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異能戦線-Chronos or BASIC-  作者: 崇詞
代償編

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代償編Ⅶ:勇牙VS勝也

 弾丸は長崎 真冬(ながさき まふゆ)の心臓を貫き、致命傷を負わせる。

「まふ、ゆ?」

 倒れる真冬を抱きかかえながらも長崎 勝也(かつや)は理解が追いつかない。

「真冬?真冬!真冬!!!」

「し(・)ん(・)じ(・)ん(・)る(・)い(・)、け(・)い(・)か(・)く(・)・・・・・」

 そう言い残し、動かなくなる真冬。


「お仕事完了!・・・お疲れ!」


「お前が・・・なんで真冬を!!!?」

「なんでって?ああ、なるほど。俺の雇い主が、そこのガキに不都合な情報をにぎられたらしくてな!殺して欲しいって依頼が来たわけよ!」


───雇い主・・・殺(・)し(・)屋(・)か(・)?


「その雇い主ってのは誰だ・・・」

「それはもう、守秘義務よ!」

「そうか・・・殺人の現行犯だっ!取り調べ室で洗いざらい吐いてもら・・・」

 『吐いてもらう。』そう言いかけて、


殺し屋は銃声と共に目の前で倒れる。


「なっ!」


───口封じ!どっ!どこだ!どこから弾丸が!


「クソっ・・・クソっ!クソおおおおおおおおおおおお!」




「ご指示の通り、殺し屋を雇って長崎真冬を殺害させ、その殺し屋を口封じ致しました。」

 葉山 宝忠(はやま ほうちゅう)が、神宮寺 世界(じんぐうじ せかい)に電話で報告する。

『ご苦労様、ありがとう。報酬は執事業のお給料と一緒に来月振り込むから。』

「はい、ありがとうございます・・・・・」

『どうしたの?』

「いえ、少し同情してしまいまして。3年間、妹の為に頑張って来られたでしょうに・・・友人達を裏切ってまで目覚めさせたその妹を、目の前で殺されると言うのは、若い身には余りにも酷だと。」

『まさか、殺したフリして匿ってないよね?』

「その辺はご安心を、執事業ならともかく、殺し(本業)に私情は持ち込みません。」

「やっぱり、君は最高の殺し屋だよ、葉山。」

 葉山は執事服に着替え、神宮寺の元へ帰る。




 長崎真冬の死亡から2日後、早坂 零斗(はやさか れいと)以外は退院し、依然変わらず眠り続ける零斗に早坂 一途(いず)が付きっきりになっている。

 学校帰り、音霊 勇牙(おとだま ゆうが)と音霊 仁音(ひとね)が見舞いに来る。

「一途、大丈夫?ちゃんと寝てる?ご飯食べてる?」

「仁音、勇牙君も、来てくれたんだ。ありがとう・・・」

 普段の能天気で自由奔放な様子からはかけ離れた、気力の無い一途。

 二人の胸が締め付けられる。

「一途、さん・・・」


「失礼するわ・・・」


「小林(こばやし)さん。」

 病室に小林 光(ひかり)中尉が入ってくる。

「今回の長崎勝也准尉の問題行動について私から謝罪と事情説明させて貰うわ。」




 長崎真冬の事、3年間の軍属、勝也の処分、そして長崎真冬の死亡を聞かされる3人。

「それを聞かされて、どうしろって言うんですか?」

 一途が口を開く。

「勝也君も妹を失ったから許してやれって、そう言うんですか?」

「それは・・・」

「それじゃ、零斗は巻き込まれただけじゃないですか!」

 事情を聞いてなお、納得出来ない一途。

「何の非も無いのに弟を奪われて!それで『謹慎で済みました』じゃ納得できない!妹が死んだのだって!罰でも何でもない!ただ勝手に死んだだけじゃないですか!それで許せるわけないでしょ!零斗を!零斗を返して下さい!」

 小林中尉につかみかかる一途を仁音が抑える。

「待って一途!落ち着いて!・・・・・それを小林さんに言っても仕方ないでしょ・・・」

「なあ、勝也はどこにいるんすか?」

「自分の寮で待機させています。」

「わかりました・・・」

「ちょっと、勇牙どこ行くの?」


「勝也のとこだ。ケジメをつけさせる・・・・・」




 部屋のインターホンを押し、待つ勇牙。

「誰だ・・・」

 少しして、やつれた様子の勝也が出てくる。

「勇牙、風紀委員長・・・っ!


一途、さん・・・」


 同じくやつれた一途が、勝也の罪悪感を煽る。

「表へ出ろ。」




「殺しに来たのか?俺を。弟の敵だもんなぁ。」

 一途が口を開く。

「零斗が、目を覚さない・・・」

「殺すつもりでやったんだ、生きてるだけ運が良い。」

「何で、零斗を・・・」

「そう言う"契約"をユースベルク(ヤツ)と結んだ。」

「妹の為?」

「いや、自分の為だ。『誰かを犠牲に目を覚ました』なんて、真冬が知ったらきっと悲しんでた。これは自分の為、自分のエゴだ。」

「他に方法は無かったの?」

「少なくとも、ユースベルクが現れるまでの三年間、真冬は目覚めなかった。真冬を目覚めさせる為には、こうするしかなかった。」

「自分の妹を救う為に!他人の家族を奪って良いわけがない!私は絶対に許さない!」

「・・・・・っ!


だったら!どうしろって言うんだ!


三年!三年だ!それだけの間、真冬を目覚めさせる方法を探して!もう、それしか無かった!ならそれに縋るしか無ないだろ!」

 勝也自身、これが逆ギレで何の正当性も無い事は分かっている。

 それでも、一度抑えが外れた感情は、出し切るまで止まらない。

「早坂一途!お前が俺の立場だったらどうだ!あの日、お前自身が言ったんだ!「零斗の安全こそが最優先事項」だと!」

 『アークの世界』による、東京校襲撃の際に一途が発した言葉を、勝也は一途に突きつける。

「そんなお前が!他人を犠牲にすれば眠り続ける零斗を起こせると言う状況で思い止まれるのか!?」

「それはっ!・・・・・」

 否定出来ない。

 一途自身、自分が同じ立場であれば勝也と同じ事をする自覚がある。

「・・・・・奪うのは許容し、奪われるのは許さない。俺もお前も、結局は同類だ・・・お前はただ、最強(ランクEX第一位)と言う強さで周りにその理不尽を強要しているだけだ。」

「っ!・・・」

「勇牙も、風紀委員長も、零斗がピンチなら迷わず切り捨てる・・・・・


結局、零斗がいれば、それで良いんだろ。」




 何も言い返せない一途は手に白い虚空を生み出す。

「殺すならさっさと殺せよ!愛しの弟をあんな目に合わせた憎き相手だ・・・」


「言いたい事はそれだけか?」


「あ?ぐわっ!!!」

 勇牙が勝也を殴り飛ばす。

「ほら、来いよ。」

「っ!ああああああ!!!」

 勝也も勇牙を殴り返す。

「ぐっ!」

 更に追撃を放つ勝也。だが、勇牙は勝也の拳を掌で受け止め、勝也を蹴り飛ばす。

「はっ!」

「がはっ!」

 お互い走って相手との距離を詰め、拳がぶつかり合う。

「「はあああああああ!!!」」

 勝也の回し蹴りをバク転からの後ろ飛びで躱し、その距離を一気に詰める。

「どおおおおおおおりゃああ!」

勇牙がフルパワーの拳を叩き込む。

「ぐはっ!」

 生身の身体にモロに勇牙の拳を喰らい、ふらつく勝也。

 その隙をついて追撃に移る勇牙。

「どりゃああ!」

「っ!」

 辛うじて躱し、勇牙の腹部を蹴り上げる。

「かはっ!」

 そして、少し浮いた勇牙を逆の足で地面に叩きつける。

「ぐはっ!」

 勇牙も即座に立ち上がり、一旦間を取る。


「うおおおおおお!!!」


「何!?」

 人(・)間(・)離(・)れ(・)し(・)た(・)速(・)度(・)で(・)接(・)近(・)し(・) 、勝也の腹部に強烈な一撃をお見舞いする。


「どおおおりゃあああああああああああああああ!!!」


 流石に耐えきれず、倒れる勝也。

 

───決着。

設定紹介


魔術

 魔術とは原初の神である『 』が持っていた七つの権能を人間が扱えるように型落ちさせたもの、またはその派生のことを言う。

 魔力器官で生み出した魔力を術式に通すことで、その術式に応じた魔術を発揮する。

 エネルギー保存の法則を超越した異能と違い、魔術は原則『等価交換』であるため、魔術で起こす現象はエネルギー保存を無視しているように見えて、無視したエネルギーと相応の魔力を術者が消費している。

 ただし、魔術は異能に対して万能性で勝っている。

 異能は生体プログラムによる特定の異能しか扱えず、大半の異能力者は一つしか異能を持っていない為、異能力者は自身が持つ異能しか扱えない。

 しかし、魔術は特殊技能でもあり、学問でもある。一部の術式以外は理論上全ての魔術師が扱える為、火を扱いながら身体強化を行ったり、魔力で構築した武器に属性を増やしたりなどふくすうの魔術を組み合わせることができる。

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