第21話 道中
~道中~
何の変哲もない草原を歩きながら、かれこれ数時間。
まだ日も傾いていない時間。
さすがにもう歩けない、とかはないけれど。
「なぁフィリス」
「はい?」
「そういや今どこに向かってるんだ?場所の名前と方角を頼む」
てか傾いてたら困る。
出発したのは昼前、いや多分朝だし。
そんなに歩いたら足が棒になっちまう。
それでも多分何時間かは経ってるだろう。
日は真上を越えている。
「ああ、セラフス国ですよ。方角は南ですね」
「ふーん。あ、それとお告げってなんなんだ?あんなにいきなり」
ホント、物凄く間が悪い気がするんだよ。
「それが……なんでも既にこの世界が危ないらしく、早くある塔を守りに行けと」
「塔?」
「はい。えーっと…名前は付けられてないんです。でも、よく呼ばれているのは『闇の塔』や『奈落の塔』、ですかね」
うわぁ、随分と物騒な名前だなぁ。
「『闇の塔』って言うのは見た目からですけど、『奈落の塔』っていうのには理由があって……」
「?」
「上がると二度と戻れないんです」
なに?二度と戻れない?
…怖っ
「上がるとどうも下りれないようで……調査団が向かったんですけど、誰一人帰ってこれなかったんです」
とんでもない化け物でもいんのか?
いや、それでも一人も帰って来れないっていうのは……。
「なんかいるのか?」
「多分いません。ただ、『ここから出してくれ』って悲鳴が上がったんです。それに断末魔は聞こえませんでした」
「ん?それってつまり……」
「はい、文字通り『戻ってこれない』んです」
うわぁ
「それ以外は何も分かってませんね……」
……ん?
ちょっと待て。あれ?
「もしかして、それ、オレ達、上る?」
「………はい」
…………………ええ~。
「お告げでは、大丈夫らしいですよ」
「……信用できる?」
「口調は…あんまり…」
「…………」
泣いても、いいですか?
…とかそんな冗談はいいとしてですね。
「そういや、フィリスって体力スゲーよな。もう何時間も歩いてるのに全く疲れる気配が見えん」
「んー……日々の特訓の成果ですかね?」
「特訓とかしてるのか?やっぱ凄いな」
「逃げ切れないときは」
「逃げてんのかっ!?」
そうだった。
コイツは毎日それで走っ(逃げ)てるんだった。
訓練された兵士もビックリの速度で、しかもこの修道服で。
そりゃ鍛えられるわ。
「ちなみにこの旅も逃げの一貫だったりします」
「うそ!?」
フィリス、一々意味が分からん
「それより、もうすぐ着きますよ」
「お、そうなのか」
短い……
いや、久々で、道中だから、ということで(汗
~なんかもう日記~
「昨日おじいちゃんのお父さんがいなくなってたらしい。今日帰ってきたけど、なんだったのかな?」