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勇者になろう  作者: パラヂン
28/42

第28話 赤の少女


かなり細かくしたつもりなんですが……

くどくなっていませんか?


なんか詰めちゃったな~、読みにくいかな~、と少々不安です(汗


逆にまだ足りないのでしょうか?


――深夜――


しっかりと冷えきった風が吹きすさぶ塔の最上階、そこには一人の少女と一人の女性、それと複数の黒マントが立ち、一人の男が倒れている。

少女の顔は赤く上気し、平常心を保っているようには見えない。


「うわぁぁああ!!」


だから相手が既に気絶しているのにも気づかずに、周りの状況も把握しないでまだ追撃しようとしているのだろう。


「ちょ!?おい待て!」


それまで今まさに殴られようとしている男(坂神)が殴られるのを見てみぬふりをしていた女性―ファウストが間に割って入る。

何故なら今少女が坂神を殴り飛ばせば、それが坂神を死なせるか、塔から落ちてやはり坂神を死なせることになるからだ。


「何よ!」


「アイツは気絶してる!殺す気か!?」


「もちろん!」


もちろん!と即答された。

殺る気だったのか、と半ばうんざりする。真っ赤な顔してるくせに。

しかしだからといって坂神を殺させるわけにもいかないので、説得を試みる。

『照れてる?ぷふー』なんて言ったら自分もろとも消し炭にされそうなのでそこは自重。


「周りを見ろ!全員お前を狙っているんだぞ!」


「わ、私を狙って!?」


「なんでそこで赤くなる!?そうじゃないだろう!」


少女は相変わらず正気ではないようだ。

全く、坂神の機転でコイツを復活させたまではいいが……

どうしてアイツは気絶しているのだろう、起きてコイツの世話をしろと言いたい。


「全員お前の命を狙ってる!撃退するんだ!」


「わ、わかってるわよ!」


黒マント達は襲い掛かってこない。

コイツが復活したから慎重になっているのか?

いや、違う。あれは―――


『《―――ラ・ヘルグランド》』


黒マント達が呪文を発し終える。

今の彼等の数は九体。一体ずつ現れていたのだが、少女が復活してからそれが途絶えた。

ただ、それがこの呪文のトリガーなのだとしたら、この呪文は所謂『奥の手』

油断はできない。

――できないというのに。


「ふんっ!」


少女が黒マント達に向かって跳躍する。高く、高く。

当然それに合わせて呪文によって具現された魔法を放つ。

刀身から出たどす黒い衝撃波が少女を襲う。


「《ふんっ!》………はぁぁっ!」


少女は炎の息吹を吐き出す。

その火炎は衝撃波をたやすく飲み込み、消した。

そして少女は黒マント達の中心に降り立つ。


彼女は鼻で笑っただけ……のはずだった。

いや、鼻で笑っただけのように見えただけだった。

あれは《ふんっ!》という詠唱だったらしい。信じられないが。


「《紅蓮》」



敵の群れの中心にいる少女は、まず一番近くにいる黒マント目掛けて右の拳を振るう。

黒マントはそれを盾で防ごうとする。

が、右の拳の前に左の拳が先に対象の横腹にめり込み、振りぬかれる。フェイントか、これで一体落ちた。

よく見ると少女の拳が赤いオーラのようなものに包まれている。

おそらく、さっきの《紅蓮》によるものだろう。まさかの二文字。


ここで、前後左右から黒マントが斬り掛かってくる。


「ほっ」


少女はそれを1メートルほど跳躍して躱す。

それに合わせるように跳んでいた一体が袈裟掛けに斬りつけようとする。


が、少女はそれを両手で挟みこみ、無力化させる。

真剣白羽取りというやつだ。

その少女の背中に黒い魔法弾が襲い掛かる。まさか六体による連携とは。


少女はそれを一瞥して高らかに叫ぶ。


「《紅炎『プロミネンス』!!》」


少女を中心に紅い衝撃波が生まれる。

少女の真下にいた四体はその衝撃で地面に叩きつけられ、大きくバウンドし、空中の一体はそれを一番近くで受け、為す術もなく場外へ飛ばされ、魔法弾は塵と化す。


地に降りた少女は再び叫ぶ。


「《もういっちょ!》」


なんとも不可解な詠唱で先程と同じ現象、つまり衝撃波を放つ。

それはバウンドしてまだ地に着いてない黒マント達を吹き飛ばす。


二体が場外に飛び、一体が魔法弾を放った一体に当たり、一体がファウストに迫る。


「ふんっ!」


ファウストは右の手刀を横凪ぎに払い、黒マントを断裂させようとするが、鈍い金属音と共に黒マントは右に吹き飛ぶだけ。どうやら剣で弾かれたようだ。


全く、この黒マントは無駄に防御が上手い。


ファウストに飛ばされた黒マントは両足を地面につき、滑りながら勢いを殺している。

ファウストはその一体に一瞬で詰め寄り、蹴りを放つ。

再度宙に浮いた黒マントはこれ以上何もできずにただ落ちていく。


振り返れば黒マントの一体が坂神に斬り掛かろうとしている。


―――しまった。

奴らの狙いはあの少女だけだと決めつけていた。油断していた。


絶望していたファウストの視界に颯爽と一人の少女が現れる。

少女は黒マントの背後から飛び蹴りをかまし、黒マントを場外に飛ばす。


その衝撃で多少は少女の速度が緩和されたが、完全ではない。


「あっ………」


それはどちらの呟きか。

少女の両の素足は坂神のどてっ腹をロックオンしている。


ゆっくり、ゆっくり。


ゆっくりと落ちていき、やがて鈍い音と鈍い声が上がる。


「……………ゴフッ」


力無い声とともに一瞬痙攣した腕と足が、やはり力無く落ちる。

『ああ、これは死んだかな』とファウストは思った。


少女は素早く飛びのき、おそらくクリーンヒットしたであろう坂神の腹に右手を当て、挙動不審になる。

大丈夫、私が見ている。犯人はお前だ。


好機と見たのか、残りの二体がこちらに二人に向かって駆ける。

それを見た少女は左手を二体へ向け、言い放つ。


「《消え失せろ!》」


少女の左手から、完全に理不尽な大きさの真っ赤なレーザーが放たれる。理不尽だ。

ただ私には、それがただの『八つ当たり』のように見えたが、それはいいか。

その尋常じゃない火力は二体をあっという間に消し去った。


ここで思った。私、今回何もできてなくない?と。


少女はそんなこと気にも留めずに、とりあえず坂神の胸に耳を当てる。

そして安堵の表情を浮かべた。

生きていたのか、坂神。


そして少女は私に気づいたのか、即座に坂神から離れる。


「なっ…何よ!」


「………」


「何!?何が言いたいの!?はっきり言ってよ!」


みるみるうちに少女が真っ赤になる。面白い。


「……………(ニヤリ」


「………(ボッ」


少女が俯く。

おそらくは羞恥に堪えられずに。

そしてわなわなと震える少女を見て、ファウストはやり過ぎた、と後悔した。


「《殺す!殺してやる!貴様ぁぁあ!》」


右手をこちらに向け、詠唱なのか怪しい言葉を言う。

その右手は一瞬だけまばゆい光を放ち―――


……プシュン


「……あ、あれ?」


不発した。

それと共に少女の憤りもすっかり抜け落ちたようだ。


「……とりあえず、坂神を階段に運ぼうか。ここじゃ寒いだろうから」


「………うん。でも、その血まみれの手で?」


両手を見てみる。

なるほど血まみれだ、時間が経ったのか、どろどろにぬめっている。気持ち悪い。


「それもそうだな。じゃあ頼んだぞ」


「え?私?」


「他にいないだろう。それとも何か?恥ずかしいか?さっきなんか」


「だ、黙れ!殺すぞ!」


「魔力の枯渇した奴に言われてもなぁ」


「貴様だってほとんど使い尽くしてるじゃないか!」


「それでも少しはあるからな、殺されはしない。……試すか?」


「買った!その喧嘩買った!死んでもしらない!あの世で後悔しろ!」



そんなこんなで、日の出まで退屈しなかった、まる。




……あれ、長っ!



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