明日はあるんだと信じたい
初投稿です、よろしくお願いします
オレは夢を見ているんだと思う。
そうでなければこんなこと、あり得るはずがない。
こんな、目が覚めたら目の前に少女がいるなんてこと。
……ついに幻覚まで?
そんな馬鹿な。
「えーっと…日本に住んでる坂神裕也君…で間違いない?」
「あ、うん、多分…」
てか日本て、範囲広っ
オレ以外にも同じ名前の人間はいるんじゃないだろうか?いやいるだろう。
いやその前に、この全身真っ赤ですごい目に優しくない少女は誰だろうか。
「曖昧だなぁ、合ってるの?合ってないの?高校生の裕也君。といっても間違うはず無いんだけどね」
「なら聞くなよと。その前にあんたは誰?そして腹に立たないで、眠い」
「寝る気なの!?」
深夜だもん。
それにこんなリアリティ溢れる夢は好きくない。
夢は非現実的だから夢なんだ。
あれ、今の状況は非現実的だなぁ。でもリアルなんて矛盾してるよ。
「で、あんたは誰?」
「神様ってやつ」
「ワロスワロごめんなさい跳ねないで」
神様?なんだそれ?
あと早く腹からどいてくれ。
「冗談はいいから、どうやってオレの部屋に?そして何故に入ってきた?てかどいて?」
「どうやってって……こう、神秘的なジャンプで。用が無かったら来ないよ。あと冗談じゃなくて正真正銘の神様だよ。ホラ」
そう言うと自称神様は指を天井に向ける。
すると唐突に、刃物がたくさん降ってきた。剣、鎌、ナイフ、刀、キリなどなど。
それらは全てドスドスと音をたててベットに突き刺さる。
全て、だ。一つも刺さり損ねてない。
ついでに言うとオレにも刺さっていない。
「……………」
夢の可能性が上がった。
夢であって欲しい度も上がった。
「どう?信じてくれた?」
こうね、信じられない物を見せて信じさせるっていうね。もうね、自分が何考えてるか分からないっていうね。
てかこれ、脅迫じゃね?
「……まぁ、夢だとして、用ってのはなんだ?」
「夢だとしないでよ!?」
「いいからいいから。ささ、話してみ?」
「なんで会話の主導権握られちゃってるんだろう……」
「その調子で腹からどいてくれると助かる」
「それは断る」
「何故!?てかさっさと用件を話せよ!」
このままだと用件を聞く前に腹が陥没する気がする。
「分かった分かった。えっと……色々とはしょって説明するとね?今から坂神君に異世界に行ってもらって勇者になってもらうの。つまり一つの世界を救う大冒険の始まりってこと?」
「成る程、ついに二次元への扉が開いたのか。この日をどれだけ待ち望んだことか……」
「いやだから現実逃避は止めようよ!?」
だけどこれは余りにも現実離れしすぎているだろう。
これはもう現実っぽい夢として処理するしか無い。決まりっ。
「……もうそれでもいいけどね」
少女はため息をついて、不意に浮きだした。
浮けるんだったら始めから浮けよ!と言いたくなったが、なんかどうでもよくなった。
そんなことよりも、少女がどいたというのに、身体が動かない。
まるで金縛りにあったように。
それに気付くと共に、身体が動かない不安感と恐怖に襲われた。
「あ、動けないでしょ?それも神様の力なんだよ」
「ぬぅぉぉぉお」
「突然錯乱されても困るからね。とにかく落ち着いて」
「おぉりゃぁぁああ!……あれ?」
「え?そんな……あれ?」
突然動けるようになり、錯乱するどころか逆に冷静になる。
いやぁ、半分ふざけてたんだけど、まさか打ち勝てるとは。
「どうやったの?」
「寄声を発した」
「いやそうじゃなくて……ってまぁいいや。とにかく食糧と凶器持ってきて。今から異世界行くから」
「……え、ガチ?」
「うん、ガチ」
「いやあの……うーん……あぁ、うん、分かった」
なんだか考えることが面倒になってきた。糖分が足りないのかな?
もう夢だと割り切って行動することにした。
「食糧と凶器だけでいいんだよな?」
「うん、多分」
「多分かよ……まぁいいけど」
「自分で言っておいてなんだけど……それでいいんだ」
「面倒だしな」
「面倒って…」
向こうでも調達できるだろうし、荷物は少なめでいいか。
と割り切って坂神は食糧と凶器を取りに行った。
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「こんなもんか?」
簡単に、パンとジャム、それに凶器としてバットを数本持ってきた。
ぶっちゃけた話、他にいるものが思いつかなかったんだ。
「少ないね」
「……やっぱり?」
自称神様は考えるそぶりを見せる。今ならバットで殴って全て無かったことにできると思った。
「あ、服だよ。服が足りない」
「成る程」
タンスから数着取り出す。
これで完璧な気がする。
「それじゃあ全部これに入れて」
そう言って渡してきたのは小さい麻の袋。
その大きさは、頑張っても食パン一つしか入らないと思われる。
「…オレそんなに握力ないよ?」
「潰して入れるってわけじゃないよ!!ちょっと貸してっ!」
袋を引ったくられる
そのまま自称神様はオレの学ランを掴んで…
あれ?それ入れる?
グイッ
「ほら、入るから」
四次○ポ○○トかよ
「そんなにボーっとしないで、さっさと入れるっ!」
「おぅ…分かった」
「これちゃんと取り出せるのか?」
「やってみて」
やってみてと言われても……手を突っ込めばいいのか?
手を突っ込む。
さっき入れた物がどこにあるのかが頭に浮かんできた、全て。
なんだこれ?不思議な気分だ
あ、これだ
「………」
「できたでしょ?」
何故だろう?まぁいいか
~~~
「終わったぞ」
「あ、そう?それじゃ行くよ?」
……………
「どこに?」
「異世界」
「今から?」
「今から。さっき言ってなかったっけ?」
「そんなことも言ってたな、確か。じゃあこっちの世界のオレはどうなるんだ?」
「始めからいなかったことになるから問題無し!」
釈然としない。
世界の歪みとか考えたらそれでいいんだろうけど、それはつまり、帰る場所が無くなるんだよな?
……ふーむ。
「これって強制?」
「強制。坂神君が嫌と言っても連れていくよ」
「なんでオレなんだ?」
「力に耐えれる人間が君しかいなかったから」
「力?なんだそれ」
「さっき見せた力。創造の力だよ。手ぶらじゃ生きていけないだろうし、第一、それが無いと異世界に送れない」
「………………その力の詳細は?」
「全部は秘密。有り体に言えばね、頭に描いた物が現実になるんだよ」
「とにかく、異世界に行ける人間がオレだけだから行かせると」
「その通り」
この自称神様はこっちの事情を考えてないのは分かった。
それじゃ、開き直ってしまったほうが楽だよな。
前向きに考えるか。
と、自称神様が急にハッとした顔になり、焦りを見せる。
「あ、やば。今すぐ送るから、準備OK?」
「いや、出来ればもっと情報を聞いてか――」
「あーゴメン、後でね。それじゃ――」
視界が反転する。
決して気持ちいいとは言えない浮遊感が身体中を襲う。
視界は反転し続け、次第にまぶたが重くなり、脳がパンクする錯覚に陥る。
――まだ理由を聞いていないのに。チキショウ。
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