第13話 お泊まり
…詰みじゃない
これは詰みじゃない…
風呂上がりの彼女に問う
「んで、結局お前は誰なんだ?」
「あれ?言ってなかったですっけ?私の名はフィリス。フィリス・レジーナ。教会で修行中の麗しき歌姫」
いや、確かに美女なんだよ?
だけど自分で言うなよ
麗しき歌姫ってなんだよ
「それであなたは?」
「へ?あれ?オレも名乗ってなかったっけ?」
「そうですよ、私の中ではずっと赤い髪の人ですよ」
良かった
赤髪で定着してる
「そっか。オレの名前は坂神裕也。呼び方は坂神でも裕也でも。これでいいか、フィリス?」
「いきなり名前で呼ばれるのも違和感バリバリですね。じゃあ短い間、よろしくお願いします。裕也」
「ああ、よろしくな」
気がつくともう夜じゃないか
明日寝坊したらシャレになりそうにないのに
「んじゃもう寝ようか。ベッドはそこにあるから。」
「はい!?」
「何驚いてんの?まさか、一緒にとか考えた?この馬鹿野郎」
「馬鹿ってなんですか!というか、『オレがベッドで寝るからお前は床で寝ろ』って言われると思ってました。意外です」
「オレはどんだけ鬼畜なんだよ!ちゃんとソファーで寝るよ!」
「けど、寒くないですか?」
「フフフ……実はこの押し入れには毛布があるのだ!驚いただろう?驚いただろう?」
さっきフィリスが風呂に入っているときに見つけたのだ!
これで寒さ対策は完璧!
「なんでそんなに誇らしげなんですか……でも、多分寝違えますよ?」
「外に比べれば…壁に比べれば…どうということは無いっ!」
あのときを思い出すと…
今でも泣けてくるぜ…うう…
「同情します…じゃ、お言葉に甘えてベッドを借りますね。ありがとうございます」
「どういたしまして。ほんじゃあ、お休みフィリス」
「おやすみなさい、裕也」
ソファーに横になり、毛布で包まる。
寝息が聞こえた
…寝るの早っ!!
まぁ今日はかなり走り回っていたようだし、疲れてるんだろうな
かく言うオレも、疲れたし痛いし早く寝てしまおう
「……ぐー」
~次の朝~
「あー…」
眠いよ
やっぱ熟睡するとダメだな~
二度寝したい衝動に駆られる
「おっと…ダメだダメだ。今日はコロシアムに戦いに…ふあぁ」
いかん、まぶたが重い
このまま寝てしまう…
「起きろー…オ・レ!」
毛布を投げ捨てて奇声を上げる
どうだ、これなら…
「きゃっ!」
ビシャッ
…牛乳…オレの顔に…
「うん、完全に目が醒めたよありがとう」
「だ、だって急に起き上がって毛布を投げ付けてくるんですもん!…すみません」
どうやら、牛乳を飲みながらオレを起こすかどうか迷っていたところだったそうだ
てか、そういや、コイツがいたんだっけ…
「とりあえず掃除するか…」
「そうですね…」
着替えて雑巾持ってきて牛乳の後を拭く
そうしている内に、ふと気になったことを聞いてみた
「フィリスはこれからどうするんだ?」
「え?う~ん…教会に戻るのもなぁ…あの人面倒臭いしなぁ…」
あの人?
コイツが面倒臭いと言うんだ、そいつは相当…アレなんだろうな…
…逢いたくないなぁ…
「で、結局?」
「裕也さんについていこうかな、と」
「あ、そう…」
まぁ断る理由もないし、いいか
「裕也さんの周りって面白いことがありそうですしね」
「まぁ…確かに…な」
鋭い
ちょうど今からコロシアムに行くところだ
「…んじゃ、片付いたし、そろそろ行くか」
「へ?どこに行くんですか?」
「コロシアム」
途端にフィリスの顔がにやける
「やっぱり…面白いことがあるんですね!」
オレってそんなに面白いことを呼ぶように見えるんかなぁ…?
「いいから行くぞ、今すぐだ」
「はーい」
鍵を持って家から出る
フィリスも続いて出たのを確認してから、鍵を閉める
「おっと、郵便を確認しないと」
ポストっぽいのを確認する
あれ?何も無い
てっきり部隊から何かあるかと思っていたのに…
「いいや、行こう」
そうして二人はコロシアムに向かって歩き出した
短いなぁ…
~とある日記~
「今日はまた魔物が出てきて、久しぶりに魔法を使った。
むやみに使うなって言われてたけどみんなが苦戦してたからいいよね?
それにしても…今日で二回連続?これもたまたまなのかなぁ?」