第18話 ボケじじー
…もっと…!
もっと長く!
「ちょ…うわ、でかっ」
目の前のゴーレムを見て無意識に呟く。
でかすぎてよく分からないが、全長10メートルくらいだろうか。
いや、多分もっとあるだろう。
とりあえずまともに殴られたら致命傷になるな。
運が悪けりゃ即死?
それだけは言える
ちなみに、そのゴーレムはただ今サニルと戦闘中
サニルの戦法は、大技を撃ち込み、その隙に間合いをとって詠唱。
そしてまた大技を撃ち込むというパターン戦法。
対するゴーレムは、近づこうとする度に大技を受けてのけ反る。
といったことを繰り返している。
結論から言おう。
ゴーレムが有利だ。
だってなんかダメージほとんどないみたいなんだもん。
逆にサニルは
「フゥ……フゥ……《煌めく夜空、その深遠なる位置。我は―――》」
どんどん疲労が溜まっていく。
おそらく魔力も際限が無いわけじゃないだろうし、いつか打ち止めが来るだろう。
え?オレとフィリス?
何もしてないよ?
いや、何もしてないわけじゃないんだけど。
「なぁフィリス」
「はい」
「オレ達にできることは何だろうな」
「とりあえず…打開策を考えて下さい」
「了解」
だってさ、でかいんだもん。
フィリスの“ワルキューレ”もあいつの鉄拳にかかれば一撃で消し飛ぶだろうし。
大蛇のときのダイヤモンドって策もあるが、それは無理。
あれは多分一回が限界だし、基本的に遠くに物を『創造』するのは無謀だ。
んで、あいつは多分かなり硬いだろうし。
てことは上空からスピードを付けての落下を当てなきゃいけないし。
う~ん…どうしたものか。
「《―――汝に捧ぐ冥の理、冥王破砕》!!」
サニルの目の前に直径10メートルくらいの一つの魔法陣が現れ、それぞれが光りだす
次の瞬間、真っ黒な極太ビームが放たれる
それをゴーレムは全身で受けて吹っ飛び、また小さな地響きを起こす
しかしすぐに右手で草の大地を掴み、起き上がろうとする
「全く!キリがないですわね!それよりもあいつは!?アレックスはまだですの!?」
随分とお怒りの様子みたいだ
でも、アレックスって誰なんだ?
そのとき、いやにはっきりとした声が響く
「アレックスじゃない!アレキサンダーだ!!」
「これ、耳元で騒ぐでない。遠い耳が近くなるではないか」
颯爽と現れたのは、黄色い髪に青銅の鎧、長剣と盾を携えたおそらくアレックス(?)であろう青年
と、意味不明なことを呟くローブに片手に支え棒のじいさん
「やっと来たわね、アレックス!コイツをどうにかして頂戴!」
「いやだからアレキサンダーだよ!それと、コイツは全くの専門外だ!!お前も知ってるだろう!?」
「そんなことはどうでもいいから!何か無いの!?仮にも第一部隊でしょ!?」
「無駄口叩いてるヒマがあったら詠唱しろよ!!こっちにくるぞ!ホラ!」
…仕方ない
左手を地面につけて右手をゴーレムの右足に向ける
地面と全く同じ質の塊を、今まさに右足を出そうとした瞬間に『創造』する
ガッ
ビタン!
ゴーレムが俯せに転倒する
「なんかこけたぞ!早く!」
「指図するんじゃないわ!《ここに極めし―――》」
「―――ほっほ。どれ、ちと勿体ないが………ホレ」
じいさんは突然そう言って裾から取り出した札をゴーレムに向ける
「《神槍・グングニル》…じゃったかのう?」
その瞬間、巻き上がる風が『何か』の通過を知らせ、ゴーレムの『破片』を周りに吹き飛ばした
「「「「!!!??」」」」
オレ、フィリス、サニル、アレックス(?)の四人の開いた口がふさがらない
沈黙の中、始めに喋ったのはアレックス(?)
「じいさん……あんた一体何者だ!?」
「ほっほ。誰じゃろうかのう」
思い付いたようにフィリスが問う
「もしかして………大魔導士セルヴァン様ですか?」
「誰じゃそれは?」
違うのかよ!
そういう流れじゃないのかここは!?
「ワシの名は………………はて?」
「「「「え゛!?」」」」
「………まぁそんなことより、早く帰るわい」
そんなこともクソもあるかと小一時間問い詰めたい
このじいさん…ボケてるな
じじぃスゲー
~とある日記~
「久しぶりに友達と遊んだ。
ホントに楽しかった、やっぱり生きれて良かったと思う。
ただ、隠れてこっちを見続けていたおじいちゃんはどうしよう?というか、畑はいいの?」