第43話 ゴメンなさい(ヒャッハ-
ひっそりこそこそ
煮込んだフール
熟成あほうを召し上がれ
一回戦。
「……」
「……」
相手は女剣士。所属とかは面倒だったから見ていない。
身軽さを第一に考えたのか、胸当てと、あとは肩とか膝とか、要所に薄い鉄板を備えている。ま、身軽さでいったらオレの右に出る者はいないな。全裸には負けるが。
「……」
「……」
試合前から熱い視線の交錯。相手がこちらを見る目は『ふざけるな』か『うわあ』だろうな。どっちかって言ったら『うわあ』だろう。
遂に耐え切れなかったのか、彼女が言葉を発する。
「……その、格好は?」
その言葉は果たして、この『私服』に向けたものなのか、また、『顔』に向けて言ったのか。多分、どちらもだろう。
ただ、鎧なんて面倒だから着なかっただけで深い意味なんて無い。でも傷とか痣とかについては、男の勲章としか言えない。
しかし、オレはあえておどけてみた。
「時代を先取るニューフェース」
「……」
ドン引きされた。うわあ。
「……」
「……」
なんでもない、ただの沈黙。ただ、先程のそれとは明らかに質が異なっている。おそらくはオレが、一番可哀相なことになっている。
「……始めようか」
「……そうだね」
今度はオレが沈黙に耐えられなかった。というか、始まらなかったら棄権を申し出るくらいには精神をやられてます。
ルールはただの一本先取。勝つ条件は、相手を場外に出すこと。のみ。場外、というのはつまり、リングがあるわけだが、これがなんの変哲もない約直径50メートルの円だ。ちなみに、明らかに『過ぎた行為』と見なされた場合、それなりの処置が下される。
試合のゴングは、戦う者同士がリングに立つこと。今までオレだけ立っていたのだが、ようやく相手もやる気になったようだ。
「えっと、真剣だけど、怪我しても知らないよ?そんな薄着でさ」
「……お手柔らかに」
「まぁ、いいけど――ねっ!」
跳躍。
50メートルあった距離が一気に詰められる。というか、その脚力はおかしくないか!?
「うぉ!」
ギィン、と金属音。まずい、一歩も下がれないこの状況。相手の懐を抜けて中央へ出るか?いや、できるか?やったことないわそんなこと。
「――っ!?」
と、一気に試合が決まりそうな状態から、有利であるはずの女剣士がリングの中央までバックステップする。
……蹴られたらそれだけで致命傷受けそうなんですけど。真剣よりもその足のほうが凶器じみてる。
「というか、え?」
「………っ!」
なんで距離を空けたのか、考える間もなく再跳躍。もう一度金属音。
その衝撃をまともに受けると場外に吹っ飛びそうなので、身体を逃がしていなす。
結果、オレは場外ギリギリの位置から逃れることができた。
「《この掌にわずかの雷を!》」
振り向き様に腕をこちらに向ける。その手の平から一閃の煌めきが襲う。
それを剣で薙ぎ払うと、目の前に女剣士。魔法を防がれるのを承知で追撃してきた。所謂フェイク。
「うお!」
慌てて振り下ろしたオレの剣は、悲しいかな、虚空を撫でただけだった。切り掛かると見ていた女剣士は、オレの剣のリーチの少し外で、オレが無様に空振るのを見ている。
(―――――フェイクっ!!)
やられた。この女剣士のほうが数枚上手だった。明らかな実力の差だ。
オレを一気に場外へ吹っ飛ばす蹴りが腹部に迫る。ああ、骨は覚悟かなあ。
――パリッ……バシィッ!
「え……っ?」
一閃の煌めきが、女剣士の胸当てに直撃した。そのまま吹っ飛んで場外を期待したけれど、残念ながら少し浮いた程度だった。
それは女剣士にとって全くの不意打ちであったらしく、どさっと尻餅をついてそのまま硬直している。
かく言うオレも、何が起こったか理解できていない。
「……」
自分の剣を見つめて思案する。そういえば、雷の魔法を防いだときに剣が雷を纏った気がしないでもない。
「……おおう」
「な、何よ今の!?」
女剣士が文句を言う。言われても困る。オレだって知らなかったんだ、こんな便利な機能があるなんて。
そうとわかれば、試合は続行しなきゃな。いつまでも驚いてるわけもない。
「行くぜっ!」
オレは一足で何メートルも移動できる脚力を持ってないので、まぁなんと無様な走り方だこと。仕方ないじゃないか、相手はまだ腰を抜かしてるんだ。
ステージの端っこ、そこにいる女剣士の前に立つ。さすがに女剣士も立っている。
初めて剣を構える。我流だ。左手を剣の腹に添えて、切っ先を下げ、右手に持つ柄を上げる。
「……あんた、初心者丸出しよ」
「ほっとけ。ちゃんと意味はあるんだ」
目を見開く。左手を剣の腹に添えたまま、右手を柄から離し、相手に突き出す。
瞬間、女剣士の剣が馬鹿みたいな大きさの鉄球に変わる。
「ちょ、な…によこれ!」
「よっこいしょー!」
右手を柄から離したから剣は放棄。女剣士も何十キロあるか分からない鉄球をすぐに放棄。
右手と左手が重なる。どちらも足を踏ん張って、相撲と言えなくもない状態。
「うぎぎぎぎぎぃー!」
「あんた、意味が、分からない!」
「ゴフッ!」びちゃり
「…………血?」
血が、女剣士の顔にぶちまけられる。
オレが突然吐血したんだ。もちろん故意じゃないぞ、何か刺さったんだ、腹に。
……腹に何か刺さった?
「………ああ、打撃にしか慣れてなかったからなぁごぷっ」
「いや、あんた、刺されて……後ろ……」
「「ア ア ア ア ッ!!」」
誰か二人が同時に、オレの後ろにいる何かを蹴り飛ばす。残ったのは、オレの腹に刺さった剣のみ。ってそうか、剣で刺されてたのね。今気付いたわ。
「え、何? これって最終更新日いつよ?」
「忘れたよ。確か……2、3年前だったような気がする。そもそも今話だって1、2年前に書いたものだし」
「『今話』って単語、造語なの? 『次話』があるから使ったんだろうけど。それにしてもお前、ふざけすぎだろ」
「なんか当時、ここで詰んでね。他の話も執筆してるんだけど、これ完結してないし、未完の小説が氾濫するのもあれでさ」
「いっそそれらも投稿しちゃいなさいよ。……ん? これ今回投稿しちゃってるけど、これ以降はまだ未執筆なのよね?」
「うん」
「大体無駄に伏線多いし、全部把握しようとしたら羞恥心で読めないし。どうするのよ、これ」
「伏線ってさ」
「うん」
「回収するものじゃん。基本」
「そうね」
「回収しないのもありかなって」
「しろよ。てゆーか回収できないんでしょ」
「あれだよね、当時の厨二ぶりが遺憾なく発揮されてるよね。卒業文集に載せたポエムくらい恥ずかしい」
「え、載せたの?」
「クラスメートがね」
「「ご愁傷様です」」
「で、なんで今回投稿しちゃったの?」
「実は俺、今性質の悪い風邪にかかってて。気の迷いと共に、勢いで。つい」
「ちゃんと続けなさいよ」
「そもそも読者がこの回を読んでくれてるかどうか。絶対途中で読むの止めてると思う」
「意味無っ」
「だからこそ投稿したんだけどね」
「なるほど、割り切ったのね」
「そゆこと」
「そういうわけで」
「え、お前が仕切るの?」
「あんた切り上げるタイミング分からないでしょ。ほら、
『そういうわけで!』」
「まぁ……そうなんだけど。
『ここまで読んでくれた方、』」
「おそらく綺麗にまとまらないでしょうが」
「伏線とか忘れてもらって」
「寛容な心で読「読んでくだ」……」
「……」
「……ドヤッ」親指グッ
「……」グッ
「グエ――」パタッ
「読んでくださると、とても助かります。というか、ここまで読んで下さるだけで、いや、ここだけでも読んで下さるだけで、心から感謝致します」
「なんか卑屈すぎね?」
「あんたをフォローしてやってんのよ」