第21話「体育祭があるそうです!!後編」
「松本くん!!大丈夫?」
「あ...ああ、一応大丈夫だ」
1位から3位に下がってしまったがなんとか弘人にバトンをつなげた松本くんだったのが膝から血を出して座り込んでいる所を見ると相当ダメージがあるのだろう
その後松本くんはクラスメイトの子に支えられて保健室に行った
その時に松本君は一瞬僕の方を見てこう言った
「...清水、俺のせいで順位が落ちてしまったけど...勝ってくれ」
「うん、大丈夫だよ。僕に任せて」
僕がそう言うと松本くんは親指を立てた
「...よし、ホントは全力でする気は無かったけど...しかたない」
僕は覚悟を決めて髪を上げた
『さあさあ!遂に第三走者も終盤に差し掛かってきた!!後はアンカーの選手達がどんなデットヒートを見せてくれるかの見所です!!』
そう聞こえた瞬間に弘人の方を見るともうバトンパスの位置近くくらいまで来ていた
弘人はひとり抜かして2位になっていたのだが3位とはほとんど差が無い
「真白!!すまん!!ひとりしか抜かせなかった!」
「全然大丈夫だよ!後は任せて!」
「あとは頼んだぞ相棒!!」
僕は弘人からバトンを受け取って走り始めた
今の順位は2位で1位の人とは少し離れているので初めからペースを上げた
『...ちょっと厳しいな...』
ペースを上げたとはいえ相手は陸上部でアンカーに選ばれているだけあって完全に間を詰め切る事はかなり難しい
僕は前の人に付いていくだけでいっぱいになっているくらいだ
僕は内心どうしようと焦っていた
「清水くん!!頑張れ~!!」
観客席の方から聞こえてきた声に僕はハッとした
観客席の方向を見ると観客席の前の方に居る雪華さんの姿を見つけた
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「清水くん!!頑張れ~!!」
私はリレーで走っている清水くんに向かってそう叫んだ
清水くんは一瞬驚いた顔をしていたがすぐにニヤッとした顔をしてペースを上げた
『かっっっこよ!!!!!』
普段の清水くんなら絶対にしないような表情に私は心の中で叫んだ
清水くんは1位の人との距離をどんどん縮めていって遂に並ぶ位置まで来た
そしてゴールまでの直線に差し掛かったときに先頭の二人は同時にペースを上げた
「いけぇ~!!真白~!!」
「とばせ~!!!清水~!!!」
リレーメンバーの橘くんと石岡くんはラストスパートに入って応援の声をさらに上げた
私はそんな二人に負けないくらいの声量で叫んだ
「清水君頑張れ~!!!!」
隣に居るエマちゃんや周りのクラスの人達は私の声にびっくりして驚いた表情でこちらを見ていたが私は気にせず清水くんを大声で応援した
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『絶対勝つ!!絶対勝つ!!絶対勝つ!!』
僕は心の中で永遠と唱えながら隣の人に負けじと走っていた
残りはゴールまでの直線だけで後はこの横の人を抜けば勝ちだ
だがなかなか差を付けることが出来ない。さすが陸上部と言ったところだろうか
だけど僕は絶対に負けられない理由がある
なにしろ雪華さんに応援されたのだからなにがあっても負けられない
その時観客席の方からまた雪華さんの声が聞こえた。それもさっきより大きな叫ぶような声で
『これは絶対に勝たなければいけないな...』
それから僕はラストスパートをかけた
ゴールテープの手前。僕は隣の人を抜いてゴールテープを切った
グラウンド全体が揺れるようなくらいの声援が鳴り、奥の方から弘人と石岡くんが手を振りながらやって来た。しかし初めに付いたのは弘人でも石岡くんでも無く。
飛びついてきた雪華さんだった
僕は向かってくる雪華さんに驚いて倒れてしまった
僕が顔を上に前に向けると雪華さんの顔が凄く近くにあった
あいにく雪華さんは地面に手をついているためけがは無いようだ
雪華さんは目をきらきらさせてうれしそうな顔をして僕を見ていた
「清水くん!!すごいよ!すごい!!本当に勝っちゃったよ!!」
「あ、ありがと雪華さん。でも急に飛びついてきたら危ないよ」
僕は少し興奮状態の雪華さんを持ち上げるようにして起き上がった
後ろでは弘人と石岡くんが呆れているような顔をして僕の方向を見ていた
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「はぁ~...やっぱりこうなるんだね...」
「正直華恋が走り始めたあたりでこうなる結果は見えてたんだけどね」
「なんであれで付き合ってないのかが不思議でしょうがないんだけど...」
あたしは真名ちゃんと朱音くんとさっきの一連の出来事を見ていた
いつも通りの行動とは言えそれを全校生徒の前でするという所でため息が出てしまった
無自覚に天然が組み合わさるんだからそれはもう大変なことになっている
「いや~今回は至近距離で不意打ち喰らっちまったぜ」
「それはご愁傷様だね」
事件の現場の方向からひろくんが疲れた様子でやってきた
あたしはそんなひろくんを苦笑いしながら敬った
するとひろくんは後ろからあたしの頭の上にあごを乗せてきた
「はぁ~やっぱほまが一番落ち着くは~」
「...ねぇ。ちょっとはずかしいんだけど...」
さっきのクラスの女子二人がこちらを見て笑っていたので少し恥ずかしい気分になった
体育祭やっと終わりました




