第2話 不意の反動には耐えられない
休みのうちに…
「………」
目が覚めるとそこは短草草原だった。
珍しく、頭が冴えている。
いつも寝起きは死ぬ程辛いのに。それもこの草のおかげだろうか。
所謂セラピーというやつだ。
「……現実逃避はやめるかな」
覚えている。
この世界を救うとかなんとかのために自称神様に送られたことは鮮明に覚えている。
ただ
「360度地平線が見える場所から一体なにを始めろと?」
何からすればいいのかわからない。
まさかこんなことになるとは……
やっぱり歩くか。歩き回って人里を探すしか無いのか。
早くもリタイアしたくなる気持ちを身体全体で抱えこみながら立ち上がり、ついでに歩きだす。
「はぁ……その前に動物に喰われたりしないだろうな?てかあの自称神、後でっていつだよオイ……ん?」
カサッとポケットから紙が滑り落ちる。
それを拾いあげて見ると何やら文字が書いてあるらしかった。
『ごめんね。話す時間無かった(汗 とにかく、大事なことを話してなかったから書くね。そっちの世界は危機に晒されてるんだけど、それには黒幕がいて、そいつを見つけ出してとっちめて欲しいのよ。誰かはまだ私も分からないけどね。じゃ、まぁ気楽に旅しながらついでにやっちゃってね~。』
「……なんだこれ」
まぁ大事なことは聞けたからよしとするか。
自称神様についても聞きたかったんだがなぁ……
紙をポケットにしまい込んで再び歩き出す。
そこでふと思い出したことが一つ。
「力ってのを使ってみるか」
とりあえずこれを使いこなせばどうとでもなる気がする。
というわけで西洋の剣を想像してみる。
「えっと……柄に鍔に刃だろ、これでいいか?――そぉいっ!」
現実に移す方法は分からなかったので、気合でやってみた。
結果は、成功。脳内の物を現実に移すことは成功した。
だけど、及第点には程遠い。
「……なんだ、これ」
現れたのは一目で不安定だと分かる物体。
かろうじて剣なのは分かるが、鍔と刃の結合している部分は曖昧でぼやけている。他にもあらゆる箇所がぼやけて識別不能になっている。
しかも、薄い。ぺらっぺらだ。
そしてその不安定な剣は数秒してすぐに霧散した。
「……………」
風が気持ちいい。
いや、障害物が無いからかやけに風が強い。寒い。
ついでに心も寒い。
……ずっと現実逃避したかったのだが、性格によってその案は却下された。
きちんと細部まで考える必要があるとなると、どうもこの力は使い辛いな。
確か学ランに化学の教科書が入っていたから、エネルギー弾とかは撃てるかもしれないが。
「いや、エネルギー弾を創造出来たとして、前に飛ばせなきゃ意味無いじゃん。うっわ使えねぇ」
多分その場で爆発して一番ダメージくうのはオレだろうし。
こんな力でどうしろと言うんだ、自称神様よ。
問題はそれだけじゃない。
オレは今見渡しが良すぎる草原にたった一人で立っているんだ。
「てかこの世界には人間なんていません。とかいうオチじゃねぇだろうな?それはともかく、いたとしてオレは会えるのか?人間に」
食糧は確かに持ってきたが、一ヶ月とかは全く持ちそうに無いぞ。
自重しなかったら一週間だって危ういんだ。
……うわぁ不安要素満載。
「大体さ、こう人里に飛ばしてくれてもよかったろうに。なんでこんなとこに―――――っ!!!」
突然体が悲鳴を上げる。
が、何となく分かった
神の力とやらの反動だろうな
使えねーくせに…くそ
そこで意識が途切れる
ギャグが思いつきません…