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異能戦線-Chronos or BASIC-  作者: 崇詞
九体祭編
13/114

九体祭編Ⅴ:競技開始

 九体祭の競技は各校から選ばれた20人前後の選抜メンバーが出場する選抜競技と、その他の全ての生徒が出場する一般競技に分けられる。

 この異能高専札幌校の運動場とスタジアムを使って行われる競技は一般競技が男女別100m走、男子綱引き、女子二人三脚リレー。

 異能競技が男女別スピードボード、男女別異能テニス、男女別ブレイクウォール、男子バトルスクワッド、女子サークルフォール。

 この中で盛り上がるのは異能競技だけ。観客は企業や国防軍の関係者が過半数を占めている。

 生徒達の家族はわざわざ札幌に来ずともテレビ中継で済むからだ。

 つまり選抜競技こそが九体祭なのだ。




「うわああああ!!!」

 甲高い声で司馬 一歌(しば いちか)はこけて倒れる。

 九体祭のプログラム3番。女子二人三脚リレー、前半。

「だ、大丈夫?立てる?」

「平気、ごめん・・・」

 ペアの女子生徒の助けも受けて立ち上がる。

「いくよ!」

「「1、2!1、2!1、2!1、2!・・・」」




「ま、負けちゃった・・・」

 戻って来た一歌は少し落ち込んでいる。

「私のせいだ。」

「ま、まあ気にするなよ・・・その、転んだのは一歌だけじゃないさ!」

 早坂 零斗(はやさか れいと)は一歌を励ます。

「零斗の言う通りだ。確かに九校中最下位は痛手だが、まだ九体祭は始まったばかりだ。ここからならいくらでも挽回は効く。ここからは応援だぞ、一歌。」

 長崎 勝也(ながさき かつや)も一歌に声をかける。

「大丈夫?司馬さん。あまり気に病まない方がいいよ。ほら、次は本戦サークルフォール、勇牙と零斗のお姉さんが出るって!応援しよ?」

楓太(ふうた)君・・・」

 五十嵐(いがらし) 楓太に励まされ、一歌の表情は少し明るくなる。

「うん。ありがとう、楓太君・・・」

「なあ、勝也。楓太と一歌、できてね?」

「あまり、そう言う類のことを言うのは良くないんだが、まあ俺の目にも出来てるように見えるな。少なくとも一歌の反応は俺たちの時と明らかに違う。」

 零斗の意見に勝也も同意する。




 サークルフォール。半径25mの円形の床の上で生き残る競技。2分ごとに外側から1mの範囲の床が落下して行く。最後の一人になるまで競い一位を決める。

 異能を用いない物理攻撃は禁止、再起不能レベルの攻撃も禁止だ。

 各校三名ずつ、床の上に乗っていく。

 東京校からは今年も最強のランクEX、超越級万有引力操作(ブラックニュートン)、早坂 一途(いず)、ランクAの振動操作(エコーズ)、音霊 仁音(ひとね)、ランクBの電磁系(エレクトロキネシス)博衣 真名(はくい まな)

「4年生の博衣先輩が一番ランク低いんだな。」

「零斗、そう言うのは控えた方がいい。誰に聞かれているかも分からないし、聞く人によっては陰口にも聞こえるぞ。」

 零斗の失言を勝也が指摘する。

「ご、ごめん。そんなつもりはなかったんだけど・・・」

「それに実力の評価なら『博衣先輩が優秀で早坂先輩と音霊先輩が異常』の方が正しい。」

 勝也が話し始める。

「4年の今の時期にランクBなら、来年ぐらいにはランクAも見えてくる。ランクAに成れるのは年によっても差はあるが、だいたい卒業生の半数程度。そこに至る可能性があるだけでも優秀な方だ。」

「へえ、そっか。勝也はこの試合、どう見る?」

「どう見るって言われてもなあ、普通に超越級万有引力操作で全員吹き飛ばして終わりじゃないか?ほら、早坂先輩、真ん中に陣取ってるし。」

 サークルフォールの床の大きさは超越級万有引力操作の効果範囲と同じ半径25m。中央に立てば、床全体を範囲にすることができる。

「まあ、そうだよね・・・」

「始まるよ!」


「ready? fight!」


 試合開始の合図と共に盤上の選手たちは互いの異能で他の選手を落とそうと攻撃する。

 中でも目立つのは博衣先輩だ。

「博衣先輩、何してるんだ?なんか足がバチバチしてるぞ!?」

 勇牙が博衣先輩の足元の電光に気付く。勝也が解説する。

「恐らく、電磁系の応用だ。電磁石の要領で電気を流して足を床にくっつけてる。」

「へー。」

 棒読みだ。

「勝也くん。勇牙、よくわかってないみたいだけど。」

「ああ、難しいことはわかんねえ。」

「自慢になってないからね!」

 氷川 七姫(ひかわ なき)がツッコむ。

 続いて、仁音が空気の波を起こして崖っぷちに居るの選手に当てる。

「うっ、うわああああ!」

 選手が落下する。

「空気を振動させて相手を酔わせ、体幹を狂わせて落とす。振動操作にはこう言う使い道があるのか。」

 勝也が冷静に分析している隣で勇牙は姉の活躍に大興奮だ。

「うおおおおお!姉ちゃん!ナイスゥゥゥ!」

「なんか、勇牙ってお姉さんと仲良いのかな?」

 既に数人の脱落者がいる中で、床の外側1mが落下する。落下する床に乗っていた数名が一斉に脱落。

「よし!じゃあ、いっくぞー!」

中央に陣取っていた一途が、盤上の選手たちを吹き飛ばす。


「「「わあああああああ!!!」」」

「「「きゃああああああ!!!」」」


「出たな、一途先輩の超越級万有引力操作!」

「しかもご丁寧に、吹き飛ばした選手をゆっくり着水させてるし、余裕だねほんと。」

盤上には一途と仁音、そして博衣先輩だけが残された。

「これで東京校が一位から三位を独占。抜け目ないなあ、姉さん。」

一途が同じ様に二人を吹き飛ばし、決着。


「Hayasaka Izu Win!」




 新人戦男子スピードボード。

 モーターがついた専用のサーフィンボードに乗り、他の選手を異能で妨害しながらゴールを目指す異能競技。対戦相手は6人、一着から五着まではポイントが貰える。ボードから落ちたら問答無用で0ポイント。

 骨折以上の怪我を負わせる可能性がある妨害は危険行為として失格となる。

「ふー、緊張してきた!」

 選手それぞれがスタート位置に着く。


「ready? fight!」


 合図と共に6人はコースを進み始める。だが、

「おっと!どうしたことか!早坂選手を除いて全選手がボートから一斉に転落してしまったあああ!」

会場中に実況の声が鳴り響く。

「よし!上手く行った!」





「うおおお!零斗の奴、何したんだ!?」

「勇牙、少し落ち着きなよ。零斗くんが活躍して嬉しいのはわかるけどちょっと恥ずかしいから!!!」

「氷川さんの言う通りだよ、勇牙。」

 興奮する勇牙を七姫と楓太が落ち着かせる。

「勝也くん、解説。」

「ああ。恐らく、零斗お得意の見えない壁だろうな。スタートから10mまではストレートだから最初の位置から直進するだけだ。だからそのコースに見えない壁を置いておけば、衝突して転落だ。」

「そう言えば、零斗君の異能ってどうなったんですか?選抜メンバーとしての参加に当たって精密検査が行われたんですよね?」

 勝也の解説に対して、一歌が零斗の異能について勝也に聞く。

「精密検査ってほどのものじゃ無い、ちょっとした実験だったらしいが『気体分子の相対的な位置を固定する事で空気の刃や壁を作る能力』だそうだ。異能名は固定硬化(キュアリング)(仮)、俺と同じ、今の所零斗だけが持ってる異能らしい。」

「へー、零斗もすげーんだな!」

「勇牙、何もわかってなさそうね・・・」 

 七姫が勇牙に呆れている間に、

「今、零斗選手ゴールしました!」


「Hayasaka Reito Win!」


 なんとも実況者泣かせな試合で新人戦男子スピードボートは幕を開けた。

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