第12話「勉強会をするそうです!!後編」
「清水くん、手伝うよ」
僕がキッチンで夜ご飯の支度をしていると半ズボンにだぼだぼパーカーを着て眼鏡を付けている雪華さんがやって来た
「別に部屋でゆっくり休んでたらいいのに」
「ご飯作ってもらって待ってるだけってのもちょっと居心地悪くてね」
「なるほど、じゃあお願いしてもいい?」
「わたしから手伝いに来たんだからもちろん手伝うよ」
そう言って雪華さんは真っ白な髪を少し高い位置で結びながらキッチンに向かってきた
隣に並ぶとやっぱり僕より小さくて綺麗な顔をしているということが良く分かった
「清水くん、私は何をすればいい?」
「じゃあ...その玉ねぎ切ってくれる?」
「ん、分かった」
そう言って雪華さんは玉ねぎを切り始めたのだが
「う~目が痛い...」
雪華さんは玉ねぎを切りながら目をうるうるさせていた
「玉ねぎを切ったときに飛ぶエキスが目に入って痛くなるからさっきの眼鏡付けたら?」
「...そうする」
今はこうやって雪華さんと一緒に隣同士でご飯を作っていることがとても幸せな事だ
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「清水くん、次は何をすればいいの?」
「じゃあさっき切った玉ねぎを温めてた鍋にバターを入れて溶かしてから入れて弱火で炒めてくれる?」
「うん、分かった。バターってどこにあるの?」
「冷蔵庫の二段目に空いてる箱があるからそっちから先に使って」
「は~い」
「なあほま...なんか新婚さんみたいじゃないか?」
「うん、あの二人の未来にしか思えないけど...」
「だよな」
俺とほまは今キッチンでご飯を作ってるふたりを扉の隙間からのぞいている
今のあのふたりの雰囲気はまるで「結婚したての仲良し新婚夫婦」にしか見えない
だけどなんだかあのふたりだとそれがしっくりくるのだ
「出来たよ清水くん」
「じゃあ後は鍋ですることだけだから僕がやるからゆっくりしてていいよ」
「うん、じゃあお言葉に甘えてここで見てるよ」
「別に部屋に戻ってても良いのに」
「ん~ん、私はここに居たいからここで見てるの」
「それでいいならいいよ」
「...なあほま、ここに居るとなんか胸焼けするから帰らね?」
「うん、ここに居るとなんかあたしが愚かに見えてくるから帰ろ」
「だな」
そう言って俺たちは元の部屋に戻った
「あ、偵察部隊が帰ってきた」
「あのふたりの様子どうだった」
「もうなんか...新婚夫婦見てる感じ」
「あ~」
全員想像できたのか顔が「なるほど」という表情になった
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「よし、出来た」
「お疲れ清水くん」
「ありがと、あ、じゃあちょっと雪華さんに味見して貰おうかな」
「する!!」
僕が味見をお願いすると椅子から飛び上がって喜んでお皿を受け取った
雪華さんはお皿に入っているシチューをふーふーして冷ましていた、そして飲んだのだが雪華さんの口の上にはホワイトシチューで出来たしろいひげが出来ていた
『かわいい』
それを見て僕は笑いながらティッシュを取った
「雪華さん、口の上に白いひげが付いてるよ」
「!!!!」
僕は手に持ったティッシュで雪華さんの口の上をシチューを拭き取った
すると雪華さん顔を真っ赤にして顔を伏せた
「雪華さん大丈夫?」
「う、うん、大丈夫、それよりみんな呼んでご飯にしよ!!」
「う、うんそうだね。じゃあみんな呼んで来るよ」
その後はみんなを呼んで夜ご飯を食べてから解散となった
次の日も最後の勉強会をしてテスト勉強を終えた
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「テスト終わった~!!!!」
テストが終了してお疲れ様会という事で僕たちはいつものファミレスに集まっていた
火希さんは机にぐて~としている
「いや~まさかほまが順位を40位まで上がってくるとは思わなかったな」
「まぁあたし今回頑張ったからね!!そう言うひろくんも25位ってすごいじゃん!!」
「おれはずっと30位代にいたからすこし上がったくらいだからな」
火希さんはいつも7,80位くらいにいて弘人も30位代にずっと居たため今回の25位と40位はかなりの好成績だったと思う
「まあふたりとも今回はがんばってた」
「そうだね、今回の集中は凄かったね」
「いや...華恋も真名も3位と7位って...」
雪華さんは3位、磯谷さんは7位と学年トップ10に入っていたがほとんどいつもと変わらなかった
唯一変わった事と言えば
「そう言えば朱音くんは2位だったんだよね、おめでとう」
「それはこっちのセリフだよ、清水、1位おめでとう」
「う~...清水くんとの勝負に新たなライバルが...」
朱音くんは復帰して2週間しか経っていないのにテストで2位を取った事だ
普段は雪華さんと1位争いをしているため朱音くんが新たに1位争いに入ってきた事に雪華さんは少し落ち込んでいた。
「でもホントに朱音って頭良かったんだね。入学試験でも満点だったんでしょ?」
「う~ん、頭が良いのかって言われるとどうか分からないな。僕の場合は1回見た物を忘れないから」
「それって「完全記憶能力」って奴?」
「うん、それだよ。ただ僕には少し相性が悪いけど」
朱音くんはその能力があるからこそ昔の事を忘れられなかったのかと理解した
その時磯谷さんがニヤッとして朱音くんの口にポテトを突っ込んでこう言った
「君のその能力を超えるくらいの思い出を君にさせてあげるから覚悟してね」
「むぐむぐ!...はぁ...やっぱ真名にはかなわないな...」
その反応に僕たちは笑っていた
あ~学校が始まる~




