第18話「秘密を話すそうです」
ある日の放課後僕は帰り道にあるビルの並びに居た
今日は朝から雨が降っていて人の通りは普段より少ない
そんなビルとビルの間で泣いている女の子が居た
「...真名?」
「...なんだ、朱音か」
「なんだじゃないよ。こんなとこに居たら風邪引くよ」
「...そうだね」
僕は真名が何かを抱えている事に気がついた
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「ご注文のコーヒーセットおふたつです」
「ありがとうございます」
「...ありがとう、ございます」
僕は雨で濡れていた真名にタオルを貸して近くの喫茶店に連れてきた
普段はさばさばしている感じだが今はなんだか落ち込んでいる感じだ
それもただの落ち込んでいる感じでは無く何かに怯えてる感じだ
「...真名、なにかあったの?」
「!...えっと、うん、まあそんな所かな」
僕が真名の名前を呼ぶと真名はびくっと驚いた
顔色もなんだかいつもより青ざめている
「もし嫌じゃなかったら何があったのか話してくれない?」
「話してその内容がどんな内容でも私を見捨てないでくれる?」
「もちろん」
「...約束ね」
それから真名は少しずつ話し始めた
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「私のお母さんは私が5歳の時に亡くなったの。「重傷急性呼吸器症候群」別名「SARS」っていう病気でね、私は小さかったからわかんなかったんだけどその時のお父さんは相当精神に来てたみたいでお酒に溺れてたんだ」
「そうだったんだ...」
「重傷急性呼吸器症候群(SARS)」昔に国をまたいだ集団感染が起こった病気だ。
おそらく真名のお母さんが亡くなった本当の原因はSARSがさらに重症化した「急性呼吸窮迫症候群(ARDS)という病気だろう
そしてその病気でお母さんが亡くなってしまってそのショックでお父さんがお酒に溺れて家族が崩壊したという事だろう
「それで私はおじいちゃんの家に引き取られる事になったの、それからは中学校に通って高校受験をして今一人暮らしをしながら高校に通っているんだけど今日の朝、家の前にお父さんが来てたから家に帰るのが怖くなってたの」
「だから雨の中であの場所に居たのか」
「そう言うわけ、でも朱音と話してちょっと落ち着いたから大丈夫だよ、ありがと」
そう言って真名は立ち上がって店を出ようとした
僕はその手を掴んで真名が店から出て行かないようにした
真名は振り返って驚いたような表情をしていた
そんな真名に向かって僕は口を開いて話し始めた
「...ほんとうに大丈夫だったらこんなに手が震えているはずがない」
「!!!」
「君は自分の「怖い」という感情を無理やり消して戦おうとしている。それはあまりに無茶だ、助けてくれる仲間がここにいるんだからその仲間を頼れよ!」
「,,,でもこれは私の問題だから」
「君は僕の問題にも首を突っ込んで解決したよね。だったら僕だって首を突っ込んで良いはずだ」
僕の右手で掴んだ腕はか細くて真っ白な頼りない
そんな腕を掴んで僕が真名をまっすぐ見ると緑の瞳から雫がこぼれ落ちた
「...なんで、あんたはそんな親切にしてくれるの...」
「あたりまえでしょ、君が助けてほしいっていったら助けるし何も言わなくても守る。それが君に助けられた僕の使命だから」
「それは義理があるから?」
「それだけじゃないよ、僕が個人的に真名の力になりたいだけだよ」
僕がそう言うと真名は目を擦って雫を拭いてもう一度席に戻った
その後真名は呼び鈴を押してさらに追加で注文をした
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「それで、これからどうするの?」
「...正直もう縁を切ってしまいたいけど、ちょっと怖いかな」
「とりあえず親戚とかに相談をしていった方がいいかもね、家族の関係を切るには養子縁組になるのが一番いいんだけどお父さんに暴力をふるわれている訳でも無いから難しいかもね。だから1回お父さんと
面と向かって話した方が良いね」
「分かった。じゃあおじいちゃん達に言ってお父さんに合わせて貰うよ」
「もし何かあったらすぐ連絡してね」
「うん、ありがと」
その後僕と真名は喫茶店を出て家に帰った
後日、真名から「お父さんと話し合って私の一人暮らしを認めてくれるのとその費用を出してくれる事になった」と言っていた
どうやら全ての事が無事に解決したらしい。僕の出番は無かったがそれで良かった
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「持っていくのって線香とお墓を洗う用のお水でいいんだよね」
「うん、お墓の場所はそこの門から入って二つ目の曲がり角を左に行って2列目の一番手前だよ」
そう言って僕たちはお墓がたくさん並んでいる所を歩いていた
そして一つのお墓の前にたどり着いた
「これが真名のお母さんのお墓?」
「そう「磯谷 真美」って言うの、私と同じ髪色でまっすぐに伸びた髪の毛が綺麗だったんだ。落ち着いていて優しかったんだよね。そんな人から生まれたのに私は人を寄せ付けずに嫌な態度取ってるんだよ」
「でもそれが真名の良い所であって真名の個性だから。僕はそんな真名の性格も良いなと思ってるよ」
「そういう事当たり前みたいに言わないでくれるかな~」
「本心を言ったまでです」
「...ふふ」
「...はは」
僕たちは顔を見合わせて笑い合った
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「うん、これくらいで良いかな、えい!」
「つめた!もお真名!」
私はお母さんのお墓を水で洗ってバケツの中の水をちょっと朱音にかけた
「ごめんごめん、じゃあ手合わせよっか」
「そうだね」
私は右手に持っているバケツを地面に置いてからしゃがんで両手を合わせて目を閉じた
...
お母さん、私ね、お母さんが亡くなってお父さんがおかしくなってから本気で泣いたり出来なかったんだ、泣いても誰も理解してくれないし誰も助けてくれないと思ってたから。
でもね、それも今は違う。頼れて理解してくれる人が出来たんだ
あと最後に報告があるんだ
私、初めて好きな人が出来たよ
今回は少しシリアスです




