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勇者になろう  作者: パラヂン
24/42

第24話 グダグダ感ー

~頂上~



「コ、コヒュー…コヒュー…」



上りきった…というか、走りきった、といったほうが正しいだろうか。


ちなみに、実際に上った階数はそんなに多くない気がする。


いやホントに百階とかだったら絶対挫折してたと思うんだ、うん。



「す、すいませんでし―――っ!!」



急に禍々しい気配を感じて、フィリスが臨戦体制を取る。


なんなんだいきなり。また何かいるんだろうか。

だとしたらオレはもうダメだな、足が震えてる。


それでも首は動くので、その気配の主を見ようと視界を動かす。



視界に入ったのは三つ。


一つは景色。高台からの眺めは素晴らしかった。

なんてどうでもいいことを始めに持ってきた。


二つ目、少女っぽい石像。

……以上っ。


三つ目、石像の前で仁王立ちしてる黒髪の綺麗な女性。

どうやら禍々しい気配ってのはこいつみたいだ。

微動だにしないその姿は見る者に畏怖の念を抱かせる、とか言ってみる。



「「…………」」



黒髪の女とフィリスは全く動かない。

まるで先に動いたほうが負け、みたいな感じ。


だけど、フィリスは戦闘意欲バリバリなんだけど、黒髪の女のほうはなんだか……気配は凄いんだけど、殺気とか、もっと言えば意識を感じない。

気のせいだろうか。



「あの~、フィリスさん?」


「なんですか」



うわぁ緊張感。ぴりぴり。

こんな状況でこんなこと言うのもなんだか気乗りしないんだけど、やはり言わなければなるまい。

とか無駄に軽く決意してみた。



「その人……寝てるんじゃ?」


「……………」



嗚呼、一気にいろんなことがバカバカしく思えてきた。

そんな空気になってしまった。


でもしょうがないんだ。

言わずにはおれなかった。

だって人間だもの。



フィリスは警戒しながらその女に近づいて行く。


そして目の前に立ち、未だ仁王立ちのまま禍々しい気配とバカっぽさを放つその人を指で軽く押そうと手を伸ばした。



「「――――っ!!」」



いきなり開眼っ。カカッ。



二人とも即座にバックステップ。

だが、その行動は間違っていた。片方だけ。


いや別に足場が無くて落下、とかそんな真面目なミスじゃなくてですね。

ただ後ろの障害物に当たって頭を抱えることになっただけです。



「~~~っ!」


「「……………」」



なんだろうこのグダグダ感。


なにか話そうと思ったが、横になったまま話すのもなんだよなぁ、と思い直しているとフィリスが口を開いた。



「あ、あのー…?」


「………なんだ?」



目が潤んだ状態でナチュラルに上目使い!

しかし、オレは今それを正面で見ることができない!惜しい!

とか言ってみる。



「あなたは誰なんでしょうか?」


「こっちが聞きたい。いきなり目の前にいて。あれか?人の寝込みを」


「違います。違いますから落ち着いて下さい」


「私は落ち着いてる」


「真っ赤な顔してよく言すいません」


「……?というかなんでお前はそんなに半分死んでるんだ?この塔に魔物はいないはずだが」


「いや普通に上っただけだけど」


「軟弱者め」


「返す言葉もございません、はい」



てか話の流れを修正しないと。

このままじゃ脱線し続けるぞ。



「で、お前達は誰だ?」



お前が修正すんのかよ



「えっと、私はグランス国の」


「あー、肩書きはいい。名前を教えろ」


「あ、はい。私はフィリス・レジーナ、こちらのかたが坂神裕也さんです」


「そうです私が変なおじすいません」



眼光恐い。



「フィリスと坂神か。了解した。で、何故ここに来た?」


「神の啓示に従って」


「神の?ということはまさか、お前と?お前が?いやそんな馬鹿なことがあるわけが無い。そもそもこいつらじゃ無理だろう……だがしかし…」



何をブツブツ言ってるんだろう?

てかものすごく馬鹿にされてる気がするのは何故だろう?



「てか名前教えろよと」


「ああそうだな、すまない。私の名はファウストだ。知ってるとは思うが、この塔、というかコイツの番人をしている」


「ゴメン、完全に初耳だ。フィリスは?」


「私もです」


「………は?ちょっと待て。どういうことだ?」


「「?」」


「とりあえず、その神の啓示とやらを聞かせてくれ」


「時間が無いから早くここに行け、と。なんだか焦ってましたけど」


「ああそうか………ということは…もうすぐ、か」



ファウストが何やらものすごく遠い目をしている。


てかさっきから何を言ってるのかイマイチ分からん。



「いいから教えろ。何が始まるんだ?何をすればいい?」


「ああ、今から話す。ちなみに、今話すことができなかった場合…」


「?」





「世界が滅ぶ」





「…………」


「そ、それって一体―――」


「そう急くな。坂神ですら落ち着いてる」


「ですらって何!?いきなり貶すな!」


「悪い。それより、よく落ち着いていられるな?」


「まあ…異常が普通になっちゃったみたいで。慣れって恐ろしいんだよ」


「そうか、そうだろうな。流石は異界の者」


「!!」


「そんなまやかしで私を欺けるとでも思ったのか?」


「いや、ぶっちゃけバレてもいいんだけどね。説明が面倒臭いだけで」



そのままカツラを外そうとして気付く。

あ、フィリスいるじゃん。


ちなみに予断だが、このカツラは特別製で目の色も変わる。


敵を欺く一つの技、といったところらしいが。



「え?裕也さん?一体どういう――」


「あーはいはい、それは後でね。そんなことよりファウストさん?あんまり時間が無さそうなんですが」



ファウストは『確かに』という表情をしたが、少し遠い目をしている。

というか……何かを諦めてるような…



「そうだな。まぁお前達には無理だとは思ってるんだが……」


「いいから話せや」


「そうだな、話そう。まずあの塔は見えるな?」



そう言って石像の後ろ、はるか遠くの塔を指差す。



「ああ、見える」


「あれ以外にもあるんだが、あの塔とこの塔、というかコイツを破壊しようと『何か』が起こる」



と、次に背後の石像を指差す。



「それを、私達がどうにかして止める。と、それだけだ」


「終わり!?」


「ああ、終わりだ。ちなみに、それはとてつもなく強大な力だ。少なくとも私とコイツじゃ打つ手は無い」



そこでフィリスが萎縮しながら質問する。



「あ、あの……ファウストさんはどれくらいの力を持ってるんでしょうか?見た感じ、果てしない力を…」


「察しがいい、というかやはり分かるな。私は、おそらくこの大地に足のついている生物の中では二番目に強い。一番はコイツな」



また石像を指差す。

コイツ、そんなに強いのか。どうりで寝てても威圧感バリバリなわけだ。


では目が覚めた今は?

感覚が麻痺してわかりません。



「そんな!そんなあなたが打つ手が無いなら、私達なんて」


「だからソイツがいるんだろう?なぁ、坂神?」


「え?オレ?」



そうか、そういうことならサニルでもよくね?少なくともオレよりよくね?とか思ってたけど、神が選んだ、オレにしか無い何かでどうにかしろと、そういうわけですね。



「分かった。でも神様も色々と無謀だな。オレに任せるなんて」


「そうだな。でも何もしないより何かして、お前が解決すれば儲け、の感覚なんだろう」


「うわー。そう考えたらオレってめっちゃ不憫」


「同情する。が、とりあえず今は今を考えろ。神を憎むも呪うも後にしてな」



確かに、今神に対してキレても何も変わらない。



「それもそうだな、うん」


「……割とあっさりしてるんだな」


「こういう性格なんだ。仕方ない」


「…まぁいいか。それじゃ、私はコイツの封印を解く」



するとファウストはどこからか宝石を取り出し、石像の額に当てる。


そして目を閉じて、少し念じる。



「――――っ!!」



突然、石像から弾かれたようにファウストが吹っ飛んでフィリスにダイブする。



「だ、大丈夫ですか!?」


「………やはり拒絶されたか。いやぁ、仕方ない。どうやらコイツ無しのようだ」


「そんな!」



フィリスがかなり慌てる。

てかフィリス、感嘆符多いぞ。


それから何回か同じことを繰り返していたが、フィリスがやっても結果は同じだった。

そしてしばらくしてファウストが呟く。



「あー…参った。どうやら時間のようだ」



……絶対絶命。




……長いですね。

よくやった、自分。


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