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勇者になろう  作者: パラヂン
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第32話 どこにもない朝の風景

最近夜眠いです…

夜更かしが出来ない……

朝。

それは清々しい一日の―――などと頑張ってみようとしたが、自分には無理だと気づいたのでやめる。


朝起きていきなりこんなことを考えた自分を叱咤し、坂神はふと完全に目が覚めていることに気づいた。

昨日寝た時間は早かったのだろうか?時計を見ていなかったので、思い出す以前に知らない。


それよりも、こんなにすっきり目覚めたのは久しぶりだ。前回の失敗すら覚えている。

二の足は踏むまいと、辺りを見回してから体を起こす。

激痛が走った。


「あだだ……筋肉痛っスか」


よく考えると、昨日も一昨日も頑張ったもんなぁ…当たり前か。

と妙に納得して、割と頑張った自分を少し褒める。そうしているとフィリスを発見した。

 

「あ、起きましたか……って何構えてるんですか?」


どうやら無意識に右手の牛乳を警戒してしまっていたようだ。

というか、『取る』構えなのだが、液体をどう掴もうとしているんだろうか?

コップを掴んでもどうしようもないだろうに。


「いや、なんでもない。そういえばフィリスって結構牛乳好きだよな?」


前も飲んでたし、日課にでもしているのだろうか?


「いえ、そこまで好きってわけじゃ無いんですけど……冷蔵庫にあるのがこれだけでして……」


なんと。

そう言われてみれば、金を持っていないから当然、買い出しなんか行ってない。

 

つまり、冷蔵庫の中身は始めと全く変わっていないと。


………あれ?


「そういえば、その冷蔵庫ってどこにあるんだ?」


よく考えてみれば、まだこの世界のこと全く分かってないじゃないか。

と、慣れてきた筋肉痛を無視してフィリスに聞く。


「え?…いや、こっちですけど……知らないんですか?」


そう驚いたままのフィリスについていくと、台所についた。

そこには確かに、とても古い型の冷蔵庫があった。

台所も火を点せる。

しっかりガスも使えるんだな。てっきり魔法で全て済ますものかと思っていた。


「いやぁ、そこまで万能じゃないですよ。使える魔法には個人差がありますし、第一それがどんな魔法かは決まっています。………坂神さんの出身では違ったんですか?というかその前に、冷蔵庫の位置知らなかったんですか?」


どういうことなんだ?

魔法、というものが上手く掴めない。

それと、あまり無知を曝すのは得策じゃなさそうだし……


「いや、オレの出身は田舎だったからな。都会は違うもんだと思い込んでたんだ」


結論。

魔法図書館とやらで調べるにした。


「そうだったんですか。でもそれより冷蔵庫……」


そういえば、冷蔵庫の中身が無かったことを思い出す。

……こっちのほうが問題じゃないか。

というか、厳密に言えばそれプラスお金が無いことこそが問題なのだが。


「なぁフィリス、えっと、金あるか?」


それを聞いたフィリスはキョトンとして、修道服の、おそらくは内ポケットがあるであろう場所に手を突っ込む。

取り出した手には十円硬貨のようなものが。

まさか、円が使えたりするのか!?


「銅貨一枚しかありませんでした」


打ち砕かれた。

円が使えるなら……とか。

フィリスが金を持っていれば……とか。

そんな淡い希望が、簡単に打ち砕かれた。いや、想像はしてたけどね。

ファウストとネイスはやっぱり持ってないだろうし。


「なぁフィリス。冷蔵庫に食べ物は無い、お金も持ってない。これが何を意味するか分かるか?」


それ則ち、

『働かざるもの餓死すべし』

袋の食糧もそんなに無いし、持って今日だし。


「え?牛乳があるじゃないですか」


「三食牛乳でいいのかお前は。それに、四人で一日三本ずつ飲んだら一日で消えるだろ」


ちなみにオレは牛乳あんまり好きくない人間だ。

コーンフレークは歓迎するが。


「え、じゃあどうすれば?」


「そこオレに聞くか。…とりあえず、少しでも一日で金が入る方法とか無いか?」


バイトってこの世界にあるんだろうか?

いや、あっても出来ないだろうな。何にも知らないから。

坂神に出来ること、といったら客ひきくらいか。


「ああ、それだったらいいのがありますよ!短時間で簡単にお金が手に入る方法!」



その方法とは。

ギルドという場所で依頼人の依頼を受けて、完遂すればその場で報酬が貰える、というものだった。


依頼内容は材料調達や救援要請まで多岐に渡り、政府のものと民間のもので分けられている。

それと依頼人は、パーティーが最低何組、最高何組受けれるかを決める。

これは依頼を承諾して、そのまますっぽかすパーティーが出たときのためだそうだ。大体は最低1組らしい。

ちなみに万屋のようなものをしている人もいて、そっちに依頼することもあるらしいのだが、坂神達には無関係だろう。



「もはやゲーム感覚な自分がいる……でも都合がいいなそれ。すぐにでも稼げる、今すぐ行こう」


こう、ヒマしてる時間が勿体ない。

フィリスも、そう言うと思っていたみたいだった。


「それじゃあファウストさん達起こしますね――ってキャ!」


「『キャ!』って……『キャ!』って……」


気配を完全に消してフィリスを驚かせた犯人――ファウストはなんだか衝撃を受けていた。


「おお!起きてたってか居たのかファウスト……」


昨日黒の気とやらを抑えてから、どうも気配も一緒に消しているらしい。心臓に悪いので止めて欲しいが。

そのファウストは驚いた坂神にすら気付いていない様子で衝撃を受けている。

一体なんなんだ?


「……一体なにが?」


「あ、いや。なんか違和感をひしひしと……現実味が無いと言うか…」


どうやら感覚的なものらしい。

「起きてたんだったら一言言って下さいよもう……もしかしてネイスさんもどこかに!」


そう言って辺りを警戒するフィリスは、とても危なげだった。色んな意味で。

そのとき、ガラッと押し入れが開く。

……そういえばどうして『押し入れ』のある部屋に『ベッド』があるんだ?いや畳じゃないから逆か、押し入れが異端なんだ。


「うん?呼んだぁっぶげらうわぁぁあ!」


説明しよう。

外界に身を乗り出したため、体重に引かれて布団と一緒に落ちたのだ。

というか、何故布団が?ベッドがある部屋に何故布団が?

分からない……



それはともあれこのメンバーでまともに依頼を受けたりできるのだろうか?

とにかく、先行きがとっても不安になった。



むむむ!


『む』って言いづらいけど、なんだか響きがいいのです。

え?頭おかしい?大正解。

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