かうのだった
僕はハンバーグとイチゴが好きです
あとミルクティー