表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/26

第10話「不登校生を説得するそうです 後編」

「朱音!!こっちこっち!!早くしないと売り切れちゃうよ!!」

「あ!ちょっと待って裕理!!」


僕には幼馴染みが居た。その子は「赤坂 裕理」

明るい性格で天真爛漫、そして誰にでも優しくていろんな人から好かれるような子だった

そして僕はそんな裕理の事が小学校の頃から好きだった

小さい頃からずっと二人で遊んでいてそれは小学校や中学校に入っても変わらなかった

僕はこれからずっと裕理の隣にいてずっと笑っていたかった


しかしその夢は無理なんだと言う現実を突きつけられた

僕が中学校1年生の夏に裕理が「ガン」を患っていると言うことを親から教えられた

裕理のガンはステージ4まで進んでいたらしく医者には「余命1年」と宣告されたらしい

その後裕理はすぐさま入院をした

僕が入院した裕理を初めて見たのは夏休みが終わって初めての土曜日だった

僕がその時見た光景はベットに横たわり眠っている裕理と病室の設備、そして隣にある花だった

ベットに横たわって眠っている裕理の腕は入院前よりもずいぶんと細くなって顔も少しやつれ気味になっていた。それを見るだけで僕にも裕理のつらさが伝わってきた

そして僕は眠っている裕理の隣で泣いた

今になってみるとその頃はすこし精神も不安体になっていたのかもしれない。楽しかった学校もおもしろく無くなり学校の帰りにいつも寄っていたたこ焼き屋や公園にも全く行かなくなった

そして時は経ち中学2年生の春、僕が病室に行くと裕理はベットに座って病室の窓から見える満開の桜を見ていた。その日、裕理は僕の前で初めて泣いた。「もっと生きたい」「もっと朱音の隣で居たい」そんな事を言っていた。だけどもうどうする事も出来ない

そして夏休みを終わりが近づいた8月24日

僕の家に一通の電話が来た。その内容は裕理が亡くなったと言うものだった

僕は何も考えられなくてその場で立ちつくした。その時人間は驚きを通りこすと何も考える事が出来なくなり動くことすらもできなくなるのだと知った

それからは精神的に不安定になり自殺未遂まで行った。そんな僕を見て両親は「裕理ちゃんの事を忘れろとは言わないから落ち着くまでは自由にしなさい」と言ってくれた


::::::::::::

「とまあそんな事があって今の状態に至るって訳だ」


私は楠木 朱音が何故不登校になったのかの理由を聞いた

その内容は私の想像を遙かに超えた物であり聞いている方も苦しくなる内容だった


「そんな昔の事を引っ張って引きこもって親に迷惑かけてるようなどうしようもないやつだよ」

「そんなことない!!」


私は自分を悪く言う楠木 朱音に大きな声でそう言ってしまった

さっきまでの話を聞いて私の中で同情しているからこんな事を言ったのだと思う


「なんだよ...僕がだめな奴だって分かるだろ」

「それでも君が昔の事で苦しんで嘆いてるって分かったから」

「...そうかよ。君がそう思うならそれでいいよ、だけど僕はもう外に出るのが嫌なんだよ。もう僕には外の光景が綺麗には見えないんだよ...」

「それなら外に出て慣れていけば良いんだよ」

「そんな簡単に言うけど、ずっと外を見続けてきた君には僕の事は分からないだろう」

「もちろんそんなものは分からないよ。けど分からないからこそ君が自分で無理だと思う事に私が連れ出すことが出来る、君なら出来ると思うから言ったんだよ」


その時目の前の扉が開いてぼさぼさの千尋さんと同じ髪の毛とピンクの目の男の子が出てきた

おそらくこの男の子が「楠木 朱音」だろう。

長く伸びた髪の間から見える顔を見る限り身だしなみを整えればそれなりになりそうだ


「...じゃあ君は僕に外の美しさを教えてくれるのか?」

「...うん、君が外の世界が美しいと思えるようにしてあげるよ」

「僕から離れてどこかに行ってしまったりとかしない?」

「君が一人で美しいと思えるまでは一緒に居るよ」

「もし僕が立ち止まったら手を差し伸べてくれる?」

「もちろん、絶対に見捨てないよ」


私がそう言うと楠木 朱音の目から涙が落ちた


;;;;;;;;;;;;


僕はずっと支えてくれる人を探していたのかもしれない

裕理が亡くなった事を忘れられるようなそんな人が現れるのを期待していたのかもしれない

そんな僕の前に現れたこの少女「磯谷 真名」はどことなく裕理に似ているのかもしれない

長く伸びてはいないがクリーム色の髪と緑の瞳、裕理の明るい性格とは違うがどことなく頼りたくなる雰囲気、そして「一緒に居る」と言った事

この子は頼れるのだと僕の中でそう結論付いたのだと思う


;;;;;;;;;;;;


「この子は「楠木 朱音」くんだ、今までは心の状態などから学園の登校が出来ていなかったのだがそれが良くなったから今日から通うことになった。これから仲良くしてくれよ」


あれから1週間後、僕は銀華学園に通うことにした。

というのもあの後真名と話し合い「学園に来て色々な人と関わると楽しくなる」と言われたからだ

実際ここは話しかけてくれる人や友達になってくれる人がたくさんいる

裕理の事を完全に吹っ切れた訳では無いのだが引きこもっていた頃と比べると思い出して辛くなる事が少なくなってきたと思う。そうなれたのはやっぱり


「お~い朱音、帰りにこないだのメンツでご飯食べに行こ~ぜ」


この真名のおかげだ


「こないだのってあのファミレスのメンバーって事?」

「そういうこと、行ける?」

「行けるけど...あの二人のいちゃいちゃ見ないといけないのか...」

「まぁあれはしゃあないから諦めよう」


こんな日常的な会話が出来ているのも今までなら信じられなかっただろう

友達も出来て大切にしたい人も出来たって1週間前の僕に言ったら驚くのだろう


「朱音~!おそ~い!!!早くしないと置いてくよ!!!」


ねえ裕理、僕はもう一度人を愛しても良いのかな





これにてメインのキャラは今のとこ出ました

ここまでは初めから考えてた展開

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ